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小説 本好きゆめの冒険譚 第二十八頁

 季節は夏。もうすぐ夏休み。

 今日の朝ごはんは、題して「ホテルの朝食」。

 テーブルには、真っ白なクロス、真っ青なクロスがしかれ、涼しさの演出をしている。

 白い皿には、ベーコンのカリカリ焼きと目玉焼き、大きなソーセージ2本、ポテトサラダ、別の皿には、白い所が黄色い食パン2枚とバターのいい香りのクロワッサン2個。ジャガイモを使ったスープ「ビシソワーズ」、ヨーグルトにはミントが乗せられていた。

 学校では、明日から夏休みと皆が元気になっているが、毎年恒例、先生が宿題を出すと言うと「え〜」って声が聞こえていた。

 帰り道。

 私達の前を「その男子」と友達が歩いている。

「お前、ゆめの事、好きなんだろー?」

「うっせーなー!」

「言えよ!」

「誰が言うか!」

「好きなんだろ?ゆ・め・が?」

「・・・」

 その男子は、後ろから見ても分るぐらいに真っ赤になりながら、コクリと頷いた。

「!」
 私は立ち止まり、両手で持っていた荷物を落としそうになったけど、必死で食い止めた。

 その男子は、私達をチラッと見て、恥ずかしくなったのか走って帰った。

「やったね!ゆめちゃん!」
「相思相愛!憧れるわ~!」
「ちょっと、からかわないでよ!」
 と、言いつつも、真っ赤になった顔が緩んでしまう。
「ゆめちゃんだって嬉しそうじゃない!いいなぁ~、私も彼氏欲しい!」
 そんなことを言いながら、学校の門を出た。

「ただいま〜♪」

「お帰り〜ゆめ、随分とごきけんね?」

「えへへ〜!ママ、あのね、私が好きだった男の子が、私の事を好きだって事がわかったの!」
「まぁ、よかったわね!お付き合いするの?」
「え~、どうしようかなぁ~♪」

晩ごはんの用意を手伝っていると、ただいま〜と、パパが帰って来た。

「パパ〜、お帰り〜♪」

いつもより、ギュッと強く抱きつくと

「ゆめ、いい事があったのか?」

「え〜♪」

「パパにも教えてよ?」

「エヘヘ、ナイショ♪」

 今夜の夕飯は「お好み焼き」。
 何でも、近くの畑でキャベツが豊作だったらしく、おすそ分けで頂いたのだとか・・・

 味はシッカリ「関西風」。かつお出汁のいい匂い!
 少し大き目の粗めに切ったキャベツをボールに入れ、粉は少な目、キャベツ多めのヘルシーお好み焼き。

 たっぷりキャベツの生地を鉄板に落とすとジュワ~っと音が鳴る・・。
 ソースが焼けた匂いが食欲をそそり、早く、早くとコテを鳴らす。

 私は豚玉。ママはイカ玉、パパはミックスモダン焼を食べた。
 今日の私は、いつもより良くしゃべり、良く笑っていた。

 お風呂で何回も「教えてくれよ〜」ってパパにお願いされたけど、ナイショはナイショ。教えてあげない♪

 浮かれた気分でベッドへダイブ!
 今日干したフカフカの布団からお日様の匂いがして、気持ちいい!

 その男子の顔を思い出しては、「エヘヘ〜♪」と、ニヤけてしまう。

 今日の私は最高に、幸せだ!
 と思いながら、眠りについた。


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