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全然連絡とってないけど、一つ年下、インドネシア人、尊敬するダニエルとの出会い@タスマニア 前編

ハウスメートのダニエルは、2階にあるドア直ぐ右手の部屋、左手の部屋は、香港の女性が2人、語学学校のクラスメートで、僕と気の合う韓国人のテウは、入って真っ直ぐ突き当たり右手、僕は居間を抜けて、1番奥の部屋に住んでいた。初対面のダニエルの印象は記憶がないが、部屋をのぞくといつも、不法ダウンロードしたゲームか、日本のアニメをみていた。タスマニア大学のシステムエンジニア系の学部2年生だったが、勉強をしている姿を、ついに一度もみたことがない。引っ込み思案で、目が合うと、ついつい、ニコニコしてしまう、気のやさしそうな青年。処世術として大人が身につけていく、裏表がまだ培われてない、純朴さがあったが、日本では、半ば強要される処世術でも、インドネシアでは、そもそも、不要なのかもしれない。東南アジア系の肌の色の黒さがあり、僕と同じくらい月並みの身長で、ひょろっと痩せていたが、ティムタムというオーストラリアのお菓子にはまってからというもの、着実にデブの道を辿っていた。とにかく、タイピングが早技なので、褒めると、「実は、タイピングのコンテスト、優勝したことあるんだ」これでもかと言うこと、歯に噛んで、恥ずかしそうに語っていた。

テウは、日本の、「鉄拳」という、格闘ゲームの地元(ソウル?)のチャンピオンだった。徴兵の時の、狙撃の大会で、優勝した腕をもつ。バーチャル、リアル、集中力を要する、あらゆるゲームが得意だった。

家から歩いて1分、大学のパソコン室で、PCの戦争ゲームを、テウとダニエルが対戦していた。インドネシアでは、禁じ手ではないのか?幾らタイピングが速いといえど、真面目に戦ったら勝てないと悟るやいなや、韓国では禁じ手の必勝法を展開。テウのタイピングの音が明らかに不機嫌になり、

「Hey Daniel! You are so unfair!(おい、ダニエル!おまえ、ずるすぎ!)」

「But I haven't played out of rule.(でもさ、ルールは犯してないよね)」

勝つ為の唯一の手段なのだろう。腕を横に広げ、手のひらを上に向けて、首を傾げ、俺悪くないもーんという仕草をせんばかりの態度で、ヘイヘイヘーイと、ひょうひょうと禁じ手にこだわる。

ダニエルが勝った。

「I don’t wanna play with you any more.(二度とお前とはしない)」

力強く席を立ち、パソコン室をでる。しょんぼりするダニエル。僕と目が合い、不器用な間。

それから、2人がゲームの対戦をしているのを見たことがない。これもまた、異文化交流なのかもしれない。
二人の仲が、悪くなった気配はなく、タイミングが合えば、一緒にスーパーに行ったり、居間で飯を食った。

土曜日の早朝、家がガタガタと揺れ続け、目が覚める。地震か?居間にでると、テウもダニエルも香港女性2人も居間に集まってきた。

揺れがとまった。と思うと、また、はじまる。

耳を澄ますと、古びた家のきしむ音に、何やら別の音が混じっている。ひざまずき、床に耳を当てるダニエル。

要領を得たような表情で、床を指差す。

一階には、190センチ、120キロは肥えているだろう、メガネをかけた、オタクっぽい、巨漢の白人オーストラリア人学生が住んでいた。アジア人が嫌いなのか。殆ど口をきく気がなく、月に1度、あいさつするくらいの仲で、殆ど家にいないからと、電気代を雀の涙しか払わないまま、引っ越していった、クソみたいな奴だった。タスマニア大学にある、ラジオのパーソナリティも務めていて、ガラス張りのスタジオで話してる姿を目撃したときは、別人のように生き生きしていた。

180センチ、100キロは肥えている彼女と共演し、家丸ごと巻き込んだ、営みをしていた。

映画のパロディーで、馬鹿にされる、こてこてのカップルのように、興奮を呼び起こすどころか、男の象徴を縮こませるような、獣のような雄叫びだった。

目配せし、みんなで、苦笑いしながら、高笑いする。

「I'll go back to sleep listening to music with a headphone.(ヘッドホンで音楽聴きながら、寝るよ)」

とあくびをしたテウが部屋に戻る。徴兵の期間に7割が風俗を経験すると言っていたテウ。慣れているのだろう。

昼休み大学のカフェテリアで、テウと大盛りのラザニアを分け合って食べていると、20代半ば、眼鏡をかけた清楚な色白のアジアン美女と、幸せそうに談笑している、ダニエルに遭遇。見たことのない、ダニエルの表情だった。

「This is Monica. And this is Tewoek and Taku. She is also from Indonesia and like my sister.(こちらは、モニカ。こちらがテウとタク。彼女もインドネシア出身で、僕の姉気分なんだ)」

頭を掻き、ばつが悪そうに、紹介するダニエル。

「He is like my brother, please take care of him.(彼は私の弟みたいなものだから、彼の面倒、よろしくお願いします)」

一瞬だけ寂しそうな表情を漏らし、にこにこと笑顔を振りまくダニエル。

僕は地元が苦手だった。ひとたび、ステレオタイプ、演劇のように、役割を割り当てられると、その役割を強要してくる。その役割から外れると「らしくないよね」と、決めつける。本当の自己とはかけ離れた、勝手な決めつけで、割り当てられた役割からかけ離れた結果、裏切られたと罵られたり、罵倒されたり、嘆き悲しまれるのが、おちである。

モニカの感覚とダニエルの感覚のズレ、心の奥底に、仕舞い込もうとする、ダニエルの想い、モニカの求める役割をまっとうしようとする、ダニエルの、そこはかとない温もりを感じた僕。それに、気付く気配がないモニカ。

続く

全然連絡とってないけど、一つ年下、インドネシア人、尊敬するダニエルとの出会い@タスマニア 中編

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