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ジョアン・ジルベルトガイド

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ジョアン・ジルベルトの全キャリアを年代とアルバムで切り分けて辿る。彼が何を見て何を目指したのか、同時代の流れも含めてルーツを遡っていくジョアンを知るためのガイド。 ※2020/2… もっと読む
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2019年1月の記事一覧

ジョアン・ジルベルトガイド⑦/ゲッツ/ジルベルト#2 Getz/Gilberto#2 1964年〜1969年

ジョアン・ジルベルトガイド⑦/ゲッツ/ジルベルト#2 Getz/Gilberto#2 1964年〜1969年



・ヨーロッパツアーとアメリカでの日々

1963年3月、スタン・ゲッツとのレコーディングが終わると、ジョアン・ジルベルトはセバスチャン・ネト、ミルトン・バナナ、そしてもう一人の伝説ジョアン・ドナートともにイタリアツアーへ出発する。この時のふたりのジョアンの演奏は今のところ発掘されていない。
この時彼らが演奏していたブッソロットというライブハウスの、別フロアではブルーノ・マルティーノが出演してい

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ジョアン・ジルベルトガイド⑧エン・メヒコ/En Mexico 1970年

ジョアン・ジルベルトガイド⑧エン・メヒコ/En Mexico 1970年



・メキシコでの生活

1969年、ジョアン・ジルベルトはメキシコシティでのライブに招聘されたあと、この地が気に入り居を構え、日本風家屋(どういった家なのか未だによくわからない)に2年ほど暮らすことになる。
(この頃、中国の卓球選手から卓球を学ぶなんてことも。)
ミウーシャによるとメキシコシティはブラジルに近い雰囲気があったことから、ニューヨークを離れてそのまま滞在する事になったという。
レコー

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ジョアン・ジルベルトガイド⑨/三月の水 João Gilberto(1973) 1971〜1973年

ジョアン・ジルベルトガイド⑨/三月の水 João Gilberto(1973) 1971〜1973年



・ブラジルへの一時帰国

1971年8月。ジョアン・ジルベルトはブラジルのテレビ局トゥピーTVからジョアンの特番への出演依頼を受ける。そこでジョアンはロンドンに亡命していたカエターノ・ヴェローゾへ電話をし、一時帰国して一緒に番組に出演しようと持ちかける。
軍事政権と関わりたくないカエターノを説き伏せ、ガル・コスタ、トン・ゼー、ホジェーリオ・ドゥプラなどが集まり、6時間に及ぶライブの収録が行われ

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ジョアン・ジルベルトガイド⑩/ベスト・オブ・トゥー・ワールズ&ゲッツ/ジルベルト’76 / The best of two world & Getz/Gilberto’76 1975〜1976年

ジョアン・ジルベルトガイド⑩/ベスト・オブ・トゥー・ワールズ&ゲッツ/ジルベルト’76 / The best of two world & Getz/Gilberto’76 1975〜1976年



・10年越しの再会

1975年、今回のコラボレーションのきっかけはゲッツからの申し出だった。
64年にGetz/Gilbertoが発売されてからというもの、ジャズの世界にブラジル音楽が入り込み、70年代に入るとフュージョンやAORの中に、大きな要素として取り上げられることも少なくなかった。アメリカに拠点を移したデオダートの大ヒット作Prelude(ツァラトゥストラはかく語りき)、アイルト・モ

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ジョアン・ジルベルトガイド⑪/イマージュの部屋 Amorozo 1977〜1978年

ジョアン・ジルベルトガイド⑪/イマージュの部屋 Amorozo 1977〜1978年



・ポップミュージックとの邂逅

トミー・リピューマにとってこのアルバムのプロデュースは、キャリアの中で大きなトピックだったのではないだろうか。
60年代後半にリピューマが手がけたA&Mレーベルでの仕事を聴けば、Getz/Gilbertoでのソフィスティケートされ、かつ親しみやすい表現が根底にあったのが分かる。
クロディーヌ・ロンジェのか細い歌は、アストラッドがいなければ成り立たなかった表現であ

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ジョアン・ジルベルトガイド⑫/海の奇蹟 Brasil 1980~1981年

ジョアン・ジルベルトガイド⑫/海の奇蹟 Brasil 1980~1981年



・アメリカ生活を切り上げブラジルへ帰国

1980年、ジョアン・ジルベルトは長きに渡る海外生活を切り上げブラジルへと帰国。この頃、軍事政権が終焉に向かいながらブラジル国内が落着きを取戻しつつあったことが、帰国するきっかけになったと思われる。

・帰国記念のライブ

TVグローボによる記念番組が企画され、オーケストラをバックにライブを敢行する。
アレンジャーにはドリ・カイミ、ジョアン・ドナート、

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ジョアン・ジルベルトガイド⑬/ライブ・アット・モントルー Live at  the 19th montreux Jazz festival 1985年

ジョアン・ジルベルトガイド⑬/ライブ・アット・モントルー Live at  the 19th montreux Jazz festival 1985年



・ライブ・イン・モントルー

1985年7月18日、ジョアン・ジルベルトはスイスで行われる19回目のモントルー・ジャズ・フェスティバルに出演する。
そこにあるのは、オーケストラもバンドもおらずジョアンひとりの弾き語りのみ。
Garota de IpanemaやDesafinadoなど、これまでの代表曲と、この後のライブでも定番になるレパートリーを多く含んだ選曲となっていた。
後の90年代以降の

