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小説 本好きゆめの冒険譚 第二頁

「ぱぱしゃん。」
 2歳になった私。話す事はできるのだが、まだ辿々しい。

「私は誰かな〜?」
「まましゃん。」指さしながら言うと、涙を浮かべながら、私を抱きしめる。

 それ程、私を溺愛しているのだ。

 さて、何故私が両親の事を「ぱぱしゃん、まましゃん」と呼ぶのかと言うと、両親は私が覚えやすい様にと同時にお互いを「パパ」、「ママ」と呼び合うのが夢でもあったらしい。

 本当に仲の良い2人である。

 では、私が言う「〜しゃん」は、まだ両親がお互いを呼び合うのが照れくさいようで、どうしても「〜さん」付で呼び合っているのを、私が覚えたようだ。

 夕方、「ぱぱしゃん」が帰って来た。

「お帰り〜!」と「まましゃん」が出迎える。

「あっ、ゆめを抱いてズルい!僕にも抱かせてよ!ただいま〜ぱぱしゃんですよ〜」

・・・疲れてないのだろうか?

 夕飯は私が好きな、名古屋風ナポリタンススパゲッティ。酸味を飛ばしたたっぷりケチャップの甘みと、とろ~りたまごがたまらなく美味しい。

 私は、パパしゃんから、ママしゃんからと交代で食べさせてくれる。
 本来ならば、そろそろ自分のフォークで、顔や衣服を汚しながら食べるものだが、私に甘々の2人は食べさせるのが幸せなのだろう、そんな事はお構いなしだ。

「ぱぱしゃん」にお風呂に入れて貰う。

 パパしゃんは私を丁寧に洗ってくれるし、気遣ってもくれる。それも、異常な程に。

 お風呂からあがった私を拭いてくれるのは「まましゃん」の仕事。これも丁寧に拭いてくれ、ベビーオイルまで塗ってくれると至れり尽くせり。

 夜眠る時に、いつものように「まましゃん」が絵本を読んでくれる。

 ママが持ってきたのは、かなりボロボロの古い本であるが、

「何故かこの家にあった絵本だよ〜」と言っていた。

 今回の話は「桃太郎」。

 母の優しい声を聞きながら、私は眠りについた。


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