【読書感想】「FACTFULNESS 」ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

https://www.amazon.co.jp/dp/4822289605/ref=cm_sw_r_cp_apa_i_RxjLDbRT0K6QK

この本の概要

私たちはわかったつもりで、世界のことを偉そうに語る。
だが、実は誤解したり間違った解釈で理解していることがたくさん。
それは、知識がないからでも、バカだからでもなくて、私たちの思い込みや、脳のクセみたいなものが原因だったりする。

間違った理解では、世界を正しくみることはできない。
まずは、自分たちが知らずに陥ってしまう「思い込み」を自覚し、データに基づいた事実に目を向けていこうよ。
という、そんな内容です。

私たちがいかに思い込みにとらわれているか。
この本の冒頭にあるクイズで簡単に自分の思い込み
がわかります。
全部は多いのでいくつかだけ紹介。

1.  現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A) 20%
B) 40%
C) 60%

2. 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
A) 低所得国
B) 中所得国
C) 高所得国

3. 世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
A) 約2倍になった
B) あまり変わっていない
C) 半分になった

4. 世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?
A) 50歳
B) 60歳
C) 70歳

正解は以下。
1. C
2. B
3. C
4. C

実際には12-13問くらいある問いで、作者は色々なところでこの質問をしたそうですが、学者、大学生、医者、など知識教養ある人たちでも、正答率は30%以下がほとんど。
チンパンジーがランダムで正解をひく確率は33%なので、知識がある人でもそうじゃない人でも、チンパンジー以下の正答率なんですって。

つかみでこの質問とチンパンジー以下っていう表現をつかうのはうまい。
「なんでだろう?」
って思っちゃうもんね。

10の思い込み

作者はこの低い正答率の理由を、人間の脳による、10の思い込みが原因と言っています。
じゃあその10個てなにか?
めっちゃざっくり説明。

1. 分断本能
貧困層と富裕層、善と悪、リア充と非リア充など、世界を2つにわけて考えてしまうクセ。
実際、そんな簡単なもんではない。

2. ネガティブ本能
世界はどんどん悪くなると思い込むクセ。
そんなわけはなく、テクノロジーと科学の進歩で良くなってるところはものすごくたくさんある。
良いことより悪いことがニュースになるから勘違いするだけ。

3. 直線本能
このままどんどん直線的に悪くなる、と思い込むクセ。
実際はグラフも色々なパターンがあるから、今まで増加してるから今後も同じように増加していくとは限らない。

4. 恐怖本能
危険でないことを危険と勘違いしてしまうクセ。
リスクじゃないのに、やたらと「リスクが…」とかいって動けないとかもこれだな。

5. 過大視本能
ひとつの大きな数字で重大と思ってしまうクセ。
「レタス10個分のビタミンC」と聞くとすごそうだけど、そもそもレタス1個のビタミンCがどんなか知らないじゃん。
でもそれだけ聞くと「10個てすごーい」と思っちゃうやつ。

6. パターン化本能
ひとつの例が、全部に当てはまると思っちゃうクセ。
仕事がつまらないと言っているサラリーマンの話を聞いて、サラリーマン全員仕事がつまんないと思い込んじゃうみたいな。

7. 宿命本能
すべてはあらかじめ決まっていて、ずっと変わらないと思い込むクセ。
欧米は常にアジアより優れていて、アジアが欧米より力を持つことはない、みたいな。
わたしとあなたは最初から結ばれる宿命だったの、みたいな。(それはむしろステキやん)

8. 単純化本能
世界はひとつの切り口で理解でき、問題の元凶はひとつと思い込むクセ。
日本が良くならないのは全部アベ総理のせいだ、みたいな。(要素のひとつかもしれないけどそれだけじゃない。)

