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教養として身につける地理1(チュートリアル)

(この記事は有料設定ですが、最後まで無料で読むことができます)
このシリーズでは、高校地理Bをベースに、地理の本質を理解していくことを目指します。

高校地理Bというと、主に理系のセンター受験科目です。
大学受験生が主な対象ですが、もう一度教養として地理を学び直したい、と考えている方にもお役に立つ内容となるようにします。

地理・歴史・公民系科目は三位一体
私は、これら全ての繋がりを理解してこそ「教養」に到達できると考えています。

「点」は、繋がりあって「線」になります。
「線」は、交わりあって「面」になります。
「面」は、重なりあって「立体」になります。

立体まで到達できれば、知識を「縦横無尽」に扱うことができます。

知っている(input)ことのみならず、それを縦横無尽に扱う(output)ことができる、それが「教養」であると私は考えています。

これはもちろん受験にも言えることで、今後の入試改革ではまさしくこの力を問うようになります。
そのため、これからの入試では、「とにかく暗記する」という勉強法が通用しなくなる可能性が高いです。

AI(人工知能)と人間を比較してみても、inputの力で人間はAIに勝つことはできません。
人間の強みはoutput。
つまり知識をどのように扱うかを自律的かつ変幻自在に思考し、実行できること。
人間が人間であり続けるために、教養は必ず必要になってきます。


シリーズ構成としては、2年4単位(授業数で考えると350時間ほど)の内容を記事化にしていくことになります。
前述の通り、できるだけ「つながり」を重視し、要点をおさえていく予定です。

理解のポイントなど、学習のノウハウも盛り込んでいきます。
なお、地理は理科系科目との接点も多いため、度々理科的な内容も入ってきます。

というわけで、今回はチュートリアル編です。


はじめに…


前述しましたが、「地理は暗記科目ではありません」

社会科というと暗記科目という認識が強いのですが、地理は特に、暗記することはあまり役に立ちません。

なぜかというと、入試においても「なぜそうなるのか」という問いや、「各種統計資料を比較検討」する問いが多いから。
つまり、地名や用語を覚えていることが大切なのではなく、それらの背景や、相関関係が理解できているかが大切だからです。
つまり、暗記力ではなく、論理構成力・資料分析力・洞察力が主に求められているのです。
(もちろん、覚えるべきことがないわけではありません)


今、自分にこれらの力がどれくらいあるかを測る方法があります。

ひとつのキーワードについてどれくらい繋げて語れるか

を試してみてください。
例えば…

「ブドウ」というキーワードでどれくらい話を続けられるか

を試してみます。
これはあくまで一例ですが、

ブドウ → 甘い → 乾燥好む、寒暖差 → 地中海性気候 → 保存食 → ワイン・レーズン

これを少し文章化してみます。

ブドウは果樹であり、品種にもよりますが甘みが強い作物です。
果実の甘さというのは、植物が得たエネルギーを、糖として果実に溜めたものです。
この動作は、ブドウに限らず、植物が生命の危機を感じた時に多く発生します。
つまり、ブドウにとって厳しい環境、乾燥や寒暖差などが大きいほど、甘いブドウができやすい、ということになります。

もちろん、元々のその植物の特性(例えばブドウは日照が多く、水はけのよい土地を好む)があるので、栽培に適する場所というのは異なります。
ブドウであれば、基本的には地中海性気候(温帯だが、夏は高温乾燥、冬は湿潤)など、乾燥寄りの気候を好みますね。
逆に、低温や湿潤状態が継続することは苦手です。
これは、ブドウの原産地がペルシア(現在のイラン高原)~カフカス地方だからです。この近辺が原産の農作物は、総じて似たような気候の好みを持っています。

ところで、果樹に限らず、一般的に作物は同じシーズンに収穫期を迎えます。そのため、収穫物をどのように保存するのか、というのは、古代から重要な生活の知恵として追及されてきたところです。

特にブドウのような水分が多い作物は傷み(腐敗し)やすいので、生食をしない場合は早急に処置をして保存性を高めなくてはなりません。
その方法はいくつかありますが、ワインを作る「発酵」と、レーズンを作る「乾燥」は保存のための一般的な方法。
傷みやすいということは、遠くに運ぶことは困難ですし、余計なコストもかかります。ですから、その場で加工するのが基本です。

