《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第54話
五月八日(水)
真夜中にインターフォンを押すのは誰かと鍵を開けたら、ジンベエザメが立っていた。
「トキさん。俺はどうすればいい。
俺は、モグラに啖呵を切った。
俺は、水質調査を怠った。毎日すればよかった。
毎日あんだけ偉そうにいろんな事をトキさんに喋っていた。
偉そうに。
なのに、自分の情けなさをモグラにあたってしまった。
切り捨ててしまった。
そして、俺は逃げた。
どうすることもできないと、トキさんの家から逃げた。
俺はどうすればいい。
これじゃモグラが浮かばれない。
俺は、どうすればいい。」
「ジンベエザメ。ジンベエザメ。
ジンべエザメ、いいから今日は泊まっておくれ。もちろんタダだ。
その代わりに、現場のモグラの話をたくさん聞かせてくれないか。」
私は、ジンベエザメから信義というものを感じた。
そして、その翌日からジンベエザメとその社員は、これまでどおり戻って来てくれた。
これを読んでいるジンベエザメへ
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