心のスランプを脱出、ハンドルをもう一度握れるようになった話

はじめまして、株式会社LayerXでデザイナーをしております、千葉 百枝(@chibakun)といいます。

※この記事は、10月から始まっているLayerX 2022アドベントカレンダー、21日目の記事です。前回は yanaさん による、リスクへの備えには「組織文化」が重要だという話 でした。
明日は、Podcastの司会にも積極トライ! インサイドセールスで活躍中のmarkくん にバトンをパスします!

2021年8月16日にLayerXに入社して以来、バクラク事業部のマーケティングデザイナーとコーポレートデザイナーを兼任してきました。11月からはコーポレートデザイナー専任として、『LayerX』の見え方、伝わり方のデザインに注力していきます。

が、このnoteでは、前回のnoteで書いたようなデザイン領域の話はお話しません。今回は、私がLayerXに入社してから陥った心理的なスランプについて書いていきます。

ここで言う心理的スランプとは、『もっとできるはずなのに』『私はこの会社にあってないんじゃないか』という不安や、『活躍できてない』『足を引っ張っている』などといった、<客観的な評価や事実と異なる>思い込みのことを指します。

昨年の8月16日に入社し、1年と2ヶ月ちょっと。
発信がんばるぞ〜!と思いつつ、 前回のnote公開から早1年、「次を楽しみにしてるよ!😊」「まだかな!😆」なんていう(関係性がある上での)煽りも受けつつ、かなり間が空いてしまいました。

お誘いを受けつつも華麗にスルーする私(akkyyさんは素敵なnoteをバッチリ書いてました)

突然、自信が持てなくなった

改めて、どうして筆が重くなってしまったのか。振り返ってみると、入社3ヶ月をすぎたころを境に『LayerXの一員であると、自信を持って公言できるほどの実績を出していない』と思うようになりました。
『伝えられることもないし、発信よりももっと実績で成果を出さなきゃ…』と逸る気持ちが強くなり、近眼的になり、労働時間が不要に長くなったり、自分のアウトプットに納得はすれど『最高!』と思えなくなって。

制作物や施策をメンバーに褒めてもらっても『XXさんのおかげだしな』『私は手伝っただけだしな』『コメントをもらえるのはLayerXのアウトプットだからだしな』という気持ちが顔を出し、「そうですよね? いいですよね?😘 」と言い切れなかった。そんなアウトプットに留まる自分に対してモヤモヤが溜まっていきました。今考えるとやばい…

mosaさん(バクラク事業部CTO/CPO)が、たびたび「お客様への提供価値に向き合いましょう、矢印が内側(=自分)に向きすぎないようにしましょう」と唱えてくれる度に、『ダメだ、矢印が自分に向いている!』と自戒し、制作物に向き合うものの完全に拭い去ることができません。
果てには『自分には、LayerXは ”レベルが高すぎる” 環境なんじゃないか?』と思うに至るほどで、自分と周囲を客観的に見れない状況に陥っていました。

そもそも、どうしてそんな状況に? 改めて考えてみると、いくつかの要素が浮かんできます。

一部のデザインを捨てることへの申し訳なさ

ビジネスサイドのメンバーと、制作サイドのメンバーの数が噛み合わない時に、どうしても『依頼されたすべてのデザイン』を諦めるタイミングが来ます。
というより、今では『(すべての施策を行えないように)すべてをデザインすることは無理』と思っていますが、デザインはその性質上、手が入っていないことが分かりやすいので常に申し訳ない気持ちがありました。

デザイナーが手を動かせる時間 <(複数の)マーケターの施策数となった時、顕著にこれが起こります。
施策をやらない、という選択肢もありますが自社の場合、一部のデザインを諦めて(あるいはマーケターの助けを得て、テンプレートの活用などで一定のラインまでは引き上げて)リリースするという流れでした。

私がLayerXに入社して半年の間は、多くがその状態でした。
2022年3月に1名、2022年7月に1名がデザイナーとして入社してくれましたが、一時的にクオリティや制作可能数がアップしても、すごいスピードでプロダクトが増え(開発チームリスペクト😎)、お客様が増え(ありがとうございます!)、マーケティング活動も増え、現在でも一部のデザインを後回しにしています。

