見出し画像

メキシコペソの下落要因と投資家へのアドバイス


 メキシコ大統領選挙とその後のメキシコペソの動向について解説します。まず、メキシコ大統領選挙でシェインバウム氏が勝利しました。これを受けて、メキシコペソは大きく下落しました。大統領選挙前には1ドルは16.5ペソ程度でしたが、6月12日時点では1ドルが19ペソ程度まで下落し、下落幅は13%以上まで拡大しました。

メキシコの財務省の対応

 この状況を受けて、メキシコの財務省はマーケットを落ち着かせるために、ドル建国債の早期償還を実施しました。しかし、それでもマーケットは落ち着く様子がありません。

メキシコペソと個人投資家

 メキシコペソの動向については、日本の個人投資家の方々の中にもFXなどでポジションを持っている方々が多いと思います。しかし、情報が少ないと感じている方も多いのではないでしょうか。
 そこで、メキシコペソ暴落に関する情報のアップデートを行いたいと思います。
 メキシコ大統領選挙の結果の詳細とその際のメキシコ経済の展望についてはこちらで解説しています。

大統領選挙とメキシコペソの下落

 簡単に振り返りますと、大統領選挙で現職のロペス・オブラドール氏の支持を受けたシェインバウム氏が勝利しました。同時に行われた議会選挙では与党が議席を増やし、これによって憲法改正の可能性が高まるのではないかという懸念が生じ、メキシコペソが売られる展開になりました。

 ロペス・オブラドール政権は2月にも憲法改正案を国会に提出しています。これは否決されていますが、年金制度の拡充や農村に対する補助金、奨学金などを憲法で保証する、いわゆる左派的な大きな政府で、国家財政が著しく悪化する可能性があるものになっていました。ロペス・オブラドール政権は2024年にも65歳以上の高齢者に一時金を配ったり、最低賃金を20%引き上げたりしていて、財政赤字はGDP比4.9%とかなり大きくなる予定になっています。仮に憲法改正が行われた場合には、恒常的な財政赤字に陥る可能性があると見られています。

メキシコ大統領選挙結果とメキシコ経済展望

 財政悪化の懸念から、メキシコペソが下落する展開になりました。その後もメキシコペソの下落は続き、6月12日には一時1ドルが19ペソ程度まで下落する場面がありました。

シェインバウム氏の発言とその影響

 この間に何があったかと言いますと、シェインバウム氏が司法制度改革を優先的に進めると発言しました。この司法制度改革というのは、最高裁判所の裁判官を国民投票で国民が直接選べるようにするというものです。これはポピュリスト的な改革案で、この司法制度改革を行うには憲法改正が必要です。つまり今年2月にロペス・オブラドール大統領が提出した憲法改正案を引き続き進めていく気がありますという意思表示になりました。この発言の後にまた大きくメキシコペソが売られる展開になっています。

メキシコペソの過熱とその後の動き

 そもそも、メキシコペソについては、過熱していたという面もあったでしょう。2021年に5%程度だった政策金利を11.25%まで引き上げました。非常に高い政策金利で、通貨高に誘導してきました。これは、アメリカが利上げをしていく中で、それ以上に利上げをしていくことで通貨安にならないようにし、インフレを抑制することと資金流出を防ぐという狙いがありました。

メキシコペソと個人投資家の関係

 そのため、2022年以降、メキシコペソはじりじりと上昇する状況が続いてきました。インフレを抑制しながらも、最低賃金の引き上げなどで国内経済を刺激し、中国企業をどんどん誘致することで輸出を伸ばし、国内経済は悪くない状況が続いてきました。
 日本の個人投資家の方々の中にもFXなどでポジションを持っている方々が多いと思います。政策金利も高水準であり、利益が得られたという方も多かったと思います。

メキシコペソの取引と証券会社

 メキシコペソのセールスをしてくる会社については、実はメキシコペソ相場、メキシコ経済についてほとんど知見を持ち合わせていないことが多いのも実情です。セミナーを開催したり、YouTubeでも情報を発信していたりするような証券会社もありますが、その内容というのは、ほとんど空っぽと言わざるを得ないようなものもあります。

投資家へのアドバイス

 今、保有しているメキシコペソが下落していて不安に思っている個人投資家の方もおられるかもしれません。そういう方は、取引している証券会社が今の状況についてどう考えているか、レポートなどを出していないか、YouTubeなどで情報を発信していないか確認してください。
 もし何の情報も出していない、出していたとしても、内容が乏しいと感じたら、その証券会社とは取引しない方がいいでしょう。私がここで発信していることはメキシコ経済の非常に基本的なことだけです。それよりも情報が少ないのであれば、情報としてはかなり不足していると言えるでしょう。
 新興国については元々情報が少ない傾向がありますが、取引している証券会社が何の情報も提供してくれなかったら、もう個人投資家は情報を得ることができないです。そういう環境で投資をしてもまず間違いなくうまくいかないと思います。情報を入手できる環境にあるか、それを確認されることをお勧めしたいです。


ご参考

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?