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プロジェクト管理でモノを作る時代は終わった 「ユニコーン企業のひみつ」レビュー

こんにちは。virapture株式会社のCEOもやっていますが、ラグナロク株式会社としてもCAOをやっているもぐめっとです。

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実はスノボが趣味でまだまだ初心者の域を出ないのですが頑張ってます。上手い人教えて下さい。

本日は当時ユニコーン企業だったspotifyが現場で実践していた組織の作り方や考え方などを解説した「ユニコーン企業のひみつ」を読んだのでその解説やレビューをしてきたいと思います。

シン・プロダクトカイハツシュホウ:||

20XX年。プロジェクト管理での開発は滅んだ。

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滅んだ理由としては、期間も短く、フィードバックの機会が少なく、そして納期や予算を大事にすることにフォーカスしてばかりでプロダクト自身に向き合ってなかったことが原因だ。

次世代を作る手法として考えられたのが

ミッション

だ!


...重苦しい空気から始まっちゃいましたが、次からはミッションとプロダクトへの向き方について解説していきます。

■ミッション

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ミッションは、長期的な視野を持たすために、目的を提供してチームの仕事の方向づけを持たすための、抽象度が高めな目標を指します。

この目標のおかげで、チームの自発性を高め、目的を意識させ、仕事そのものにフォーカスさせる効果があります。悪魔で目標までで、どうやってゴールまで至るかはチーム員が考えて決めます。

例えば、Googleの会社としての目標は「世界の情報を整理すること」ですが、そのためのミッションは、「速く検索できること」、「正確に検索できること」、「世界中の情報を簡単に見つけられるようにすること」などが挙げられます。
ミッションはプロダクトに限定しなくてもよくて、 「他のエンジニアリングチームがもっと速く進めるようにする」、「会社の株式公開(IPO)準備を整える」といったミッションでも構いません。

また、このミッションは平凡なものを避けてできるだけ会社の中核をなすような大きめのミッションにするといいです。

例えば、僕が関わってるプロダクトであるCameconでいうなら、「フォトコンテストに簡単に投稿できる」だけでは弱いので「世にあるフォトコンテスト会を制する」とか「フォトコンテストで検索一位になる」みたいな大きめのミッションに設定するといいかなと思いました。


■すごいプロダクトを作るのに必要な5か条

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すごいプロダクトを作るのに必要な要素として下記5点が挙げられています。

1. 成功を再定義する
2. 学習とは何であるかを心得る
3. 未知の状況でもうまくやっていける人材を探す
4. 失敗してはいけないという思い込みを払拭する
5. 権限を与え、信頼することで仕事をやり遂げる

大企業にあるあるなのが、一つのプロダクトを出すのに長い時間がかかったり、プロダクトを出す上で失敗したらものすごい勢いで批判して最悪左遷...みたいな風潮になっている組織ですね。
基本的に世の中に一発で当たることなんて早々ないので、物事がうまくすすめるようになるまで何度も失敗することをチームにも会社にも理解して貰う必要がある。

そしてこの5か条の中で特に、大事なのが、権限を与え、信頼することで仕事をやり遂げるという点が重要で、著書としても終始何度かここの話が出てくるほど重要な根幹の点となっております。

次からはどういった形で権限を与え信頼し、すごいプロダクトを作っているのかを解説します。

細かく動き、スケールする組織を作る

組織は大きくなると動きも遅くなってしまいます。spotifyでは、スタートアップのように細かく動きつつもスケールしていく組織を作っていきました。

どういった形でそれを実現したかというと、こんな形になります。

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なるほどなるほどわからんですよね。
ちゃんと一個ずつ説明していきます。

■スクワッド

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スクワッドはデリバリーするプロダクトの全てに責任を持つ少数のメンバーが揃ったチームです。プロダクトオーナーやデザイナー、エンジニアやテスターなどの手を動かす人がメンバーになります。
経営者から「ミッション」として組織やプロダクトのゴールを示されますが、そのゴールをどのように達成するかは決められていません。
また、スクワッドは自分たちの仕事の結果を重視します。例えば「UIの改修で登録者が○○人増加した」「顧客維持率が○○%上昇した」という変化(インパクト)に注目します。

スクワッドをサポートする存在として、プロダクトマネージャデータサイエンティストがいます。

プロダクト・マネジャーはミッション達成のためにスクワッドが何をすればよいのかを導きます。その業務範囲は広く、会社の戦略とプロダクトを結びつけることからプロダクトの機能の定義を考えることまで、プロダクト・マネジャーの仕事は様々です。

