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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第55話

五月九日(木)

 たくさん飲んだ。涙と同じくらい飲んだ。
 だからジンベエザメは朝から酒臭い。

 二日酔いだから車に乗らず、今は歩いてトド川の土手を下流に向かっている。

 ジンベエザメは途中、はーっと息を吹きかけてくる。
 やめてくれ。

「これが俺の覇気だ。どうしたどうしたトキさん覇気がないぞ。」
と、言ってくる。

「それは呼気だし、酒の呼吸です。」

 そう伝えたら、笑ってくれた。

「トキさんはやっぱり面白い人だったか。トキさんはどんな漫画を読むんだい。」

 空手バカ一代だと伝えたら、おぉ!と、とても盛り上がった。

 幼いころ、父の本棚からキャプテン翼を盗み読みするついでに読んでいたのが良かった。本当は、ホイッスルだ。

「これからは、つらい仕事だ。楽しく行こう。」

「大山倍達も人力車引いてましたからね。」

「そうだ。それで牛を殺したんだ。」

「それで、足を怪我して、、、」

 つらい現場の後は楽な現場が待っている。とジンベエザメは教えてくれた。

 

 我以外皆、師なり。

 ジンベエザメと出会えてよかった。ありがとう。

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