《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第31話
四月十五日(月)
昨日の夜、男性から電話があった。
初めての宿泊の予約だった。保険福祉事務所秦野センターで情報を得たらしい。二名一室での予約だったため、二階の南西向きのベランダが付いている一番大きい部屋を準備した。
どんな方が来るのかと待っていたら、現れたのはオフィスカジュアルといった装いの三十歳くらいの方だった。一人で十九時ごろに現れ、キッチンを貸してくださいと言ってきた。了承すると、そのまま丁寧にテキパキと料理を作り始め、それが完成したくらいのタイミングで、これまたオフィスカジュアルといった装いの若い女性が、玄関を上がり、先ほどの男性が作った夕食を二人でダイニングで食べ始めた。
なんともまぁ自然な流れで、私はジンベエザメにそのことを伝え、近くのコンビニに行き、自室で弁当を食べた。
食事が終わったのか確認のために戻ると、二人で洗い物をしていた。これまたテキパキと作業をしている。その間に話してくれたが、二人は新婚さんで新居の候補地を探しているらしい。そのため、平日の五日間だけ民泊先で実際の暮らしをし、その土地の生活しやすさを体感したいということだった。
男性つまり旦那さんは、カピバラ市の子育て支援や教育制度について知りたがっていたが、あいにく分からないと伝えると、残念そうにしていた。
女性つまり奥さんは、けど温泉があるし。アルカリは美肌に効果がある。と言っていて嬉しそうにしていたので、助かったと思ったが、甘かった。
釜場の爺さんはコツを掴むのが遅い。ぴよぴよの爺さんだと言うことを忘れていた、私が悪い。
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