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小説 本好きゆめの冒険譚 第三十二頁

「それでじゃ、ゆめ?」

「はい?」

「詫びも含めて、ゆめにもうひとつ力を授けよう。」

 今度は槍を取り出して、私の頭にチョンと触れた。

「はい。出来上がりじゃ。」

「何の力をくれたんですか?」

「ふむ、説明した方が良いかの。」

「ゆめ自身の能力は知っておるか?」

 私自身の能力?聞いた事がない。

「ゆめが元々持っておった能力は、本が好きと言う事じゃな。」

 確かに本を読むのが好きだ。
 それが能力?

「どういうことですか?」

「ふむ、本が好きと言う事は、知識を得るという事でな、簡単に言うと、賢くなると言う事じゃな。」

「ただ、ゆめの場合、それに付属しての能力がある。」

「どんなものでしょうか?」

「ひとつは、改ざん。じゃな?解るかの?」

「改ざん?初めての言葉です。」

「解りやすく言うとな、ホレ、桃太郎を覚えておるか?ゆめが話を変えてしまったやつじゃよ。」

「はい。覚えています。」

「話をゆめが面白いと思う噺にした結果、儂はどうなったか、覚えておるじやろ?」

「はい・・・ゼウスさんが、3人になりました。」

「よろしい。それが、改ざんという能力じゃ。使い所を間違えるでないぞ。」

「もうひとつは、創造と破壊じゃな。」

「それって、ゼウスさんの能力じゃ…」

「確かに似とるが、少し意味合いが違っての、ゆめの場合、物語のみに通用する能力じゃ。」

「さっき、改ざんの話はしたの?似ておると言えば似ておるのじゃが、決定的に違う部分がある。」

「それは、無から有。有から無。の能力じゃ。」

「どういう事ですか?私には難しいです。」

「では、ゆめが好きな「桃太郎」の噺で、説明してやろう。」

「お願いします。」

「元々あった、桃太郎の噺を変えてしまったのが、改ざん。と言う事は理解出来たかの?」

「はい。」

「噺を面白くしようと、色々な物を付け足したり、消したりしたんじゃろ?それが創造と破壊の力じゃ。」

「もっと簡単に言うと、白紙の紙に一から書いていくのが、"創造"。」
「書いているうちに、ここは面白くないな〜消しちゃえ!ってやるのが"破壊"じゃ。解ったかの?」

「はい。良くわかりました。」

「これでゆめは色々な噺を変えてしまったり、新しく物語を作る事ができるのじゃ。スケールは違うが、儂ら神と同じ力じゃよ。」

 私は「ふ〜ん。」と頷いた。

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・・・残りの能力の説明は次回にします。


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