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ディスレクシアのための、英語を使わない大学入試 #2ディスレクシアのAO入試は“早い準備”が決め手

前回(ディスレクシアのための、英語を使わない大学入試 #1様変わりする大学入試とディスレクシア)では、ディスレクシアの生徒の大学入試では、(進学校でない限りは)基本的にAO入試がおすすめだとお伝えしました。

とはいえ、ディスレクシアの生徒がAO入試での合格をめざすためには、ディスレクシアならではの注意点が3点あります:

注意点1・早い時期から準備が必要
注意点2・できるだけ多くの人に、志望理由書を見てもらうべき
注意点3・ディスレクシア的には、AO入試を選んだら、一般入試との併願は考えるべきではない

今回は「注意点1・早い時期から準備が必要」について詳しくお伝えします。

注意点1・早い時期から準備が必要

AO入試が「早い時期から準備が必要」と言ったとき、そこには2つの意味があります。

1) 高校入学と同時にAOを意識して動き始める
「高校時代に力を入れてきた」と自信を持って言えるような活動に、早くから取り組む →志望理由書で説得力のあるストーリーを語れることが、AO入試では大切
2) 出願書類を書く準備を、早くから始める
・出願書類を読むのを手伝ってもらう。重要な部分をスクラップ
・書写
・漢字やひらがなの字形を確認する
・筆記具にこだわる
・誤字をチェックしてもらう

英語がなく、一発勝負の学力試験がないAO入試。一見するとラクに見えるかもしれませんし、実際ディスレクシア的には本当にありがたい入試方法なのですが、一般入試と違った大変さがあります。

AO入試で意識したいのは、なんといっても「早めに準備を始めること」。
もじこ塾では、中学を卒業する時点で、一部の例外を除き「大学に行きたいならAOを視野に入れるべき。高校に入学する今からAOを意識して動く必要がある」と伝えています。
AO入試は、とにかく早い時期から準備が必要なのです。

その一方で、「志望理由書」や「活動報告書」といった出願書類を書く準備を早くから始めることも重要です。

順に説明していきます。まずは、高校時代に力を入れる活動についてです。

◆高校入学と同時にAOを意識して動き始める

基本的に、どの大学のAO入試でも「高校時代に力を入れてきた活動」について問われます。

その「活動」とは、学内活動(部活や委員会活動)、または学外活動(検定試験、コンテスト応募、研究、ボランティア、社会貢献活動、習い事など)のこと。活動の充実度や実績が、合否に大きな影響を与えます。

そして活動をしてきた実績は、一朝一夕でできあがるものではありません。高校に入学した時から意識し、なるべく早くからコツコツと活動実績を積み上げていくことが必要です。

ちなみに、AO試験で問われるのは高校在学中の活動ですので、小中学生からその活動を続けている必要はありません。
高校入学と同時に心を入れ替えて、何かの活動をコツコツと積み重ねれば、出願する頃には立派に語れるストーリーになっていることでしょう。

そう、志望理由書で説得力のあるストーリーを語れることが、AO入試においてはとても大切なのです。

・志望理由書では”説得力のあるストーリー”が大事

今これを読んでいる人で、AO入試を考える新高1の人がいるなら、
・中学時代に成し遂げたこと、
・現時点で高校生活において何を頑張りたいか(「主要5教科で良い成績をとる」以外の内容)

を、書いておくことをお勧めします。

これを書き残しておけば、ゆくゆくは活動実績のストーリーの出発点にできる可能性があります。
2年後に志望理由書を書くときに、助けになってきます。

もじこ塾からAO入試に合格した生徒のなかには、月1回、400字程度のレポートを1年半以上、提出していた生徒もいました。
たとえば、舞台芸術に関心があるなら、毎月1本、舞台芸術か志望大学に関することを、何かひとつまとめるのです。
毎月続ければ、やがて立派な活動報告になってきます。
舞台を鑑賞し、その内容を考察してもいいですし、自分が舞台に出演するための準備から当日までを振り返ってもいいでしょう。
舞台に関する本や映画、youtubeで観た舞台の感想もいいですね。
もちろん、オーブンキャンパスの内容や感想も記録しておきます。

こうしたレポートを書き続けるうちに、志望理由書に書く内容が、だんだん固まってきます。

コンテスト応募も、活動報告には有効です。
もちろん、華々しい結果が出れば最高ですが、そうでなくても、コツコツと応募を続けて小さな賞を積み重ねたものも、2年分もまとまれば立派な活動実績になってきます。