このことをメンバーから責められたことは一度もないですし、『今はこの戦略だ』と公表していても、どうしても「くうぅ…」となる気持ちが消えませんでした。

不慣れなクリエイティブに順応しきれない

これは過去のnoteでも少し触れましたが、エンタメ/装飾多め・派手さ勝負/to Cのデザインから、サービス/装飾少なめ・バランス勝負/to Bのデザインに適応するタイミングでは大きく自信を失いました。

バナーなどのシンプルな制作物では問題なかったのですが、印刷物やテンプレートなど難易度が上がると急に対応できなくなり、メンターのフィードバックをもらう時間が格段に増えました。
私はデザインの力がないのかもしれない……と思い悩んだのもこの頃です。

エンタメは自分が好きだということもあり自然なインプット→アウトプットができていたのですが、ドメイン知識の不足もあり、お客様のニーズを掴んだクリエイティブを出せている自信もなく、また、このタイミングはマーケメンバーの人員も不足していることで効果計測も難しく、悶々とした日々を過ごしていました。

経営陣をある種、神格化していた

自分と周囲を客観的に見れない状況だった、と上でも記載していますが、経営陣の神格化でした。一部メンバーに対してもこの気持ちがあったと思います。

LayerXの経営陣は、年齢が若い方もいますが、かなりのハードシングスをこなしてきた人が多く、中には起業2周目のメンバーも多いです。彼ら、彼女らの一意見に、「XXさんが言うなら正しいのではないか」と表には出さないように気をつけていましたが、正直バイアスをかけてしまっていました。

fukkyyさんが「僕らの意見だから、と採用しないで」というのを口すっぱく言ってくれていたおかげで都度正気に戻れていましたが、魔の三ヶ月目以降は、必要以上に意識しすぎたことが何度もあります。

デザインに関してだけは、経営陣よりもできるはずだ。むしろ、かけてきた時間や役割を考えるとそうでなければならないのに、と自分を責めることも多く、それがさらに自信を失う負のループに入っていました。

もちろん、常に、どんなものに対しても自信がなかったというわけではありません。いいなと思うアウトプットや行動ができることもありました。ただ、それで一時的に浮上しても、常に自分への薄い不信があり、地盤がゆらゆらと揺れている感覚がありました。

どうやって抜けだしたのか

1. いろんなメンバーと対話、アドバイスを1つだけ実行した

うまくいってないんだよね、自分でコントロールできてないんだよね、というのは随時適切なメンバーに相談していました。メンター、社内人事、評価をしてくれる上長、社内にとどまらず、他社のデザイナーや元同僚まで(お世話になった方、ありがとうございます!)色々な人に相談しました。

ここでCEOであるfukkyyさん、ymatsuさんとの対話の時間(1on1)をもらったのも私としてはGood Actionでした。お二人はこんなことでは悩まないだろう、という思いがありましたが、「ああ、わかります。ありますよね、僕もある」と言ってもらえたことで、神格化の呪いの解除と、心がとても穏やかになったのを覚えています。

CEOにする話か?というレベルの相談をする4月の私

そして、一番記憶に残っているアドバイス【だけ】をすぐにやるようにしました。悩んでるだけでは前に進まないのはその通りで、行動してこそ変化が起こるというのはありとあらゆる名著で言われています。私はよく悩む性格ですが、ここはすごく意識していました。

アドバイスの全てを実現しようとすると時間が足りず、うまく行かなかった…という落ち込みの沼にハマる可能性が高いので、一番記憶に残っている、これだ!と思ったアドバイスを一つだけ、聞いたあとからすぐにやると
いうのを繰り返していました。いっぱいアドバイスをくれたみなさん、許してください 🐹 

2. 余裕を作るために、無理をしてでも採用の優先度を上げた

7月にマーケティングデザイナーであるkougaさんが入ってきてくれてから、ありとあらゆるアウトプット、Ops、そして私のメンタル状況が明らかによくなったのを実感しています。私より専門性が高く、マーケティング分野に関して相談/任せられるメンバーがいることのありがたさったらなかったです。