データサイエンティストは膨大なデータを処理して意思決定を支える存在です。スクワッドが次に何をすべきなのかを統計データで示し、スクワッドの仕事のインパクトを計測します。

そんなスクワッドに最適な人の種類としては下記が挙げられています

・独り立ちしている
・責任を持つことを楽しめる
・率先して行動する
・自分の運命をコントロールしたい
・マイクロマネジメントが嫌い
・継続的に学習している
・失敗を恐れない
・他人とのコラボレーションを好む
・良きチームプレイヤーである

簡単に言うと、指示待ち姿勢でなく、前向きにいい仕事をしたいと思っている人です!

スクワッドを作る際に経営者に伝えたいこととして、権限を渡して信頼し、自立をしてもらえるような環境を作ってください。
環境づくりとしてはチームが自分たちで考えられる時間の余裕と探索範囲の余地を与え、そしてチームが間違えても大丈夫という体制にするために、うまくいかない場合を想定して備えておいてください。

■トライブ

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トライブは類似・関連しているミッションをもつスクワッドのまとまりです。
例えば決済であれば、登録、認証、支払いのスクワッドがあり、これをまとめたのがトライブといった形です。
トライブ自体が小さい企業のようなもので特定のビジネス領域の責任も担います。
スクワッド同士は依存を最小限にするのですが、トライブも他のトライブとの依存を最小限にします。疎結合にしていくことで、自分たちだけでサービスを成長させることができます。

■チャプター

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チャプターは同じ専門領域を持つメンバーで構成されるトライブ内のグループです。
例えば、サーバサイドエンジニアをあつめ「サーバーチャプター」といった形で構成したりします。同じ領域のチャプターをまとめるのが「チャプターリーダー」になります。
チャプターの利点はコミュニティです。専門的な領域での状況やニュースや新しい技術について話し合えます。

■ギルド

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ギルドは組織を横断して形成される専門分野グループになります。
チャプターとは異なり、ギルドは正式な組織ではないため、直接的なマネジメントやサポートは何も提供しません。その代わり、気軽な組織構造なので、誰でも自発的に作ってかまわないし、誰でも参加できたりします。
例えば「iOSギルド」は、iPhone開発に興味ある人で構成され、定期的にミーティングしています。

このあたりは社内勉強会として有志で定期的に開催しているといった会社もあるのではないかと思います。

■改めてまとめると

トライブが関連するミッションを持ったスクワッドをまとめる
チャプターが現場の最前線で専門的なサポートを提供する
ギルドが全社を横断したコラボレーションを可能にする

といった形になります。

しかし、規模が大きくなると重要な仕事が進まなくなります。それを解決するのがカンパニーベッドという仕組みで組織の方向を揃えます。

■カンパニーベッド

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カンパニーベッドは会社で取り組みたい重要事項を終わらせたい順に並べたリストです。
終わらせるべき最重要事項を明確にし、向かい方向を揃え、優先順位をつけることができます。

このベッドにはDIBBと関わる人(スポンサー、ロードマネージャー、ステークホルダーなど)が記載されております。
DIBBはData、Insight、Belief、Betの4文字の頭文字からとったものなのですが、例えば、もぐめっとが開発しているワンナイト人狼オンラインの話でいうと、下記のような例になります。

・Data:オフライン版のワンナイト人狼 for mobileのDAUが2020年から下がってきている
・Insight:コロナ影響でオフラインで集まってワンナイト人狼を遊ぶ人が減ってきている。また、LINEなどを使って遠方の人とワンナイト人狼をやっている人達もいる。
・Belief:オンラインでの体験が最適化されていない。コロナ状況でオンライン機能が使えないのは致命的なのでこの先生き残るためには「オンラインで気軽に人狼」できるかにかかっている
・Bet:オンライン機能をもった「ワンナイト人狼オンライン」を開発する。

こういった形でカンパニーベッドを作っておくと、メンバーの方があれこれ手を付けて一度にやろうとするのを防げ、ベッドの優先度次第で自分たちの仕事を保留して、ベッドに対して支援したり、どう時間を使ったら最適なのかが決められるようになります。

このカンパニーベッドをやりぬくコツとしては5つほど著書では紹介されていますが、すべての説明は著書に譲るとして、5つのうち、もぐめっと的に大事と思った点だけを紹介いたします。
それは、「外部システムと連携する必要がある場合は早いうちから統合する」といったところでした。
もぐめっとの今までの経験からしても、他システムとつなぎこんだ後のバグ潰しや調整などは時間がかかるものなので、たしかに早めに実施するよう調整するのは非常に大事です。

