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小説 本好きゆめの冒険譚 第三十頁

 夏休みが終わり、始業式。

 クラスメイトは皆、更に真っ黒に焼けている。
 私もそれなりに焼けてるはずだけど、この中では白い方だ。

「その男子」はいなかった…。

 先生が、夏休み中に引っ越して行ったとの話。

「その男子」は、転校していった。

 私は、初めての恋と初めての失恋を体験した。

 私の事を知っている友達が、気遣ってくれるけど、「大丈夫だから」と笑顔を向ける。

 本当に何もないし、何も感じない。

 学校の始業式も早い目に終わり、帰り道。

 ひとりで歩く道の途中に、大きな木があった。

 私はその木に抱きついて、あの雨の日の事を思い出す。

「凄い雨だったな…」

 傘を持たなかった2人の事を思い出にして心にしまった。

 いつもは、晩ごはんの前にお風呂なんだけど、今日に限っては食事の後に入ってと、ママが言った。

 今日の晩ごはんは「激辛料理」。
 色んなメニューが、真っ赤に染まってる。

 ゆめはそんなに辛くないのをと、別に作ってくれた物を、ひとくち食べる。

 舌が痛い!汗が止まらない!
 慌てて氷水を流し込む。あれ?水って、こんなに甘かったっけ?

 だから、お風呂は後でってママが言ったんだと悟る。

 それでも、頑張って全部食べる私の前で、パパが顔を真っ赤にして悲鳴をあげていたのは、面白かった。

 激辛料理を食べた後に庭に行ってみる。夜風が涼しい。

 お風呂の中で・・・

 今日の学校は、どうだった?いつものパパの質問。
 「その男子」の事を思い出すけど、「いつも通りだよ。」と言った。

 そして、私の部屋…。

 いつもはベッドへダイブ!なんだけど、今日は、そんな気分になれない…。

 椅子に腰かけ、机に顔を伏せた。

「机が冷たくて、気持ちいい…。」

 頭を上げると、視界には古びた「御伽噺」の本。

 久しぶりに読んでみるかと、左手を出す。

 私の左手から光が放出され、本に吸い込まれて行く。

・・・・・
・・・・
・・・

 目が覚めた。私は草原の真ん中で、大の字になって、寝ていたようだ。青い空は高く、そよ風に乗った緑の匂いが心地いい。

 私はここが、何処なのかを知っている。

 あの絵本「桃太郎」の御伽噺の中だ…。

 起き上がり、周りを見渡すと、見慣れた家があった。

「お爺さんとお婆さん」が暮らす家。

 少し離れた所に川が流れている。

 私は、その家に向かう道中で、ひとりの「武士」と出会う。桃太郎だ。

 桃太郎は、私の顔を見て、
「お、お主…!」

 桃太郎の体が分裂をし始めた!

 その瞬間、「場面転換」。

 見慣れた場所は「何も無い空間」。

「悪戯はいかんと、言ったじゃろ?」

 懐かしい声が聞こえた。

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 私、恋を経験して少しだけ成長してます!


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