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須賀しのぶ「また、桜の国で」を読んでみた

しばらく積読になっていたが、ようやく読み終えた。桜は花の名前なのに、タイトルだけで戦争の話だというのが分かってしまうのが不思議だ。

最近、自分と年の近い作家で、戦争を描いた小説が多い気がする。私が無意識に選んでいるだけなのだろうか‥。

一九三八年十月―。外務書記生・棚倉慎はポーランドの日本大使館に着任。ナチス・ドイツが周辺国へ侵攻の姿勢を見せ、緊張が高まる中、慎はかつて日本を経由し祖国へ帰ったポーランド孤児たちが作った極東青年会と協力、戦争回避に向け奔走する。だが、戦争は勃発、幼き日のポーランド人との思い出を胸に抱く慎は、とある決意を固め…。

紀伊國屋書店, https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784396345891

私はポーランドに行ったことがない。近代史もまともに勉強していなかったから、第二次世界大戦下のポーランドが、こんなに過酷な状況だったことを知らなかった。自分の国がなくなるということや、居住地を制限されるというのがどういうことか、あまり具体的に想像したこともなかった。

史実としてもきちんと理解したいと思ってゆっくり時間をかけて丁寧に読んだけど、辛かった。

辛いシーンと同じく、感動的なシーンがたくさんあった。戦時下という極限状況で知る身近な人の人間性、信念、友情、愛国、アイデンティティの探求、他者への貢献、生きてあることの喜び。私のような退屈な毎日ではあり得ない、一日一日が貴重になる体験。

面白いとか、興味深いという感想は軽いカンジがして適切ではないような気がするけど、出会って良かった本だった。

ただ、これは本で充分じゃないか。私は、現実世界では絶対に経験したくない。もし映像化されても、怖くて直視できないから、たぶん観ないと思います‥。

本には世界の全てがあると思います。自分の欲求や将来像が分からず模索していても、読んでいる内に答えが出てくる。本とは、そういうものだと思います。たくさん本を読んで、自分自身を見つけてほしいです。

須賀しのぶ『また、桜の国で』 高校生直木賞受賞記念インタビュー,
 https://bunshun.jp/articles/-/3159?page=1

近所のカフェで読み終えたけど、その日たまたまなのか、店内のお客さんの半分くらいは外国人だった。日本語を交えてるテーブルもあるし、私が知らない言語で話しているところもある。

最近すっかり外国人の観光客が増えて、普段もたくさん見かける。知らない言葉が聞こえる。留学や仕事の長期滞在者もいるだろう。

好きなところに行き来ができて、買い物をして、慣れた言葉を話す。そういうのが当たり前にできる生活で良かった。劇的なことは望まない。平凡、最高である。


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