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小説 本好きゆめの冒険譚 第三十三頁

「何か、納得しておらんようじゃな?」

「ゼウスさん、その力って、誰でも出来ることなんじゃないですか?」

「誰でも、噺を書き換えられますし、何も無い所に新しい物語を書く事だって出来ます。」

「ふむ。であれば、これでどうじゃ?」

 ゼウスがパチンと指を鳴らすと、コピー用紙の束が出てきた。

「あっ、パパが書いたお噺!」

「それは、ゆめにやろう…大切な物なんじゃろ?」

 ページをペラペラ捲ると、全部に文字がある。

「確か、全部なくなったんじゃ…。」

「あ〜、あれはの、儂が紋章を書くために、元々あった文章を集めて変形させたんじゃよ。」

「この能力は、改ざん。解るかの?」

「では、」

 パチンと指を鳴らすと、空間が砂煙に覆われ、その先に砂漠の王国がある状態になった。

「この国って…!」

「左用。ゆめのパパが書いた噺の国じゃ。」

「コピー用紙を捲って見よ?!」

 コピー用紙をパラパラと捲ると、砂漠の王国の説明文が、光っている…。

「ゆめや、砂漠の国って、どう思う?」

「暑くて、砂煙が嫌な感じがします。」

「そうじゃろ、そうじゃろ。では、消してしまうとするかの?」

 ゼウスさんは、消しゴムのような物を私に渡し

「そこの部分を消して見よ!」
「はい。」

 光っている文字を消すと同時に、見えていた「砂漠の王国」も、消えてしまった。

「空いた部分に、ゆめの思う国を書いてよいぞ。」

 今度は羽ペンのような物をくれた。

 私は、「南国リゾートの都市」の説明文を書いた。
…同時に眼の前に、南国リゾートの都市が、現れた。

「変わったのが、解ったろう?」

「はい。」

「この様に、文章の世界とはいえ、実際に有るものなんじゃ。」

「今、消して書いたのは、ゆめのパパが生み出した世界で、改ざんしたのが、ゆめじゃ。」

「今やっとることが、例えば砂漠の王国が地球で、ゆめが消せるとしたら、どうなると思う?」

 それは、地球消滅、人類の滅亡を意味する。

 ゆめは、血の気が引くのを感じた。

「良いか?他の人からすれば、ただの本に書いてある文章に過ぎん。だが、ゆめが持つと、その世界は本当にこの宇宙に存在する物に変るのじゃよ。」

「わ、わかりました。ですが!」

「心配せんでもよい。」

 パチンと指を鳴らすと、リゾートの都市は元の砂漠の王国に戻っていた。

「これで、ゆめの持つ力は解ったようじゃの。」
 ゼウスさんは、微笑みながら次に移る。

「では、先日、儂がゆめに付与するのを失敗した能力の件じゃが…」
 ギロッとヘーラーさんが睨む。

「そ、その力なんじゃが、ここに何時でも好きな所から、来る事ができる力じゃ!」

「どういう事ですか?」

「ゆめは今まで、どうやって、ここまで来た?」

「寝てる時に夢の中です。」

「左用。今は、なんじゃと思う?試しに、何処かつねったり、叩いたり、触ったりしてみよ。」

 左の頬を触る…感触がある?つねってみる…痛い!、叩いてみる…もっと痛い!

「解ったかの?今までは、ゆめの精神のみが、この世界に来ておって、今は身体ごとここへ来ておるということじゃ。」

「じゃあ、今の私は家にいないと言う事ですか!?」

「そうじゃ。」

「パパ、ママ!2人が心配する!」

「安心せい、ゆめがここにいる間の時間は止めておる。」

「それに、ゆめがこの力を使った時も、時間は止まるからの。」

「これからは、ちゃんと話して書き置きのメモでも、置いて置くんじゃな。」

「わかりました。」

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スミマセン。もうひとつの力の説明は、次回にさせて貰います。


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