【読書感想】「OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める」 北野唯我

「職場の空気」と「企業の業績」には、強い関係がある。「風通しが悪い」のに、「社員の士気が高い」会社はほぼ存在しない。「給料」と「社員の士気」はあまり関係ない。オープネスは、「高ければ高いほどいい」わけではない。
リーダーの真価は「失敗が起こったときどう対応するか」ではかれる。オープネスを「組織のカナリア」として使うことで、業績の悪化を防げる。事業再生に成功する組織は「士気の高い部署」から変革する…
『転職の思考法』で日本人の働き方に変革を起こした著者によるまったく新しい組織の教科書!
「BOOK」データベースより

この本の概要

「天才を殺す凡人」「分断を生むエジソン」を書いた北野唯我さんが、転職口コミサイトの膨大なデータを分析し、これからの組織に重要な要素として説明してるのが、本のタイトルにもある「オープネス」という概念。
この本では、
「オープネスとはなにか?」
「組織をオープネスにするにはどうすればいいのか?」
を、たくさんの数字やデータをベースに説明しています。

オープネスな組織を作る3つの要素

オープネスな組織とは、簡単にいうと「オープンな風土の組織」ってことです。(←そのまんま…)

私たちは、情報がオープンな環境に満足感をおぼえ、逆にクローズドな環境では不満を感じます。オープネスな環境というのは、我々のパフォーマンスを高めるためのビタミンのような存在なんだそうです。

「満足感を持って働く」。
とても大事です。
従業員が満足度高く働いている企業では、利益率と正の相関関係があって、将来的にも業界平均を上回るパフォーマンスがでやすいという研究結果がでています。
つまり、会社の業績を考えても、組織の成長、人材の採用を考えても、「オープネス」というのは非常に重要な概念なんですね。

で、作者はオープネスな組織を作るためには3つの要素が必要と述べています。

①経営開放性
②情報開放性
③自己開示性

簡単に言うと、経営が見える、社内の情報が見える、自分もオープンにいられるって感じかな。

私の所属する会社の場合

私が今働いている組織は「サイボウズ」っていう会社でして、組織のみんなでスケジュールや情報を共有する「グループウェア」っていうソフトウェアを作って売っております。
で、本業はグループウェアなんですが、それ以外でも社長が夫婦別姓訴訟でニュースになってたり、「働き方」的な文脈でも話題にのぼることがちょいちょいある、なんかまぁそんな会社です。

こういう組織論を読んだとき、自分が今いる組織と比較しながら読む人が多いんじゃないかな、と思うんです。
私もいつもそういう感じで本を読んでて、自分の今いる環境と照らし合わせて内容を咀嚼することが多いので、今回もそんな感じで備忘録的に書いとこっかな、と思います。

で、あらためて、さっきの大事な3つの要素。うちの会社でどうなのか、見てみます。

①経営開放性
経営者が社員にどれだけ情報を開示しているか? 取締役/執行役員の顔と名前、思想などを、現場のメンバーが認知、理解している割合。

中途で入社する人はたいがいビックリすると思うんですが、弊社では、経営会議や本部長会議は、個人情報とインサイダー情報をのぞいて基本的に全社公開です。一般社員も会議に入って見学したり意見を言うことができるし、議事録も当日か次の日にはみんな見ることができます。
私も一般社員ですが、見学したことがあります。誰かに申請しなくても、普通にしれっと入れます。
あと、一般的な経営会議って「こういうふうに決まりました」という形式的で報告ベースのものが多いのかな~と思うんですが、ちゃんと議論したり相談したりしてます。質問もバンバンでます。

取締役や執行役員の顔と名前も、割とみんな知ってるんじゃないかな?と思います。少なくとも私は知ってます。
なんかみなさんいい意味でキャラが濃いので、話したことがあんまりない方のことも数年たてばなんとなくは覚えてきます。
あ、娘さんがテニスしてるのね、とか、辛いものがお好きなのね、とか。(←どーでもいい情報ww)

社長や副社長も本を出してるので、彼らの考えてることも社員はかなり理解してるほうだと思います。
っていうか、彼らの思想は、会社のなかで周知徹底されてて、社員にも「公明正大」とか「説明責任・質問責任」がしっかり求められます。
なので、思想については否応なく理解せざるを得ない部分はあると思います。

そんな感じなので、トータルでみると「経営開放性」は、ヨソとくらべるとかなり高いでしょう。
少なくとも前職では経営会議で何話してるのかわかんなかったですからね。それが多分普通だったし。