テック企業の考え方とやり方

ここからはイケイケなテック企業の考え方やどういった方法で会社をつくっているのかを働き方の特徴生産性向上への投資文化によって強くなるといった観点で紹介します。

■働き方の特徴

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テック企業で働いている人の特徴としては下記が挙げられます。

・ とても自律している
・ とても自由度が高い
・ 責任は重い
・ 何をすべきかを直接指示する人はいない
・ すべての情報は基本的にオープン

そのうち大事だと感じた「何をすべきかを直接指示する人はいない」「すべての情報は基本的にオープン」といった点を紹介します。


1. 何をすべきかを直接指示する人はいない

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日本の企業とかによくあるのが「次何すればいいですか?」といった指示待ち状態になっている人がいらっしゃいます。
基本的にテック企業はやるべきことを自分で考えて、見つけ出すことが推奨されているのでそういったことが起こりません。
逆に何をすべきかを伝えてしまうと伝えた内容は相手のものにならないので、チームに自分たちで決めてもらうことで物事をうまくすすめるようにしています。

2. すべての情報は基本的にオープン

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こちらも日本企業でよくありますが、チームに渡される権限が縛られていることが多いです。(社内からしかアクセスできないとか、偉い人じゃないとこのデータにはアクセスできませんなどよくある話だと思います)

テック企業では基本的に全権限が与えられていて、あらゆるデータにアクセスができます。そうすることで意思決定のスピードを早くするし、会社からあなたのことを「信頼していますよ」というシグナルの発信にもなります。

もぐめっとが思うのは、「そうはいっても個人情報が誰でも見られるのは・・・」という意見もあるとは思いますが、必要なところだけ見せないみたいな仕組み、いわゆるブラックリストみたいなシステム・仕組みを作って、基本は見せるみたいなスタンスにするのがいいんじゃないかなぁとは思います。


■生産性向上への投資

著書では10個くらい紹介されてますがその中からもぐめっとがこれは是が非でも実施できるようにしたい!と思った点を絞って3点紹介します。

1. ハックウィークの開催

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Googleの20%ルールのように、Spotifyでは、年に2回、1週間という期間でハックウィークというものが開催されます。
これは新しいアイデアを試して、メンバーにイノベーションを起こしてもらうのが狙いになるのですが、出るなら必ずこの1週間でものを作って発表しないといけません。

このイベントを通して普段開発している人とは違う人と開発することができるので、社内の横断的な交流として、より深く交流できるのでとてもよいイベントです。

2. 品質に高い期待を持つ

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予算や期日といった「言い訳」が取り除かれているので、きちんとシステムを開発できるだけの時間があります。長期的視点に立つインセンティブが働いているので、仕事の質を気にかけるようになり、その結果として、仕事の質が高まります。
仕事の質が高ければ、会社全体でお互いにチームを信じて頼るようになり、その結果として、全体の進みが速くなります。

色んな会社でそういったお金や期日といったものが原因で質が低いものが出されて結果誰にも使われないものが出てくるといった歴史が繰り返されていると思います。
質に対して注力するために他の要素を排除するというスタンスはプロダクトが大きくなるにつれて大事になってくるなとも思いました。

3. リリーストレインでガンガンリリース

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spotifyではフィーチャーフラグを使って、定期的なリリースを継続しています。
フィーチャーフラグに関してはマイクロサービスの移行の手法としても使われてます。詳しくは下記記事をご参照ください。

定期的なリリースを取り入れることで迅速な対応や、早めのバグ修正、顧客体験やデザインの全体的な向上にもつながります。

実は運用してるcameconも大体毎週リリースしていて細かく機能追加されたり修正されたりしています。

毎週リリースの流れができるとこんな機能できたよ〜とみんなに発表するのが楽しみという流れもできるので、実体験としてもとてもおすすめな方法です。

■文化によって強くなる

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Spotifyが大事にしているものは権限付与、信頼、安全、そしてチームを大事にしています。(例題としてAmazonにも信念があって「リーダーシッププリンシプル」といった信念を掲げたりしています。)

そして「良いプロダクトは良いチームから生まれる」という信念があります。更に良い文化は、安全、力を与えられ、現状にとらわれない。といった風土ができあがります。

文化は行動によって機能します。Spotifyの例題としてうっかり新人がシステムを壊してしまったストーリーが紹介されていて、その時に先輩がかけた言葉が「故障は勲章みたいなもんや。壊せてしまうということはまだ改善余地があるという証拠や。」と励ましていました。
また、他のストーリーとして、会社の方針を決める会議を開催される時に、会社の意思決定で全員が合意に至るまで会議するようにする文化があったりと、行動から形成される文化を紹介していました。