◆出願書類を書く準備を、早くから始める

AO入試への出願には、さまざまな書類を作成しなければなりません。
志望動機について書く「志望理由書」や、力を入れてきた活動について書く「活動報告書」などが主だったものです(大学によって書類の名称はさまざまで、志望理由書で活動報告をすることなどもあります。しかし、問われる内容はおおむね共通しています)。

注意しておきたいのが、これらの書類を準備するという作業自体にも、かなりの時間と手間がかかるということ。

特にディスレクシアだと、読むことも書くことも人一倍の時間がかかるため、余裕を持って準備する必要があります。

募集要項は字だらけで、しかも分かりにくいですし・・・

※筑波大学アドミッションセンター入試 学生募集要項より

志望理由書は、原則として手書きです。もちろん、修正テープ不可・・・

※慶應義塾大学法学部 志望理由書より

普通の人にとっても、出願書類を読みこなすのは骨が折れるものですし、志望理由書を書くのは神経を使います。
ましてや、読み間違いや書き間違いの多いディスレクシアにとって、こうした書類をきちんと読みこみ、きれいな手書きで、誤字はひとつもなく、志望理由書のマス目を埋めるのは大変なことです。

そこで、ディスレクシアならではの対策が必要になってきます。

・「読み」と「書き」の訓練をていねいに

具体的な対策方法として、以下がおすすめです:

読み:
・出願書類(募集要項など)は、学校や塾の先生、または親にざっと目を通してもらい、読む必要のある部分を、ある程度選び出してもらう。内容を読み上げてもらってもよい。
重要な部分は、専用のノートやバインダーを作ってスクラップする、または写真に撮ってスマホに保存する。
書き:
書写。高3にあがる春休み頃から、1日5分、書写をするのがお勧めです。指の筋トレのイメージで。指先に書字の筋肉がつくと、字もだんだん整ってきます。
もじこ塾ではTwitterの#朝活書写を使っています。
・漢字やひらがなの字形を確認する。ディスレクシアのなかでも特に、読みにくい字を書く人は、高校生になった今だからこそ、楷書を改めて確認することをお勧めします。一つひとつの字について、きれいに見える書き方を改めて追求すると、今からでもかなり字はきれいになります。
もじこ塾では、『楷書の基本100パターン』(日本習字普及協会刊)使っています。
・筆記具にこだわる。筆記具を変えるだけで、字がきれいに見えることもあります。自分の字がきれいに見える筆記具を探してみることをおすすめします。
もじこ塾のおすすめは、万年筆です。弱い筆圧でも書けて、味わいのある字になります。
誤字をチェックしてもらう。志望理由書を清書する前と後に、誤字がないか、第三者にチェックしてもらいましょう。

ところで、志望理由書の内容は自分で考えて書きましょう。
誰かに頼んで代わりに書いてもらっても、面接でボロが出ます。

◆◆◆

このように、「AO入試は早い時期から準備が必要」として、高校入学時からAOを意識して動くべきだということ、また出願書類を書くための準備を、早くから始める必要があることについて話しました。

とはいえ、高校に入ってからしばらくの間、AO入試で語れるような活動を特にしてこなかったからといって、AO入試をはなから諦める必要はありません。

これを読んでいる人のなかには、高校在学中にたとえば不登校になって活動どころではなかった人や、ディスレクシアだと気付いたのが高校の途中だった人もいるでしょう。

このように、高校入学以来、地道に活動実績を積み上げてこなかった場合は、自分の高校生活を、一見ネガティブな経験も含めて、筋の通った説得力のあるストーリーとして語れるかどうかがポイントになります。

数年前、もじこ塾に来た生徒のなかに、高校在学中にいっとき不登校になってしまった生徒がいました。
この生徒は
「自分は不登校の時期に自分を見つめたからこそ、本当に○○になりたいと思えたし、この職業に必要な”人の痛みに寄り添う力”を得ることができた」
と、不登校経験をポジティブに語り、志望学科に合格することができました。

(もじこ塾でも志望理由書や活動報告書の添削を行っています。ご興味のある方は、お問い合わせください

※このnoteで取り上げてほしいテーマを募集します。
コメント欄、またはmojikojuku@gmail.comまでお寄せください。

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