②情報開放性
従業員が、自分の仕事を意思決定する上での十分な情報が容易にアクセスできる状態にある(と感じている)割合。 

これはたぶん弊社的にいちばんのアピールポイントかもしれない。
情報開放性、めちゃくちゃあると思います。
なぜかというと、うち、グループウェアの会社なので、過去の情報、全部グループウェアに残ってるんですわ。
しかもインサイダー情報と個人情報以外は基本的にオープンにしようっていう文化で、部署単位でクローズドにすることもほぼないので、他部署の過去の情報も検索すればすぐにみつかります。

「情報が多すぎて探せないのでは?」
「収集つかないのでは?」
と疑問に思う人もいると思います。
実際に入社するとそこらへんで「ギャ〜」となることも多いんですけど、しばらくするとなんとなくみんなコツをつかんでくるっぽいです。

普通に生活してると、わからないことがあったときにググるじゃないですか。それが会社でできるってことが「情報開放性」なんだと思います。

人に問い合わせたり、申請を出さなくても手元で検索するだけで探せるし、咎められない。
調べたかったら自由に探せる。
これ、主体的に動く上ですごく大事だと日々感じます。
そこで誰かにお伺いたてないといけないとなると、相手に説明するコストも発生するし、場合によっては相手の解釈や判断も入ってきてしまって、自分の「知りたい」に不純物が混じってきちゃうんですよね。手続きしてる間に目的変わってきちゃったりとか。

このうちの会社のグループウェアの世界は、会社の情報と個人の発信にまみれた小さいけれども深いインターネットのようだなぁとよく思います。
それはずっとグループウェアを使ってきて、クローズドにせずオープンにしようと心がけてきて、長年ストックしてきたからこそできあがった世界なんだと思うんです。
今までそうじゃなかったとしても、それはこれから自分たちの意志で作っていける世界だと思うので、こういうのいいなぁと思った方はぜひ弊社のグループウェアの導入をご検討ください(←ところどころで宣伝をぶっこむスタイル)

③自己開示性
従業員が、ありのまま自分の才能を自由に表現しても、他者から意図的な攻撃を受けないと信じている割合。

自分が自分の強みを発揮できるって感じかな。
心理的安全性とかそういうのも含まれてて、ありのままに近い自分でいられるか、みたいな。

これはまぁ人によるよね。
うちの会社でもありのままじゃない人はたくさんいるんじゃないかなぁ?
意図的な攻撃を受けるかどうかも、まぁ場所によるよね。たぶん普通にゼロじゃないと思う(笑)
ここらへんてそれぞれがどう受け止めてるかだから、たぶんゼロにはできないよね、人同士が関わってる以上。
ゼロに近付ける努力はしていってるし、他の組織とくらべるとかなり配慮された環境だとは思うけど、普通です、普通。

基本的に自己開示性は人によるとは思うんですけど、社員のSNS発信を禁止されていないのは、ひとつ、組織として自己開示性に寄与してる部分なのかもな、と思います。
もちろん、会社の所属言いたくない人もたくさんいるのでそれはもちろんありだし、言いたければ「サイボウズの○○だよ」と書くのもあり。
開示したいと思う人が禁止されたり注意されたりせずに開示できるのは大きいんじゃないかなぁ。

こないだ、改めてセキュリティルール見返したんですけど、全然怖い感じなかったもんね。
「こういうところ気をつけてくれれば発信ウェルカムよー」みたいな感じでした。

で、私個人の話をしておくと、私はたぶん環境問わず自己開示性フルオープンに生きてるほうなので、「この環境だから開示できる!」とかはない気がします(笑)
前の職場でもだいぶフルオープンしてたので、環境関係なく、私が基本的にオープンなタイプなんだと思います。
じゃなきゃ、会社のこと書いたり、バスケの観戦記録書いたり、吉沢亮のことを書いたり、1つのアカウントで節操なく書かないと思うんだ。
全部込みであたいじゃけん(←え、誰?)

