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読書感想文 :: デバッグ・オブ・ザ・デッド/リーベルG(著)IT系パンデミックSF小説 :: プログラマが主人公

MOHが勝手に付けた副題『IT系パンデミックSF小説』に、違和感を持たれた方もおられると思うが、読んで頂くと納得されると思う。

リーベルG
氏の作品は、10年ほど前にネットでよく読んでいた。

先週、iCloudの古いフォルダに書きかけの小説を見つけ(10年前、Kindle出版を考えていたらしい。どのようなコンセプトで本を書くかのメモも残っている。自分では覚えていないのだが…)、そのフォルダの中にリーベルG氏小説の一部がテキストデータで残されていた。
久しぶりにエンジニアライフを開くと著作活動を継続されている。

もしやと思い、Amazonで検索してみるとリーベルG氏の作品があり、その中で興味深いSF小説があるので読んでみた。

上下巻で800ページ、長編である。
もとはエンジニアライフに『ハローサマー、グッドバイ』のタイトルで2015年2月12月に投稿された小説で、今もオンラインで読むことができる。

あらすじ

世界的なZ戦争後、ようやく平穏を取り戻しつつある日本。横浜に住む元プログラマの鳴海は、運送会社に勤務しながらプログラミングの勉強を続けていた。ある日、鳴海はJSPKF――特殊治安維持部隊に納品された戦術システムのテスト要員として、港北基地に派遣される。封鎖区域であるみなとみらい地区の探査計画、オペレーションMMに参加することになってしまった鳴海は、バンド隊員たちとともに鶴見川を渡り、Zがうろつき回るみなとみらいへ向かう。車の中で座っているだけのはずだったが……。システムを冷ややかな目で見る隊員たち、次々に発生するシステムトラブルに加え、何者かの妨害工作が発生する。鳴海は無事に帰還できるのか。(上巻)

みなとみらいに到着したオペレーションMM部隊は、正体不明の攻撃を受け、指揮車両を破壊されてしまう。脱出のためには、戦術システムの再構築が必要だ。防御陣地となったホームセンターの中で、鳴海はプログラマとしての技倆を発揮し、戦術システムの復旧のために奮闘するが、敵の攻撃により部隊は戦死者を出す事態に。さらに凶暴なD型Zがなぜか多数出現する。武器弾薬も食料も水も少なく、内部にも裏切り者がいることがわかる。果たして鳴海とバンド隊員たちは、無事に生還できるのか。(下巻)

デバッグ・オブ・ザ・デッド

感想

仕事でプログラミングをされる方には面白い小説だと思う。

私自身プログラミングはしないが、大規模システム導入のユーザー企業側PMを経験しているので、この小説の中に出てくるプログラムの単語一つ一つを十分理解していなくても、読んでいて雰囲気はわかる。

リーベルG氏の小説の中で唯一のSF小説。他の小説はご自身の仕事に近いシステム開発のお話が多い(この小説もそれには近い)。

この物語が投稿された5年後、同じように豪華客船が横浜港に停泊し、ある種パンデミックが始まった(現実では、客船から多くのゾンビ現れなかったのは幸い)。

別の要因(ロシアのウクライナ侵略戦争)だが、エネルギー需要が逼迫している現状も今とよく似ている(ガソリン代が上がっても自転車が交通手段の基本と、なっていないのは幸い)。

政府対応のグダグダやそれに乗じて、日本から利益を貪ろうとする海外企業も、ここ数年で聞いたことのある話(バイアグラ以来の儲けを出した某製薬会社とか)。

Amazonに次のようなコメントもある。

5つ星のうち5.0 コロナ対応の予言書(?)
web連載時から愛読していました。
しかし白眉は書き下ろしの「ドキュメント・インシデントZ」。インシデントの内容から政府対応まで、コロナ禍の予言か、というくらいリアリティのある内容です。

デバッグ・オブ・ザ・デッド 下

全く現実離れした(数十世紀後の未来とか、数万光年離れた惑星とか)SF小説も面白いが、自分が知っている街が舞台となり、少し先の未来で実現されるかもしれないテクノロジーを使った近未来SF小説は、その情景が目に浮かぶので話の先が気になり、一気に読んでしまう。

リーベルG氏は自称『ふつーのプログラマです。主に企業内Webシステムの要件定義から保守まで何でもやってる、ふつーのプログラマです』とのことだが、長年(知る限り10年以上)毎週5千文字超の投稿を、レベルを維持しながら書き続けている創作力には見習いたいところが多々ある。

風呂敷だけ広げ書き進めていない『安定を重視して〜』の続編、そろそろ投稿の準備をせねば…
リーベルG氏のように5千〜1万文字を週一のペースで投稿というのもありかも。

MOH

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