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小説 本好きゆめの冒険譚 第二十五頁

 目が覚めた。

「ゆめ〜、朝ごはん出来てるわよ〜。」
 いつものママの声がする。

「はぁ〜い。」
 と、いつもと同じ様に返事をする。

 リビングに下りると、パパが
「ゆめ、おはよう。」
 と、いつもの優しい目で見てくれる。

 顔を洗って、リビングに戻ると朝ごはん。

「今日は、パン祭りよ〜!」

 テーブルには、様々なパンが置かれている。
 食パンから総菜パン、デザートのようなパンもあれば、ドイツの黒パンまである。

 ミルクたっぷりスクランブルエッグ、ヨーグルト、鶏胸肉と根菜をメインにしたサラダ、自家製ソーセージ、イチゴのスムージー…。ちょっとしたお店です。

「忘れ物はないわね〜?」
「は〜い!」

 靴をトントンと整えて
「行ってきま〜す!」

「気をつけてね〜!」

・・・いつもの光景。

 通学路を歩いていると、いつもの交差点で
「ゆめちゃん、おはよー!」
 いつもの友達と通学。
 昨日見た、テレビの話とかをしながら歩いてゆく。


 今日から、「新学期」!
 私は小学4年生になっていた。

 あれから、ゼウスさんとヘーラーさんには会えてない。「本を読んでいればわかる」と言われた能力も何かがわからないまま…
 会いたいという気持ちもあるけれど、
 いくら左手に意識を集中しても、
 何も起こらないんです。

 それよりも、今は、学校が楽しいんです!
 授業も(体育はだめ)楽しいし、
 友達との、おしゃべりもすき!
 たまに、気になる男子の話で盛り上がり、
 キャーキャー言ってる時間がすき!

 教室では男子グループ、女子グループって別れるけど幼稚園からの友達は、今でも「男女混合」です。

「給食の時間」が、好き!
 私は、当番の時の方が好き…何でか?
「気になる男子」の時は、サービスできるもの、
 あの子、分ってくれるかな?


 元々、その「男子」の事は、気に食わなかった。
「ブス!ブース!」ってからかってきたり、
 悪戯してきたり、もう最悪!って思ってたの。

 でも、ある日…

 私がひとりでの帰り道、野良犬に絡まれた事があって、それを助けてくれたのが、その男子。
 体中に傷を負いながらも、大丈夫?と気にかけてくれた、その男子。

 それからは、何故か気になって、その男子を見ている事が多くなり、偶然に目があったら、慌てて目を逸らすようになったり、廊下ですれ違うだけでドキドキしたり…決定打が友達の「ゆめちゃん、あの男の子のこと、好きだよね。」って…

 それからは、その「男子」の事が好きなんです。

 今は、そんな事をしている時間と自分が「好き」。
 だから、ゼウスさんとヘーラーさんの事は、たまに忘れるんです。

 学校が終わって家での時間。
 「ただいま〜!」パパが、帰って来た!

「パパ、お帰り〜!」
 パパに、抱きつくと

「ただいま、ゆめ。重くなったな〜」
 と、抱っこしてくれる。

 皆で食べる晩ごはん、今夜は「もんじゃ焼き」。
 定番の塩もんじゃ、餅明太チーズもんじゃ、海鮮もんじゃ、みんなで焼きながら食べるもんじゃ美味しい!

 パパと一緒に入る、お風呂が楽しい!

 幸せに包まれて、今日も眠ります。


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