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「信仰」村田沙耶香(著)/芥川賞作家のファンタジー短編集

「コンビニ人間」の作者が、他にどんな小説を書いているのかが気になり、読んでみた。(Kindle Unlimited)

内容

「なあ、永岡、俺と、新しくカルト始めない?」
好きな言葉は「原価いくら?」で、
現実こそが正しいのだと、強く信じている永岡。
同級生から、カルト商法を始めようと誘われた彼女は――。
信じることの危うさと切実さに痺れる8篇。

〈その他収録作〉

★生存
65歳の時点で生きている可能性を数値化した、
「生存率」が何よりも重要視されるようになった未来の日本。
生存率「C」の私は、とうとう「野人」になることを決めた。

★書かなかった小説
「だいたいルンバと同じくらいの便利さ」という友達の一言に後押しされて、クローンを4体買うことにした。
自分を夏子Aとし、クローンたちを夏子B、C、D、Eと呼ぶことにする。
そして5人の夏子たちの生活が始まった。

★最後の展覧会
とある概念を持つ星を探して、1億年近く旅を続けてきたK。
彼が最後に辿り着いた星に残っていたのは、1体のロボットだけだった。
Kはロボットと「テンランカイ」を開くことにする。

ほか全8篇。

https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163915500

インタビュー


感想

『コンビニ人間』では文筆力に感心したが、今回の短編集を読む限りその表現力に目を引くところはなかった。
会話文の多い、よくあるファンタジー。

特徴的な設定は登場人物が(現代日本の)一般的な概念から外れた考え方を持っており、それを必死に守ろうとするところ。
その設定は『コンビニ人間』に繋がる。

物語によっては舞台がSFっぽいが、SF小説のように科学技術に沿ったモノではなく、夢物語のようなファンタジー。
同じ芥川賞作家でも、九段理江氏とは物語の作り方が大きく異なっていると感じた。

おそらく私にこの方の作風が合わないのだと思う。
「均一性とそこから外れた不均一な存在」そのようなことに思いを巡らせる方には、腑に落ちる小説だと思う。 

以下、物語それぞれの雑感。

「信仰」

この物語が本全体の半分の長さを占める。
『コンビニ人間』では主人公が「コンビニ」の世界を絶対だと思い、『信仰』では「カルト商法」に騙されることにより自分の価値観を変えれれると考える。
どちらも30代女性が主人公。作者は30代女性に何か思いがあるのかも知れない。

「生存」

学生の偏差値社会を生涯の生存率に置き換えた物語。
ネタバレだが、最後に主人公が野生(野人)に戻るシーンは映画化できそう。

「土脉潤起(どみゃくうるおいおこる)」

前話「生存」の後日談。妹目線で見た主人公の姉。

「彼らの惑星へ帰って行くこと」

ショートショートなファンタジー。

「カルチャーショック」

均一化をテーマにしたファンタジー。

「気持ちよさという罪」

この物語、現代日本の批判として捉えれば、理解できる。

私は子供の頃、「個性」という言葉の薄気味悪さに傷ついていた。それなのに、「多様性」という言葉の気持ちよさに負けて、自分と同じ苦しみを抱える人を傷つけていた。

「気持ちよさという罪」

「書かなかった小説」

自分のクローンを家電量販店で4体買い、一緒に生活する物語。
話としてはまとまっておらず「シーンXX」として話が続く。

「最後の展覧会」

宇宙船の中で。
でもファンタジー。


改めて思うのは「純文学の世界は何でもあり」だと感じた短編集だった。


「信仰」村田沙耶香(著)を読んでいて何となく居心地の悪さを感じ(口直しならぬ読み直しに) Kindleのライブライをスクロールしていくと、ずいぶん前に購入した本が見つかった。
 
全くカテゴリーは異なるが、対極にある本。

注文履歴を確認すると 2016年4月21日。
一度読んだような気もするが、ほとんど覚えていないので新鮮な気持ちで読み進めている。

(紙の本で)発売当時ベストセラーだったように思う。
読み終えたら記事にしよう。

追記

Kindle Unlimited の読書感想がnote 公式マガジン2つに追加された。


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