発酵と腐敗は化学反応としては同じものですが、人間にとって有用なものが発酵です。人間の手によって化学反応をコントロールし、有用なものになるよう反応を進めなくてはなりません。

ちなみに、発酵スピードをコントロールして良質なワインをつくるためには、温度や湿度などが低め、かつ一定に保たれた暗所が好ましいです。
こういった環境では人間にとって有害な雑菌が繁殖しにくいということもあります。
現代のように空調機器によるコントロールができない時代、その環境が提供されるのは「地下(洞窟)」。
そう考えれば、地中海周辺の石灰岩地形(雨水で溶けて地下空洞ができやすい、人力でも掘りやすい)は、ワインづくりにベストな環境だったとも言えます。
そのため、ワインは「キリストの血」と言われ、キリスト教的な背景もあって地中海北部一帯に拡大します。

また、アルコール生成には元となる原料にどれくらいの「糖」が含まれているかが大切になります。
アルコール発酵は、糖を分解して、エタノールと二酸化炭素を生成し、エネルギーを得る代謝プロセスだからです。
これは嫌気反応(酸素がいらない)なので、地下空洞内に樽詰め、瓶詰めでワインは熟成していきます。
良いワインを作るためには、糖度が高いブドウをゆっくり発酵させることが必要なのです。

一方でレーズンは、天日で一気に乾燥させなくてはなりません。
これは砂漠に近い気候がベスト。しかも、砂漠に近い北アフリカ~西アジア地域はイスラム教が優勢の地域で、戒律によりアルコールが禁止されています。
そのため、これらの地域でのレーズン生産は伝統的に多めです。

新大陸でのワインやレーズン生産が盛んになったのは、第二次世界大戦後のお話になります。
地中海性気候、かつ企業的な大規模栽培ができる新大陸地域では、安価なワインやレーズンが作られ、世界の市場を席巻している状態です…。

ざっとこんな感じでしょうか。

私は、授業で生徒が少人数の時には、「お題」としてキーワードを設定し、全員で順番にひたすらそれについて語る、という手法を取ることもあります。
友人同士で、ご家族内でもできる手法ですので、是非お試し下さい。


ちなみに、上記の文章は気候と植生の関係、宗教と食文化の関係、農作物と食品加工の関係、土壌や地形などを組み合わせています。

これらの知識をバラバラではなく、有機的に組み合わせてこそ役立ちます。
一つ一つのことは覚えておく必要がありますが、それは「暗記」するのではなく、関係性をつなぎ合わせて「理解」しておかなくてはならないのです。

入試問題では、どこから問いが切り込んでくるかわかりません。
問いの中にあるキーワードを拾い上げ、そこから論理展開をし、その論理に基づいて資料分析し、正解を導く必要があるのです。


さて、今回の記事は、地理を学ぶ上でのチュートリアルです。
次回の記事からは、具体的にどのように理解していけば良いのか、実際の授業をベースに記事を書いていきます。

☆できれば準備いただきたいもの
地図帳はあると良いと思います。
帝国書院の新詳高等地図
二宮書店の高等地図帳
など、いくつかの出版社からも出ていますので、お好みで…。
記事内にも必要に応じて地図は掲載しますが、重要事項は地図に書き込むことで、オリジナル地図帳を作ることができます。

また、統計資料としては二宮書店刊行の
データブック・オブ・ザワールド
がおすすめ。
分厚くて邪魔!という方は、各国資料を除いた
統計要覧
でも良いと思います。

資料集や教科書は、受験生の方はぜひ準備してくださいね!

ちなみに、学校用教科書はamazonでは買えません(メルカリなどなら買えるかも?)が、資料集は手に入ります。
帝国書院の
新詳地理資料 COMPLETE
などは定番です。
あって損はないかな?(写真や解説なども多いので)と思います。

受験生の方は是非教科書を用意してください。
なくても大丈夫な記事構成にしますが、入試で使うのであれば、資料として教科書を見ながら読んだほうが効率は良いです。


そして、このシリーズは私としては初めてですが、有料Noteということにさせていただきたいと思います<m(__)m>
今回はチュートリアルなので全文無料公開です。
また、時折マガジン内でも無料記事を投稿していきたいと思います。

また次回の記事でお会いしましょう!

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