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イタリアの少子高齢化問題とメローニ首相


 イタリアの出生数が低い理由と、少子高齢化が進行していることについて解説します。これは日本だけでなく、多くの先進国でも同様の状況が見られています。

長期的な視点

 多くの人は、経済に関する話題として、短期的な視点、例えば「明日の株価が上がるか下がるか」の話題に興味を持ちがちです。ただし、投資でも本当に結果を出していきたいと思ったら、長期的な視点をもち、ある程度社会で起こっていることを理解する必要があります。また、投資をしていなくても、私たち1人1人は社会の一員であるため、社会で起こっていることを知っておくことが非常に重要なことだと私は思っています。

イタリアの出生数

 2023年上半期のイタリアの出生数は、2022年の同時期に比べて3,500人ほど減少しました。これは1861年の国家統一以来の最低水準だと言われています。

イタリアの出生率

 出生率は、2022年は1.24だったのが、2023年は1.22に下がる見込みです。移民が出生率を押し上げているという話がありますが、それはその通りです。移民を除いた出生率は、2022年が1.18だったのですが、移民を含むと1.24でした。つまり、移民が全体の数値を0.06押し上げている形になっています。

厚生労働省は、2023年の「人口動態統計」の概数を、2024/6/5に公表しました。日本の合計特殊出生率は1.20に低下し、そのうち東京都の合計特殊出生率は0.99まで低下し1を下回りました。

厚生労働省資料

少子化対策と経済状況

 イタリアのメローニ首相は、少子化対策にしっかりと取り組むとしています。具体的には、保育所の無償化や子育て手当てを導入するなどしていますが、その効果があまり現れていないのが現状です。
 子育て世代へのサポートを手厚くしようとすると、どうしても費用がたくさんかかります。そのため、国家財政が厳しい状況にあるイタリアでは、充実したサポートを実現するのが難しいという問題があります。

財政状況と経済成長の低迷

 イタリアの財政状況を簡単に振り返ると、ユーロ危機があった2010年頃、政府債務はGDPの120%程度で推移していました。同じ時期に債務危機になっていたギリシャは、その後改善していったのですが、イタリアは2019年頃にかけて135%まで緩やかに債務が拡大しました。そして、2020年の新型コロナで154%まで拡大しました。その後は、経済の回復などで2022年にかけて144%まで回復しましたが、その後はまた悪化していく見通しになっています。

エネルギー問題と経済

 その背景として、経済成長の低迷があります。また、イタリアという国は、ロシアのエネルギーへの依存が高かった国でもあります。急遽他から原油や天然ガスを調達しているため、電気料金などが非常に高くなっています。こうしたエネルギー問題もあって、欧州ではイタリアとドイツが全体の足を引っ張っている形になっています。

中国との関係

 メローニ首相は中国と距離を置こうとしていますが、イタリアは元々中国と深い関係を築いてきた国でもあります。そのため、現在の中国経済の低迷の影響も受けています。

私の考え

 イタリアの出生率が上向くのは難しいと思います。メローニ首相はLGBTに反対していますが、未婚化や子供を持たない人々など、多様化の流れは簡単には覆せないと考えています。また、経済面においても、現在の財政状況やエネルギー問題を考えると、現状を簡単に変えられるものではないと見ています。結果として、イタリアの少子高齢化は当面続くと見ています。

メローニ首相について

外務省HP(令和6年2月5日)

 メローニ首相は2歳の時に父親が愛人を作って家族を捨て、母親が一人でメローニさんと妹の2人を育てたという経歴を持っています。貧しい母子家庭だったこともあり、妹と2人で過ごす時間が長く、4歳の時にはホームレス状態になったこともあります。その後、母方の祖父母が住んでいた地域に移り住みましたが、偏った食生活で肥満体系になり、ひどいいじめを受けました。メローニさんは大学どころか高校にも行っておらず、最終学歴は専門学校となっています。苦労してきた政治家であり、国民から一定の評価を得ていますが、それでもなかなかこの難しい状況を改善できないのが現状です。

イタリアとEUの関係

 イタリアはEUから補助金をもらっている関係で、EUの指導に従って財政再建をしなければならないため、財政政策を自由に行えないという問題があります。置かれている状況が全く異なるのに杓子定規に同じ政策を受け入れなければいけない、ユーロ圏そしてEUの仕組みについては以前から問題が指摘されてきています。この問題が深刻化していくとすればイタリアがそのきっかけになる可能性は十分にあるでしょう。
 したがって、EUが今後どうなっていくかという面を見ていく上でも、このイタリアで起こっていることを見ていくことは非常に重要だと考えています。


ご参考

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