見出し画像

デンマークは本当に「幸せな国」なのか?1ヶ月過ごして感じた4つの闇

フォルケにきて1ヶ月半が経ちました。

デンマークは幸福度ランキングで上位に来るのかということを、この1ヶ月半フワッと考えていました。

この1ヶ月デンマークで過ごしてみた感想としては、朗らかな国民性ではないかも?という印象。ノルウェーではお店の店員さんもみんな「ハイ!」ってニコニコ笑顔だったのが印象的だったのだけど、デンマークはもっと事務的に感じることが今のところは多いです。

デンマークにきて感じた闇というか、意外だったことは色々あります。


幸せの国=抗うつ剤の消費量が多い?

フォルケにきた最初の頃、「幸せの国って言われるけど、抗うつ剤の摂取量も上位。これが幸せの国の理由だよ!」ってデンマーク人が言っていました。

ブラックすぎるだろ・・・と思ったけど、デンマーク人は皮肉のこもった笑いを好むようで、ブラックジョークが日常茶飯事です。というのは置いておいて、抗うつ剤の摂取量が上位というのは事実。

気候の問題でうつ病になりやすいのもありますが、メンタル不調がある場合の精神科へのアクセスは容易(医療費無料)で、そもそもメンタルヘルスに対する周囲の理解があることも大きいかもしれません。実際、デンマークの自殺率は1980年代は世界最高水準でしたが、精神疾患のスティグマ払拭や早期介入などに懸命に取り組んだことで現在の自殺率は大きく減少しているようです。

また自分の心身の健康が最優先であり、何事も無理をしない頑張らないという価値観が根底にあるようにも感じます。

移民に厳しく、閉鎖的なコミュニティ

デンマークは、北欧諸国の中で最も厳しい移民政策をとる国です。

高福祉国家を維持するためには、皆が働き皆が税金を納める必要がある。十分に働けない移民・難民を受け入れたくないのがデンマーク政府の姿勢で、この姿勢は昔から変わっていないしどんどん厳しくなっています。

確かに、デンマーク人以外の人種らしき人が本当にいない…特にアジア人を滅多に見かけません。ノルウェーにはベトナムやタイなど東南アジア系の人が多かったのだけど、デンマークではまだ見かけていない…。

デンマークは高福祉国家、幸福な国としてもてはやされていますが、それは「デンマーク人」に限った話です。誰をも受け入れる、多様性のある国ではなく、デンマーク人によるデンマーク人のための幸せな社会を形成しているだけとも言えます。(まあ日本もそうだよね!)

私がいるフォルケはど田舎にある昔ながらの学校というのもあって、どことなく閉鎖的。デンマーク人が優先で、留学生のために仕方なく英語で翻訳してやっているんだというスタンス。そもそもデンマーク人のための学校だからデンマーク人が優先なのは当然なんだけども、英語で受講できる授業もとても限定的で、「お金のために留学生を受け入れてるだけ」と留学生みんなが言うような環境ですw

現在生徒39名のうち15名ほどが留学生ですが、コモンスペースや食堂でデンマーク人たちは基本的にデンマーク語で喋るので、彼らと同じ時間を過ごすには「英語で話して!」とか「今なんの話をしていたの?」とこちらが割り込んでいかないといけない部分があります。

そこで先日、クラスミーティングの際に留学生の一人が、「生徒の40%が留学生という状況だから、できれば英語で喋ったり留学生のことを気にかけてほしい」と提言。すると先生は何を勘違いしたのか、「参加必須の場面では英語に翻訳してるだろ。ここはデンマークの学校なんだぞ。デンマーク語はデンマーク人のために使ってるんだ」と若干キレ気味に返した。

授業や先生に対しての提言ではないよ、ってその子は反論したけど、それでも「なんでそんなことを言うんだ」と怒っていた。いやそんな怒るなら留学生なんて受け入れなければいいのに…。

その怒った先生は以前話していたときに、「世界はどんどん英語で共通化されていく、デンマーク語が失われていく。どんどん資本主義になっていく」的なことを言っていたので、デンマークの文化を守りたい保守的な考え方なのもある。それは大切なことだけど、「対話」のかけらもない対応で若干引いてしまった。

なんだか日本社会を感じた瞬間でした。日本にいたいなら日本語を話せというのは日本でもよく言われるし、郷にいれば郷に従えだとは思うけれど、それを言われる側は結構しんどいです。