こういった失敗を許容したり、必要な時には全員の納得がいくようにすすめるというように信念があるからこそ、行動が生まれ文化が形成されていくことがわかります。

ラグナロク株式会社のCEOをやっている西本もよく失敗するとわかってもあえてメンバーにやらせて失敗することを経験させるといった事をしています。そういった機会を与えることでメンバーの経験を積ませたり失敗してもいいんだよといった文化が形状されているのでいい方法だなと感じております。

我々にできること

ここまでSpotifyのやり方を説明してきましたが、そんな我々にもできることとして10個ほどやり方を紹介されていますが、そのうちもぐめっとが、これは是非意識して実践したいと感じた5つを紹介いたします。

■目的で動機づける

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従業員に仕事でわくわくしてもらうためには、そもそもなぜそこで働いているかを思い出してもらい、そして会社の目的を再認識します。
スタートアップには人を魅了する目的があります。それは社長がやろうとしているビジョンが明確で是非一緒に実現したいと思ったりする点があるからだと思います。

このへんは以前書いた下記の記事の優秀な人材を定着させる部分や、社長の仕事といったところにもつながるのかなとは思います。

■思考は戦略的に、行動は局所的に

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チームに目的が備わったら、経営リーダーが抽象度が高めの目標を設定します。それを自分たちのべットのリストにし、四半期で行うことを決めてみましょう。
ベットのリストは全社規模のレベルである必要はない。所属部署など、もっと身近なレベルから始めてもらってかまわないので経営陣と真剣に話し合って優先順位をつけましょう。
成し遂げるべきもののうち、最大にして最重要のものはどれかを考え、まずは自分のチームからその取り組みを始めてみましょう。

ベッドなどうちの会社にはないよ!みたいな話もあると思いますが、何かしら今季やろうとしている会社の目標や戦略といったものはあるはずです。
そこから自分のチームに何ができるのかといったことは考えることできるはずです。

■もっとスタートアップみたいに振る舞う

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少なくとも初期段階では、自分たちは顧客が本当にもとめているものが何かを正確に把握していないことを認め、それを突き止める覚悟をしましょう。早めのリリースによる本当の顧客からの迅速なフィードバックを通じて、顧客のニーズに合うまで、プロダクトのイテレーションを継続的に重ねる必要があります。

ユーザーインタビューをするときにも言える話ですが、本当に欲しているものはユーザがわかってなかったりします。そこを見出すのが非常に難しいのですが、頑張る必要があります。覚悟しましょう。

■自律した小さなチームとともに

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権限が与えられている自律した小さなチームこそが進むべき道です。すごいプロダクトを作るにはボトムアップが必要です。
みんなに当事者としての意識を持ってもらいたければ、権限と信頼を与える必要があります。そうでなければ、率先して進めていこうなんて人は誰も出てきません。


会社をスケールさせるためには自律した人、チームを作っていく必要があります。そういった人たちが生まれるような環境を作っていきましょう。

■「言い訳」を取り除く

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テック企業は言い訳を取り除くことで、チームにサポートと成功の機会を与えようとします。
失敗を避けることはできませんが、そうなったときもチームを攻めることはせず、反省し、もう一度挑戦させます。
この方が楽しいし、素晴らしい結果をもたらします。

つまり、失敗を恐れず楽しくやろう!ということです。

まとめ

ここまで話した内容をさらっとまとめます!

1. ミッションを与えてプロダクトを作ろう!
2. スクワッド、トライブ、チャプター、ギルドの形式でスケールし、カンパニーベットを用いて同じ方向に進む。
3. チームが自立できるように投資し、よい文化を形成しよう。
4. 権限を与えて信頼し、楽しく作る!

この本を参考に是非みなさんもspotifyみたいなワクワクするようなプロダクトや楽しい会社を作っていき、世界を楽しくしていきましょう!

ご精読ありがとうございました!


最後に、ワンナイト人狼オンラインというゲームを作ってます!よかったら遊んでね!

他にもCameconOffchaといったサービスも作ってるのでよかったら使ってね!

また、チームビルディングや技術顧問、Firebaseの設計やアドバイスといったお話も受け付けてますので御用の方は弊社までお問い合わせください。




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