他者からなんか言われないと信じてるかは正直わかんないです。
いろんな人がいるから、どこでだって悪く言う人はいるよね、たぶん。
ただまぁ私は会社でそんなに目立ってるわけでもないし、全社巻き込んだ発言をしてるわけでもないから、特に変に絡まれたり攻撃されたりはいまのところはないかなぁ。

あと、これって、何をもって自分が「攻撃」と感じるかというのも大きくあると思うんです。
不安な状態や不安があるときって、単なる確認や質問さえも「怖い!!」と思っちゃいません?
私はたぶん、今のところ、質問は質問として必要以上に怖がらずにいられてるんじゃないかなぁ。
だから「質問=怖い」という人は、この環境の捉え方も私とは違うと思う。
たぶん地獄だろうな、と思います。

まとめると、自己開示性については、会社全体でどうなのかは私はわかんない。ま、敢えて言うならSNSがウェルカムムードって感じなのは自己開示したい人にいいよねって思う。

オープネスを妨げる3つの罠 

オープネス、いいことばかりじゃんって感じですが、なかなかどうして実現するのって難しい。
なんで難しいのか、その理由についても作者は述べておりました。

以下はオープネスを妨げる3つの罠でございます。

①ダブルバインド
「自由に意見を言っていいよ」と言われるが、実際に自由な意見を言うと、まったく歓迎されない

これ、めっちゃあるあるー。
育児あるあるでもあるー。
(さて、「ある」と何回言ったでしょう?)

こういう状態に陥ってる場合、メンバーはその組織内で精神疾患に似たような状態に陥るんですって。

ほんと、そうだと思うよ。
「自分で判断しろって言っといて、判断したら怒る」とかめちゃくちゃ組織あるあるじゃん。
「あなたのいう「自分で判断する」のアリなパターンて、針の穴くらい細いしわかんないですから!!」
とか叫びたい。

子育ての現場でもさ、多くはないけどたまに目にしたりするわけです、こういうの。
子どもがかわいそうだなってホント思う。
本来、どんな子どももいいところをたくさん持ってるのに、そんな子どもたちも思考停止にならざるを得ない環境ってつらいしやるせない。。

子育ての話になっちゃった(笑)

あ、これも今の会社の話で書いとくと、うちの会社は他よりはダブルバインドは少ないと思います。
なぜなら社員はおかしいと思ったら質問する義務があるから。
ダブルバインドなことを誰かがすると、たぶん誰かから指摘されるので難しいんじゃないかな。

②トーション・オブ・ストラテジー(戦略のねじれ)
よくわかっていないのに「自分の解釈を加えて解説しようとする人」が作りだす、戦略のねじれ。

複数の人を介すると解釈が混じっておかしなことになるよってことですかね。
これもあるあるー。

防ぐには解釈を入りにくくするってことですかね。
意思決定した人から経緯や背景を直接聞く、聞けるような場を用意する。
経営会議の議事録公開とか手っ取り早いかも。
あとは事実なのか解釈なのか、その都度確認するとかかな。

これもね、サイボウズには議論のためのフレームワークみたいなのがあって、そこに出てくるんですわ。「事実と解釈」ってコトバが。
「それって事実ですか?」とか「これ、僕の解釈ですけど」とかめちゃくちゃ会話によく出てきます。

③オーバーサクセスシェア
過度に成功体験をシェアするのは大事ではあるけど、やりすぎるとオープネスがさがる

ま、個人レベルでイメージするとわかりやすいと思うんですけど、メンバーみんなが成功体験ばかり話してる組織で、失敗したりミスするのって怖くないです?
私は怖いです。
成功体験を共有するのっていいことでもあるんだけど、失敗を言い出しにくくもするんですよ、きっと。

だから、失敗体験とかこそ、共有しあえるといいよね、と。

ここらへんはどうだろ。
足りてないかもな、全体的に。
成功体験を語る人が別に多いわけでもないけど、人の失敗体験をいい感じで共有していけてるかというと発展途上だとは思う。

まとめ

頑張って今いる組織で当てはめてみたらなかなか長くなってまった。
そして、後半ちょっと書くのがめんどくさくなっちゃった(笑)
テヘ。

この本、データをもとにした話が基本なので、データがないと動かないアタマかためな方を動かす材料としてはうってつけなんじゃないかな?と思います。
ロジカルな人は数字とか分析結果を出さないと動いてくれないので、そういうときにすごく使えます。

今回、自組織に当てはめてみたけど、うちの組織は色々よく考えられてるなーと改めて思いました。
オープネスにならざるを得ない仕組みがすみずみまで…。秘密を好む人にはこの上なく不向きな環境。

今回触れたところって内容のほんの一部で、これ以外にもものすごく色々なためになるネタが書かれていますので、ぜひ、読んでみてください。

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