9. 犯人探し本能
誰かを責めれば物事が解決すると思い込むクセ。
多いわ~。世の中、これまじで多いわ。
人じゃなくシステムです、たいがいの場合、問題は。

10. 焦り本能
今やらないとヤバい、と思い込んでしまうクセ。
冷静さを欠くので正しい判断ができなくなる。
深呼吸~。

めっちゃざっくり書いただけですが、書籍ではちゃんとそれらひとつひとつの本能に対抗するためにどうすればいいか、まで書いてます。
どれも納得なので、気になる方は読もう。

この作者は医者なので、全体的には世界の貧困とか医療とか、そういう話題が中心なんですが、この本能10個、身近な自分らの行動言動でみても、そのとおり。
すぐに2つにわけて考えたがるし、世の中悪くなってるって思ってしまいがち。

私はこれを読みながら、うちの夫のことをずっと考えてました。
(あ、そんなスイートな意味ではなくw)

私は、わりとすぐに「男の人はさ」とか「女の人は」と言いがちで。
でも、そういう発言をすると、夫は必ず、
「男だからじゃなく、その人が、でしょ」
とか
「あの人がそうだからってみんなそうとは限らない」
とか言うんですよね。
最初っからファクトフルネスが備わってる感じがあって、そういう指摘がこれまでけっこうたくさんあった。
ニュースや、読んだ本の話をしても、ちゃんとしたデータもないと私の口頭での説明だけでは信じない。

たまに、
「え、それも疑うのはさすがに違うだろ‥」
ってのもあるんだけど、なんにしても、思い込みの本能に惑わされず、フラットな視点でいられるってすごいな、と思う。

そんな夫からの指摘があるおかげで、たぶん結婚する前よりも、私もファクトフルネスは育ってるんじゃないかな〜と思っている。
少なくとも「レタス10個分のビタミンC」には騙されない程度のファクトフルネスはあるつもり。
フフ。

学校で教えればいいのに

こういうのって、生きてく上ですごく大事なものだと思う。
なんていうか、核になる部分。

心理学とかコミュニケーションとか、そういう人間理解や相互理解を深めるような学問こそ、若いうちからやればいいのに。
国語や数学の時間減らして、心理学とコミュニケーションは必修科目にしたらいい。
あんなにたくさん国語で作者の心情を推測したのに、すぐ隣にいる夫や嫁の心情を察する役にはたってないし、Twitterの文章も正しく理解できないヤツいっぱいいるし。
全員のじぶんごとだから、数学とか国語より気合入れて聞けると思うし、おもしろいよね。

心を動かすことの難しさ

思い込みとか、人の価値観とか、そういうのを揺さぶって人の心を動かしていくのってどうやったらいいんだろうか。
思い込みの激しい人は、これを読んだら、自分の思い込みに気付くんだろうか?

この本を手にとってる人は、実はもうファクトフルネスな視点でみる準備はできている人なんじゃないのかしら。
本当にファクトフルネスになってほしい思い込みの激しい人は、そもそもこの本を手にとらないし、この本を読んでも、ネガティブ本能や恐怖本能が働いて、自分の価値観を変えられないんじゃなかろうか。

仕事がら、働き方や多様性のことを考えることが多い。
職場を楽しく、自分も楽しく、生産性高く働くのには、自分の古い価値観に疑問をもって、自分の生き方を考えるところからだと私は思っている。

でも、そういう気付きを本当にしてほしい思い込みの激しい人や、楽しくない雰囲気を自覚なく作っている人に、こういうことばはどこまで響くんだろう。

ひとつわかるのは、そういう人を手っ取り早く効果的に揺さぶることができるのは、権力、権威、ネームバリュー、あと男性であること。

あ、別にそれを必要以上に悲観してるとかではなく、ひとつの真理として、現状はそういう状態だというだけ。
そんな状態だから、自分はなにもしないとかいうことでもなく、こっちはこっちでチョロチョロやっていくので、権力や権威やネームバリューがある男性の方々には、その力を最大限いい方向に使って、思い込みの激しい人たちの心を揺さぶりまくっていただきたい。

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