貯蓄率が低く、失業率が高い社会

デンマークは給与が高い!と言われることもありますが、所得税が約50%と高いため可処分所得はそこまで多いわけではありません。また物価も高いので、必ずしも生活水準が高いということはありません。

また高福祉で老後を心配する必要がないことから、デンマークの貯蓄率は世界的にみても低い国になります。

失業率も日本と比べてかなり高く、雇用の流動性を高くするために解雇しやすい制度になってします…しかし、たとえ失業してもあらゆる福祉サポートで生きていけるので基本的に生活に困窮することはありません。

金銭的に豊かなのか?というと、デンマーク人は「お金持ちなのはノルウェー人だよ」と言います(資源がある国は強い)。リッチになりたいとは言うものの、社会構造的に労働意欲が醸成されにくいのもあるし、もっと働いて稼いでお金を使うぜ!という資本主義的な国民性ではないように思います。

フォルケに来ている子たちだからなのか、国民性なのかわからないですが、「夢に向かって頑張りたい」的な意欲や競争性みたいなものがなく、「自分がやりたいことを考える」と自分を中心にのどかに生きているな…という印象。

生きていくためのお金を稼がなかればという危機感や老後の心配などがないと、人間はこうなるんだろうか?

「自己決定」できる自由があるがゆえの辛さ

前述の内容と関連するのですが、デンマークの教育システムとして、中学と高校の間、高校と大学の間にギャップイヤーをとる生徒もいて、大学に進学する年齢は19歳〜26歳とかなり幅広いです。「高校卒業してすぐ大学!?そんなすぐ何を学びたいか決めるなんて無理だよ」とフォルケではよく聞きます。

学校を変えたり、ギャップイヤーを取ったり、早く社会に出て働くのではなく色々好きなことにチャレンジしたって構わないし、それでも生きていける社会環境というのは自由で羨ましくも感じます。

でもその全てが自分の選択であり、その選択の結果には自分の責任が伴います。日本のように決められたレールを進むわけではないということは、裏を返せば自分の人生のあり方を全て自分で決めなければならないということでもあります。

ギャップイヤーを何年もとって自分のやりたいことを考える、というのは、そもそも夢や希望を抱けるタイプ・何か一つのことに強い興味を持てる人にとっては幸せかもしれませんが、そうではないタイプからすると結構な苦痛なのではないか?とも思います。2〜3年も自分探しをするの、しんどくないか・・・国民性的に競争や成長意欲みたいなものが弱いのに、どうやって目標を決めるんだ?と、私からするとちょっと理解が難しい部分があります。

特に大学の専攻はその後の職業にも大きく影響しますし、そうした自分の人生に大きく関わる選択を幼い頃から常にしなければならないのは、大きなプレッシャーでもあると思います。そしてこの自己決定という「自由」は、若者の精神疾患が増えていることにも関係しているようです。

人生のルートがある程度決められていることは、常に選択しなければいけないというストレスがなくて楽という部分はあると思います。

「足るを知る」だから幸せなのでは?

デンマークでは、外で遊ぶよりは家の中でゆっくり過ごすことに重きをおく。家族や友人とおしゃべりをする、編み物をする、本を読むといった過ごし方が「ヒュッゲ」であり、日本のような消費社会とは対極にあるように感じます。

消費社会で生きていると、「もっとお金が欲しい」という気持ちが湧いてくる。私自身、もっと生活水準を上げたいもっと稼ぎたい…という欲望から逃れることができないですし、ずっと何かが足りないように感じます。

でもデンマーク人には、もっと豊かな生活をしたい、もっと偉くなりたい、といった感情があまりなく、「足るを知る」という価値観だから「いま自分は幸せ」と言えるのではないだろうか?と私は思っています。

常に上を目指す必要がなく、お金の不安もなく穏やかに安心して暮らせる社会であれば、あらゆることが自分で決めたことであり、自分の嫌なことはやらず、自分の意思を叶えられることは幸せなんだと思います。

社会保障が充実しているのは羨ましいです、そこの安心感はとてつもないとは思います。ただ私は資本主義社会で育ったし、常に何かを頑張りたい成長したいというタイプなので、今のところデンマーク社会が「幸せ」とは思えずにいます。

個人的な幸せを考えると、日本で今の仕事を頑張りつつ、自然に囲まれる生活や家族・友人と過ごす時間をもう少し取れるといいな〜という結論に今のところ至っています。

北欧に関しては良い面ばかり言われるし、過大評価されている感もあります。日本にだって良い面はたくさんありあまり自己評価を下げすぎない方がいいなというのは、海外に行くと改めて感じます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?