私はかなり判断が遅れてしまったのですが、制作物の2〜3割を断ってでも採用に時間を使うべきだったなと思っています。
コーポレートデザイン専任になった今、この時の反省を絶対に活かしてやるぞ!と息巻いています。気になる方、業務委託からでも大歓迎です!気軽に声かけてください!(すかさずデザイナー採用ページ

ただ「100%、この人だ!」と思えるまでは、いくら現状が苦しくても見送ること、何度も対話をさせてもらうことはすごく意識していましたし、今も意識しています。

3. 十分なリサーチと、意見の受け取り方を変えることでバイアスを排除した

自信がない時ほど、改めて一つ一つを丁寧につくること。自分の制作時のリサーチの浅さを反省し、時間配分を大きく変えました。リサーチが浅いからこそ、自分の制作物や方針に自信が持てない。だからフィードバックや意見が「改善のための指摘、客観的な一意見」ではなく「全くダメなクリエイティブだという指摘」に見えてしまうことがありました。

この気づきは、7月に入社したkougaさんのリサーチの深さ、および7月に開催されたmonopo sessionで登壇されたtomitaさんの「リサーチに5割の時間をかける」といった時間配分のお話で得ました。お二人ともありがとうございます!

また、大きな制作物の場合、もらったフィードバックはバイアスがかからないようにあえてスプレッドシート化し、名前を見ないように整形したりもしました。誰が言ったかに引っ張られずに、何が言われているのかを取り出すことに注力していました。
受ける必要のないダメージを受けていた自分に気づき、仕組みや工夫で「コト」に向き合えた点はとてもよかったと思っています!

4. 今すぐには無理、でも徐々によくなっていると唱え続けた

なぜか自分自身のことだと、問題を放置する=努力していない、停滞している、なんなら後退している…と自分を追い詰めてしまったり、解決していないこと自体が気持ち悪くて過活動になったりしませんか? 私はずっとそうでした。

すぐに解決しなくていい、と心から思えたのは社会人経験の中で初めてのことで、そのマインドセットがLayerXの『長時間より長期間』という考え方に沿っているなと感じています。
自分のペースを守り、誰かと比較せず、自分の健康や家族、ペット、何かを好きだと思う気持ちなど、自分の世界を構成するものをちゃんと大事にできるようになって、不要な強ばりが解けた気がします。

これはメンターのmoriさんのおかげでもあります。「でも前よりよくなってるじゃない」「一つ一つ作っていって慣れればできるようになるよ」と長期的な目線で肯定してくれたのはすごくありがたかったです。

また、採用や法律の改正など、どうしても自分だけでハンドリングできない出来事に対しては「待ち」の姿勢を持つことも手段だと学びました。

5. 最後に、少しずつ「自分発」のトライを増やしていった

ここでようやく、徐々に本来の自信を取り戻して次のステップに進むことができました。それが、自分で課題を見つけ、自分発のトライを増やしていくことです。こちらのスライドにあるように、LayerXには、NoじゃなきゃGoの文化があります。

NoじゃなきゃGoのようす

Goした結果Noだった時であっても「この挑戦はナイスだったね」「こういうことが分かった」「あの時はベストの選択だったね」と認めあえる文化があり、その繰り返しで、徐々に「ドライバーハンドル」を意識せず握れるようになってきました。

もちろんうまくいかないこともありますし、私が担当しているデザイン領域では、直接お客様の反応をいただけることは少ないです。ですがクリエイティブの表現ひとつといった小さな工夫であっても、繰り返していくことで自信と楽しさ、お客様に直接向き合うメンバーのモチベーションに繋がっていると実感しています。

LayerXはこれら一つ一つの対策がとれる環境だった、というのは正直とても大きいです。CEOとの対話の門は、オープンドアという形でいつも開かれているし、傾聴スキルのあるメンバーが多く、心理的安全性がありました。
採用したいと思えばメンバーが協力してくれ、紹介や拡散の手助けがあり、「しっかり時間かけてリサーチしたいので、この施策は1週間後からスタートしてもいいですか? 」という交渉も日頃行われています。

