マガジンのカバー画像

映画めも。

335
観た映画のはなし。 ネタバレするぞー!
運営しているクリエイター

2022年10月の記事一覧

【映画】家族を想うとき Sorry We missed You/ケン・ローチ

【映画】家族を想うとき Sorry We missed You/ケン・ローチ

タイトル:家族を想うとき Sorry We missed You 2019年
監督:ケン・ローチ

2019年にウーバーイーツで働く人たちの雇用について問題になった。特にコロナ禍に入り、職が安定しない状況から専業でなくても時間があれば副業出来る手軽さがあり、新たな雇用形態として話題になった。しかし実態は個人事業主としての契約であって、保証などが担保されず事故に合うと労災が受けられないなど、社会的な

もっとみる
【映画】わたしはダニエル・ブレイク I,Daniel Blake/ケン・ローチ

【映画】わたしはダニエル・ブレイク I,Daniel Blake/ケン・ローチ

タイトル:わたしはダニエル・ブレイク I,Daniel Blake 2016年
監督:ケン・ローチ

ビートルズのタックスマンで歌われているように、イギリスの税金は高い。「わたしはダニエル・ブレイク」を観て驚いたのが寝室税(Bedroom Tax)の存在で、生活保護を受けている人を対象に寝室が複数ある事が贅沢とされ、受給額が減額されるという仕組みらしい。主人公ダニエルがこの事を話したのは、介護して

もっとみる
【映画】ファウスト Faust/ヤン・シュヴァンクマイエル

【映画】ファウスト Faust/ヤン・シュヴァンクマイエル

タイトル:ファウスト Faust 1994年
監督:ヤン・シュヴァンクマイエル

数年前、ASMRを初めて知った時に「そんなんで楽しめるのかよ」と訝しく思った。バイノーラルで録音された咀嚼音や生活音に対する自分の中のイメージが、どこか嫌なものとして心に引っかかっていて、どうも生理的な嫌悪の方が勝るような気がしてならない。久しぶりにヤン・シュヴァンクマイエルの映画を観て、そういった音に対して引っかか

もっとみる
【映画】アフター・ヤン After Yang/コゴナダ

【映画】アフター・ヤン After Yang/コゴナダ

タイトル:アフター・ヤン After Yang 2021年
監督:コゴナダ

建築の街コロンバスを淡いテイストで描いた「コロンバス」、日本統治下の韓国から日本に渡った在日コリアンを扱ったapple TVのドラマ「パチンコ」(監督したのは前半のみ。日本ではあまり注目されてない。)で注目を集めるコゴナダ。新作はA24とのタッグでテーマは意外な事に近未来SF。A24配給でSFといえばジョナサン・グレイザ

もっとみる
【映画】ヴェロニカ・フォスのあこがれ Die Sehnsucht der Veronika Voss/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

【映画】ヴェロニカ・フォスのあこがれ Die Sehnsucht der Veronika Voss/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

タイトル:ヴェロニカ・フォスのあこがれ Die Sehnsucht der Veronika Voss 1982年
監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

この映画で描かれた、過去の栄光とそれに対し妄執する女優の話と言えば、真っ先に思い浮かぶのがビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」で、ファスビンダーも漏れなくこの映画から影響を受けているらしい。ノワールなサスペンスの傑作としてデヴィッド・

もっとみる
【映画】最近観た映画2022年8月〜9月と小話

【映画】最近観た映画2022年8月〜9月と小話

観た映画についての前に少しばかり。
7月にNetflixを解約してU-NEXTを契約。ドラマは観ないと自分の中で決めてから、Netflixを登録している意味を見出せず解約した。Netflixはオリジナル映画も多いので、そこでしか観れないものはあるのだけれど、オリジナル映画も個人的に良かったと思えるものはアルフォンソ・キュアロンのローマくらいで、他はいまいち響くものが無かった。ドキュメンタリーは良い

もっとみる
【映画】アルタード・ステーツとその先にあるクローネンバーグの映画

【映画】アルタード・ステーツとその先にあるクローネンバーグの映画

タイトル:アルタード・ステーツ Altered States 1980年
監督:ケン・ラッセル

ダメなニューエイジ映画…率直に言えばクソみたいな映画。カウンターカルチャー世代のスピリチュアルなニューエイジ観と、ラリパッパな世界を具象化しただけ。結果的にホラー紛いな表現がとにかく安っぽい。はっきり言って観なくていい作品だし、これを観る時間があるなら他の映画を観た方が良い。
けれど観ていてひとつ気が

もっとみる
【映画】秘密の森の、その向こう Petite Maman/セリーヌ・シアマ

【映画】秘密の森の、その向こう Petite Maman/セリーヌ・シアマ

タイトル:秘密の森の、その向こう Petite Maman2021年
監督:セリーヌ・シアマ

前作「燃ゆる女の肖像」で描かれた真っ青な海のコントラストといった映像美や、ふたりの女性の関係などと比べると些か地味な作品ではある。けれどもシアマ監督の十八番であるじっくりためた後に訪れるカタルシスがとにかく巧み。大仰にタメを感じさせるわけでもなく、それらが観客に気付かれないように自然に用意されていながら

もっとみる
【映画】ラム Dýrið/ヴァルディマル・ヨハンソン

【映画】ラム Dýrið/ヴァルディマル・ヨハンソン

タイトル:ラム Dýrið
監督:ヴァルディマル・ヨハンソン

多分これを観た大多数の人が「一体何を見せられたのだろう?」と口に出さずともそう思ったんじゃないかと。冒頭の吹雪のシーンにタル・ベーラっぽさを感じたと思ったら、エンドロールにタル・ベーラの名前があった。もともと監督はタル・ベーラの元で学びスタッフとして関わっていた人物。さらに流れる音楽の雰囲気がヨハン・ヨハンソンみたいだなと思ったら、ま

もっとみる
【映画】(ハル)/森田芳光

【映画】(ハル)/森田芳光

タイトル:(ハル) 1996年
監督:森田芳光

起動すると中からゴーっと音が鳴り響くデスクトップPCに懐かしさを感じつつ、四半世紀以上前の映画でありながら今でも同じような事が行われているのが不思議に感じられる。
1996年という時代を顧みれば、携帯電話がまだ高価でポケベルが現役の時代であり、当然SNSもなければ2ちゃんねるも無い頃。男性と偽ってチャットを楽しむのも、マンスプレイニングから逃れるた

もっとみる
【映画】メモリア Memoria/アピチャッポン・ウィーラセタクン

【映画】メモリア Memoria/アピチャッポン・ウィーラセタクン

タイトル:メモリア Memoria 2021年
監督:アピチャッポン・ウィーラセタクン

オーディオ機器や録音をかじった人ならSN比という言葉に耳馴染みがあると思う。直訳すると信号雑音比 (signal-noise ratio)という意味なのだけれど、音の信号の中に含まれるノイズの比率を意味するもので、ノイズと静音の値がdB単位で示される。オーディオや宅録に限らず、身近な所だと会社の会議資料のため

もっとみる