見出し画像

この小説の宇宙観😊『未来経過観測員/田中空 (著)』 外宇宙まで出ていく物語。2023年上期ベストSF小説だと思う

扉絵のTwitterに書かれた『カクヨム』にアクセスしても小説は出てこない。
Amazonで販売されてから、削除された模様。

ペーパーバックはそれなりのお値段(Amazonペーパーバックの仕組みでは妥当な価格)だが、Kindle Unlimitedで読むことができる。
Kindle版で購入すると300円

SF漫画「タテの国」の作者による初のオリジナルSF小説!

「100年ごとの未来を観測し続ける職員の物語」
超長期睡眠を繰り返すことで5万年に渡って人類史を定点観測することになった「未来経過観測員」のモリタが、予測不能の未来世界を体験する。
AI、宇宙の未来像を極限のスケールで描き尽くす未来史SF。

Amazon
Amazon「未来経過観測員」から

SF漫画「タテの国」は、少年ジャンプ+で全話読むことができる。

感想の前振り

SF小説を書いていると、未来がどうなるのかは気になる。
西暦3000年までの未来予測は記事にした。

自分の小説で未来世界そのものは書いていないが、西暦4020年の世界から今(2020年)の世界に現れるモノ(仮想空間やメカ的な物体)は書いてみた。

感想(ネタバレあり)

著者、田中空さんが描く未来は、短時間(数百年)で予想以上に科学技術が進歩する。昨今、AI技術の加速を見ていると、そんな未来もあると思う。
 
200年後の人類の多くは機械化(サイボーグ)を選んでおり、300年後には残り少ない人類が太陽系から逃げ出さざるをえない状況。
 
その間、人類はAIの進歩に追いつかず(次々と現れるAI技術を理解出来なくなる)世の中を司るAI技術は人類からブラックボックス化している。
 
AI に宇宙が占められてしまい、それを主人公の相棒(ポストヒューマン)が外宇宙へ駆逐する。
 
その宇宙観は『百億の昼と千億の夜/光瀬 龍 (著)』を思い出す。

これくらいの引用はOK かと
人類が知る大宇宙も所詮、小さな実験室の中の世界

未来経過観測員』は、物語が始まって主人公が目覚める100年ごとの世界が毎回、主人公(読者)を驚かせる設定なので、次の章(次の100年)を読みたくなる。

魅力的なキャラクター(ロエイ:途中から少女に変身する)も出てくる。
外宇宙から(並行世界の)旧石器時代の関東へ行き、その世界を良い方向へ作っていくところで物語が終わるので暗くならない。

いろいろな世界が出てきても、SF設定が破綻していないので読みやすい。
 
外宇宙に出たりパラレルワールドに飛んだりと、SF要素満載でその間の繋ぎ(説明)は端折っているので、それらに縁遠い人には、理解しにくい小説なのかも知れない。

現人類(読者)にとって、外宇宙は唯物論的なものではなく、観念論的なものと考えて読み進めれば違和感がないと思う。
 
その辺をいちいち説明するより、この文字数でスカッと話を終わらせるスピード感が小気味よい。

あとがきの掲載は許して頂こう

この物語の行方

Kindle本を読むと著者が一人でKDP化したのがよく分かる。
校閲が足りていないところもあり(一人だと仕方ない)、奥付もない。

小説のボリュームはKindle換算で150ページ。
自分が出版したKindle本から換算すると5万文字強の中編SF小説。
 
その量でも読後感は、2時間のSF映画を観たような充実感がある。
ネットには作者が本職?のコミック化を望む声もあるが、個人的にはハリウッドのSF映画原作を期待したい。
予算を十分に使ったSFXで撮らないと、この世界観(宇宙観)は伝わらない。

SF好きな方は、この物語を読んでそれぞれのシーンが頭に思い浮かぶはず。
 
日本で制作するなら、CGをガッツリと使ったアニメ。
それでも小説の宇宙観を表現できるのかどうか…
 
分類すればハードSF。
この分野をちゃんと物語にするには、相対性理論を含め物理的な考え方が必要だと感じた。


MOH

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,568件

#SF小説が好き

3,120件