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イランとイスラエルの戦闘状況と今後の見通し


 2024年10月1日、イランがイスラエルに対して180発のミサイル攻撃を行ったと発表しました。攻撃が行われることをイスラエルは事前に察知しており、アメリカからも12時間以内に攻撃が行われる可能性が高いという情報が提供されていました。
 そのため、イスラエルでは一般の人々がその情報を見て事前に避難していたという報道もありました。被害の状況はまだ明らかになっていませんが、X(旧Twitter)ではイスラエル国内にミサイルが次々と着弾する映像が流れています。4月の時よりも大きな被害が出ていてもおかしくないでしょう。この記事ではこのイランとイスラエルの戦闘について、今後の見通しなどについて解説したいと思います。

金融市場への影響

 金融市場では10月1日のマーケットでリスクオフムードが広がり、株価は下落し、債券は買われる展開となりましたが、大きな動きにはなっていません。

イスラエルの報復の構え

 今回の攻撃に対して、イスラエルはさらに報復する構えを見せており、4月から続くイランとイスラエルの戦闘が着実にエスカレートしている状況です。中東戦争が再び始まるのか、イランとイスラエルと全面戦争になるのかといった見方も出てきています。

イランとイスラエルのこれまでの流れ

 これまでの流れを振り返ります。

 4月にイランがイスラエルに攻撃を行いました。イスラエルがシリアのイラン大使館を攻撃し、イラン革命防衛隊の幹部が殺害された事件への報復でした。大使館をイラン領土と見なせばイランへの攻撃でもあり、イラン人が殺害されているため、これに対して報復を行ったわけです。
 イスラエルが報復としてイランに再度攻撃を行いましたが、その後イランによる再反撃はありませんでした。

欧米ブランドのボイコットの原因
 イスラム圏の国々で欧米のレストランやカフェをボイコットする動きがあるのは、イスラエルで続いている戦争の影響です。2023年10月にハマスがイスラエルを襲撃し、その後イスラエルがガザに進行しました。この出来事を受けて、イスラム圏の国々では欧米ブランドのボイコットが強まりました。

イスラム圏の欧米ブランドのボイコットの解説

7月と9月の出来事

 その後、7月にハマスの指導者ハニヤ氏が殺害されましたが、この時はイランは報復を行いませんでした。
 9月後半にはヒズボラの指導者ナス氏が殺害され、今回の攻撃はこれに対する報復と見られています。
 ヒズボラの最高指導者はイラン人ではありません。イラン人ではないヒズボラの指導者がレバノンで殺害されたことに対して、イランがイスラエルに攻撃を行ったことは、イスラエル側からは先制攻撃と解釈され、イスラエルはイランに報復する構えを見せています。

イランの対応の難しさ

 イランからすると、国外の代理勢力(ハマス、ヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラクのシーア派組織など)がイスラエルから攻撃された場合、どう対応するかが非常に難しい状況です。
 大規模にやり返すとアメリカも出てきてイランが徹底的にやられるかもしれません。しかし、7月のハマスの幹部が殺害された時のように何もしないと、イスラエルに対して抑止力が働かないため、今回の攻撃はやむを得なかったと考えられます。

マーケットの反応

 10月1日のアメリカのマーケットでは、S&P500は0.9%下落、ニューヨークダウは0.4%下落しました。ドル円は144.50円から一時143.00円まで下落しましたが、その後値を戻し、1%も下落していません。
 原油価格は67ドルから72ドルまで約7%上昇し、大きなインパクトがありました。イランは産油国であるため、イランが関わると原油市場にも影響が出てきます。

全面戦争の可能性

 今後の展開ですが、イスラエルによるイランへの報復が近く実施されると見られています。攻撃対象になるのは軍事施設や核施設、石油関連施設などが標的になるかもしれません。
 被害が出ると原油価格はさらに上昇する可能性があります。イスラエルによるイランへの報復が実施されるまで、市場の警戒感は続くでしょう。

 ただし、イランとイスラエルが全面戦争に突入する可能性は高くないと私は見ています。現在のマーケットが落ち着いているのも、その可能性が低いと見ている市場関係者が多いからでしょう。
 イスラエルにとっても、南はハマス、北はヒズボラと戦争しており、さらにイランと戦うとなると三方面での戦いを同時に進行することになり、負担が大きくなります。地政学に詳しい人々も、三つの戦争を同時に戦うのは難しいと見ています。

イランの立場

 もちろん、イランにとってもイスラエルとの全面戦争は望んでいないでしょう。アメリカの大統領選挙の結果にもよりますが、アメリカからの攻撃を受ける可能性もあり、徹底的に叩かれるかもしれません。そのような展開は避けたいはずです。
 アメリカの民主党も選挙前に戦争が激化することを望んでいないため、イスラエルがイランに報復して一旦終わるという流れになるのではないかと見ています。

短期的な見通し

 4月の時も同様に、短期的にはイスラエルが形式上報復して一旦終わりましたが、長期的にはまたエスカレートしてきました。今回もイスラエルの報復の後に一旦落ち着くかもしれませんが、長期的には再びエスカレートする可能性があります。

アメリカの大統領選挙の影響

 現在の状況に大きな影響を与えているのは、アメリカの大統領選挙です。民主党はパレスチナを支持するリベラル派に配慮しつつも、ユダヤ系の支持も得たいということで曖昧な立場を取っています。イスラエルに軍事支援をしつつ、ガザでの停戦を促し、ヒズボラへの地上進行を限定的にするよう促していますが、この曖昧な立場が事態を悪化させているという見方もあります。

アメリカの大統領選挙の結果と今後の展開

 アメリカの大統領選挙の結果がこの問題にどう影響するかですが、ハリス氏が大統領になった場合、イランも歩み寄って停戦に向けて動く可能性がありますが、ハリス氏がイスラエルに言うことを聞かせることができるかは不透明です。そのため、エスカレートが継続する可能性もあります。
 一方、トランプ氏が勝った場合、アメリカがイスラエルによるハマスとヒズボラとの戦いを支持することになり、イランにとっては厳しい状況ですが、戦闘が継続する可能性があります。
 中東情勢に動きがありましたら、情報をアップデートしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

中東地域の予想
 イランの周辺の中東諸国において、アメリカに揺さぶりをかけるような、対立を煽るような事件が今年も多数起こると私は見ています。それがどの程度の規模に発展していくのかまでは分かりませんが、バイデン政権下においては、この国際情勢の不安定化というのが続いていくものと考えています。

2024年の政治イベントと中東情勢

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