シェア
め
2016年2月23日 22:12
つむっている僕のまぶたを、夜が優しくノックする。 そんな日は何度寝返りを打っても、星の瞬きにそっと耳を傾けても、意識は冴えたままだった。 時折こんなふうに眠れない夜が僕の元を訪れる。身を縮込ませながら両肩をさすり深く呼吸をすると、乾いた空気が喉に入り込んできた。もうタオルケットだけで眠るのは心もとない。 夏なんていつの間にか消滅してしまった。ひっきりなしに鳴いていた蝉の声も、触れ合え
2015年9月19日 04:29
目を覚ますと、外気は気持ちの良いくらいひんやりとしていて、窓の外では、やはり雪が降っていた。ベットから両足を少しずつ出して、昨日寝る前に脱いだはずのスリッパを探したのだけれど、なかなか見つからない。意を決してフローリングの床に降りると、冷たすぎて一気に目が覚めた。すぐに靴下を履いて、紺色のカーディガンを羽織る。自分の息が白く色づいていることに気づき、マッチを擦ってストーブに火を灯した。手をさすりな
2015年9月3日 10:34
あまりの暑さに、冷凍庫で凍らかせておいたお月様をすり潰す。側面はパキパキと割れるような音がたち、中は生クリームのように濃厚でやわらかい。すり鉢でお月様をペースト状にしてゆくと、額にじんわりと汗がにじみだしてきた。それと同時にキッチンには、お月様の香りが立ち込めていて、爽やかでふんわりと甘いにおいが鼻をかすめる。その中に糖蜜を加え、更に練乳をたっぷりと混ぜ込んで、それをアイスキャンディーが作れる容器
2015年8月30日 23:38
いつもは騒がしい学生寮も「星祭り」の夜は静かだった。喉の風邪をこじらせて寝込んでいる僕に気をつかいながらもルームメイトは年に一度のお祭りに早々と部屋を出て行った。喉の痛みで眠ることもできず、静寂で心を弱らせてはいけないと思い、ラジオをかけた。ぼんやりと横たわっていると部屋のドアがノックされ、僕が返事をする前に誰かが入ってきた。見ると、普段はあまり喋ったことのないクラスメイトだった。僕は非常に驚いて
2015年3月20日 19:27
満月をビスケットほどの厚さにスライスして、チーズケーキの横にそっと添える。採れたての満月なので、まだ薄ぼんやりと輝いていて、見ているだけで心地が良い。発光する満月を眺めながら、濃厚なチーズケーキを十分に堪能した後、それを1口かじると、口の中全体に爽やかな酸味がふわりと広がって、チーズケーキの余韻と混ざり合い、その絶妙な味に思わず笑がこぼれ落ちる。滑らかな舌触りを楽しみ名残惜しく飲み込むと、うっとり