当たり前のことでも、できていたことでも、できなくなる時もある

こんなのビジネスパーソンなら当たり前じゃん、と思う方もいるでしょう。なんなら幼少期からできている人もいるし、そんな方には息をするように当たり前のことで、LayerXに入社してくるメンバーの多くがナチュラルにやっていることだなと感じます。

また、私も前職では基本的にできていたことだったので、正直びっくりしました。おそらく仕事が性質に合っていて、努力せずに得られるナレッジや、感覚的に進められる部分があったのだと思います。

だからこそ、仕事上のみじゃなく、プライベートで変化があったり、ひょんなことから心の支えを失ったり、予測してなかった壁にぶつかることで、誰しもが急に陥ることがあるんじゃないか。
そんな学びから今回、noteに起こしてみました。

入社エントリから始まり、3ヶ月のまとめnoteから意識していることとして、なるべく等身大で、できれば知られたくないカッコ悪いことも発信したいなと思ってます。『LayerXって、ベンチャー界隈って、つよつよザウルスじゃないメンバーもいるんだ』というところを伝えていきたい。恥ずかしい気持ちはありますが、このnoteが必要かもしれない誰かに向けて書いています。

ただ、『今なら言えるようになったこと』に限ります!😂
スランプの渦中は申し訳ないし、恥ずかしくて、自信を失って迷走します。でもそれでいいんだと思います。ありがたくも、LayerXではそれをリーダーやメンター、役員にまで開示できる環境でした。

スランプ時の1on1の様子(議事録)

今はとても楽しく、ハンドルを握っている

LayerX羅針盤で、ドライバーハンドルを握る、のスライドを見て腑に落ちました。
羅針盤公開の少し前から、パフォーマンスもメンタルも上向いてきていたのですが、より「ああ、自分はハンドルを握ることができてなくて、少しずつできるようになってきたんだな」と腹落ちしたのを覚えています。もちろんサボっていたわけではないし、職種として求められているアウトプットは出せていたのですが、しっくりきていなかった。言葉にできない噛み合わなさがありました。

スタートアップ、ベンチャーのイメージと異なり、うまく行かない時もある、と許容された上で長期間の変革にチャレンジできる。そんな風にLayerXの文化も変わってきたし、これからも変わっていくのだと思います。

私は1年という長い時間を費やしましたが、徐々に自分の時間と体、心のコントロールを取り戻し、自分で創意工夫をしていく楽しさを感じられることが増えてきて、改めて腰を据えて、ドライバーハンドルを握って取り組んでいくことにワクワクしています。

引き続きバイアスを排除するリサーチはしっかりしていきつつ、ただ、コーポレートにおいては必要以上のこだわりや一種のエゴが大事になる範囲もあるなぁと思うので、この辺もコーポレートデザイナーのみなさんと対話していきたいです!

また謎のスランプに入ることがあるかもしれませんが、今回のことで乗り越えられたという実績ができたので、誰かが同じようなスランプに陥った時に、実体験として理解できる強みが増えたなぁとポジティブに捉えています。
私がうまく行かなかったときにもらった気持ちや時間を、誰かに渡していきたいと強く思ってます! 気軽にLayerX Opendoorでお話ししましょう👐

アドベントカレンダー、採用ポジションの紹介

最後に! LayerX 2022アドベントカレンダーですが、すでに私の前に20記事ものniceなアウトプットがされています。全部追うのは大変だと思うので、こちらのカレンダーから、「ちょっと気になるな」というくらいのものを流し読みしてもらえるとすごく嬉しいです!

ここまでいい感じに書いてしまいましたが、今、LayerXには100名以上のメンバーが在籍しており、今までのやり方では文化や成長速度を守っていくのが難しいタイミングが近づいてきたなと感じています(もちろん、現メンバーも色々なTryをしています!)。

だからこそ、一緒にこれからのLayerXのドライバーハンドルを握ってくれる方を探しています。少しでも気になる方は是非、一緒にLayerXを作っていきましょう!

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

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