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ジョアン・ジルベルトガイド⑭/ジョアン João 1991年

ジョアン・ジルベルトガイド⑭/ジョアン João 1991年



・パジャマ生活

ブラジル帰国後、ライブで公に現れる以外はレブロンの自宅でほぼ隠遁生活を送るジョアン。パジャマ姿のまま四六時中演奏に明け暮れ、部屋が乱れ荒れると他の部屋に移り、また荒れると他の部屋へと移る生活を続けていたという。
1990年、マリア・ベターニアのアルバムAnos25に収録されたMaria/Lindafloでジョアンは歌とヴィオラォンで参加する。Mariaはアリ・バホーゾによる楽

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ジョアン・ジルベルトガイド⑮/現在聴くことが出来る90年代の各ライブについて

ジョアン・ジルベルトガイド⑮/現在聴くことが出来る90年代の各ライブについて

・ジョビンとの再会

1992年、ジョアン・ジルベルトは久し振りにトム・ジョビンを共演を果たす。⑤でも取り上げたとおり、Garota de Ipanemaでジョアンは初演の時の様子を再現していた。ヴィニシウスへのトリビュートを込めて、このふたりが揃い演奏する事であの時代への想い出を語っているような雰囲気がある。ジョビンはピアノ伴奏に徹しているが、Chega de saudadeでのイントロから歌に

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ジョアン・ジルベルトガイド⑯/声とギター Voz é Violão 2000年

ジョアン・ジルベルトガイド⑯/声とギター Voz é Violão 2000年



・70歳手前で成し得た到達点

2000年、ジョアンは古巣ヴァーヴから約10年ぶりにアルバムをリリースする。翌年このアルバムは2001年グラミーのワールド部門を受賞することになる。今回はカエターノ・ヴェローゾをプロデューサーに迎え、タイトルの通り装飾のないジョアンの歌とヴィオラォンのみのレコーディングとなった。
90年代のライブを通じてジョアンのテクニックよりは深化しており、無駄を削ぎ落とした

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ジョアン・ジルベルトガイド⑰/イン・トーキョー In Tokyo 2004年

ジョアン・ジルベルトガイド⑰/イン・トーキョー In Tokyo 2004年



・コンバンワ

2003年9月、ジョアン・ジルベルトは初めての来日公演を行う。公演は東京国際フォーラムと横浜パシフィコの二ヶ所の計4日間。
この公演で語り継がれている20分間のフリーズは流石にこのアルバムには収録されていないが、この公演を見た人たちの間で話題となっていた。
(翌年の2回目の来日の際には更に長い時間、拍手の中フリーズしていた。)当時の様子は中原仁さんのブログに綴られているのでこち

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ジョアン・ジルベルトガイド⑱/ソングブック ジョアンが愛したサンバとエトセトラ 歌手編

ジョアン・ジルベルトガイド⑱/ソングブック ジョアンが愛したサンバとエトセトラ 歌手編

・ジョアンが愛したサンバとエトセトラ今まで紹介したサンバの曲を歌手別にまとめてみた。
(並びは順不同。特に重要なものを手前に配置)
ブラジル国外のものは後半にまとめている。

ジョアンが影響を受けた歌手としてまず挙げられるのは、オルランド・シウヴァ、アンジョス・ド・インフェルノ、フランシスコ・アウヴェス、オス・カリオカスだろう。ルイ・カストロのボサノヴァの歴史にはさらに膨大な量の人名が羅列されてい

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ジョアン・ジルベルトガイド⑲/ソングブック ジョアンが愛したサンバとエトセトラ 作家編

ジョアン・ジルベルトガイド⑲/ソングブック ジョアンが愛したサンバとエトセトラ 作家編

ジョアン・ジルベルトが取り上げた古いサンバの多くは、年代をみると古くは1930年代から1940年代の戦前戦後を挟んだ時期のものが中心となっている。
ブラジルは第二次世界大戦でアメリカやイギリスなど連合国に参加し、国内が戦火に見舞われなかったのは大きいと思われる。アリ・バホーゾやドリヴァル・カイミなど、戦前から活動していた作家たちが戦後も活躍しジョビンやジョアンらの世代と交流することで、その文化は脈

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ジョアン・ジルベルトガイド⑳/ソングブック ジョビンとボサノーヴァ世代

ジョアン・ジルベルトガイド⑳/ソングブック ジョビンとボサノーヴァ世代

ジョアンが掘り起こした古いサンバと同じくらい重要な、アントニオ・カルロス・ジョビンの曲の数々と、ナラ・レオンのサロンで出会ったカルロス・リラ、ホベルト・メネスカル、ルイス・ボンファ、ヴィニシウス・ヂ・モラエスたち。そしてトロピカリズモの中心にいたカエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジルらの楽曲をまとめていきたい。
50年代にベッコ・ダス・ガハーファスでピアノを弾いていたジョビンとジョニー・アルフ。

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