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美味しい和菓子:日本橋

徳川吉宗公の時代から続く老舗和菓子屋の江戸風御菓子司 日本橋 長門さんに行ってみた。

高島屋や丸善がすぐそばにあり、クラシックで落ち着いた気持ちいいエリアにある。300年の歴史があると言えば老舗中の老舗なのに、気取りがなく、ふらっと入りやすい店構えだ。

評判の「九寿もち」か「切羊羹」を目当で入ったのに、ケースに並んだ「そら豆」があまりにかわいくて、思わずこっちをセレクトしてしまった。買わずにいられない存在感。

鮮やかな緑色のお饅頭から、こし餡がペロッと舌をだしている。実際のお豆よりだいぶ大きく、形はどの角度から見てもよく出来てて、まるで本物を拡大したみたいだ。そら豆っぽい味はしないけど、ふわふわの皮に滑らかで上品な餡がとっても美味しい。

夏の定番のお菓子らしいけど、数ある夏っぽい物の中からこのモチーフを選んだというのが可笑しかった。確かに、そら豆って出回る時期がかなり短いし、他のお豆より断然大きくて、変に生命感あるというか、ついまじまじと見てしまう気になる存在だ。その感覚まで再現されてて、遊び心があっていいなぁ。

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こちらは「芝桜」。野山に芝桜の絨毯が広がっているのをイメージしているらしい。ツヤツヤの鹿の子でできた地面の上に、キラキラ輝くようなピンクの桜が面で広がっている。ぷちぷちした道明寺と、つるっとした錦玉の食感がいい。

一粒のお豆の拡大と、眺めのいい場所から見た風景の縮小が、同じガラスケースに収まって売られているのが、不思議な気がした。景色を見るズームをこんなに自在に変えられるのがすごいし、いろんな素材の組み合わせも軽々と、どんな季節も思い通りに表現できるという余裕が感じられる。

これ見よがしな推しの強さがなく、やんわり軽くて気さくで、でも近寄ってみるとやけに上質。その度を越えたこだわりようが、ちょっと面白くて笑ってしまう。そういう雰囲気が、お江戸の本物な気がした。

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