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初めて行った直島、故郷だと思った。

おかえり。

そう言われたような気がした。

昨年夏、人生初の一人旅で訪れた香川県直島。フェリーから島に降り立った瞬間のこと。初めての場所にもかかわらず、「ここが私の故郷なんだ」と、強く思わせる何かがそこにはあった。それが何なのかは分からないけれど、あの時、確かにそう思ったことだけはハッキリと覚えている。


どこか旅行にでも行って来たら?

両親からの言葉と自分の「行きたい」気持ちが、一人旅することへの背中を押した。昨年、大学四年生だった私は、今よりも生きることへの気力が低下していたんだと思う。大学の授業や課題、試験と卒論。所属していたのが社会福祉学科で、資格取得を目指していた周囲の多くが就活やらバイトやらと学業を両立させている中で、私は学業、しかも、卒業するのに必要な必須項目をこなすのだけで精一杯だった。

端的に言えば、塞ぎ込んでいた。そんな私に、上述したようなことを両親が言ってくれた。旅費は負担するから、とも言ってくれて。私は素直にそれに甘えることにした。

そうして始めた、旅行計画。

どこに行くか、何をするか。

調べていくうち、瀬戸内海を見て、芸術と自然に触れる旅にしたい、と言う目的が決まり、その中で選んだのが香川県の離島、直島だった。

まず始めに宿探し。その中で、モネの連作、睡蓮が飾られている地中美術館と、草間彌生さんの作品「南瓜」を見るのだけは絶対に譲れない。そう思ってその二点に近い場所、「ベネッセアートサイト直島周辺」エリアで宿探しをしていると、「直島ふるさと海の家『つつじ荘』」で運よく最後の一室を抑えることができた。本当に運がよかった。

初めて自分で飛行機のチケットを取ったのも、いい思い出。そこから、何日目にどこに行って、何をするかの計画を立てた。二泊三日の旅の計画は、事細かく分刻みで組んだ。初日、高松空港から高松港への行き方、港から直島へのフェリーの時間。島の交通機関について。宿までの行き方。美術館までの経路。

それから食事関連。まずは絶対に現地で食べたかった、香川と言えば「うどん」県。讃岐うどんをどこで食すかも、あらかじめ。加えてインスタを見漁っていて見つけた、数多くある直島のカフェのひとつ「ミカヅキショウテン」にも寄ろうと決めていた。

それらを何度も何度もネットで調べ、欲しい情報が記載されていたURLなどを全部、Googleスプレッドシート(Google版Excelみたいなやつ)にまとめて、自分なりのしおりをつくった。それが現地でも役に立ったのは、ここだけの秘密にしておく笑。昨今、情報が溢れているネットだけど、この時ばかりはその情報の多さに救われた。

旅行、本当に楽しかった。

瀬戸内海、一望

瀬戸内海をこの目で見れたことは、この先一生の思い出になると思う、でもこれで終わりじゃない、また絶対に見に行く。

まさに風光明媚、の一言。

讃岐うどんに感動

初日、高松空港にあったうどん屋さんで食べた讃岐うどん、コシの強さが想像以上の美味しさに感動した。

「うどんってこんなに美味しかったんだ」

つつじ荘で過ごした夜のこと

トレーラーハウスにて宿泊

初めての宿で過ごす二日間、一人きりの夜。日没まではさざ波がBGMになって心地よかったのに、真っ暗になると心細さが勝った部屋で一人、静かに大号泣して、思わず友達にメッセージを送りつけてしまったのも思い出。それを聞いてくれた友達には感謝。

地中美術館で見る

入口のみ撮影可

自然光を取り入れる構造になっていた地中美術館で見た、モネの睡蓮。陽の光に当たり、きらめいて見えたのは忘れられない。息を吞む美しさだった。同じ場所で時間を変えてまた絶対に見ると決めた。この考え方こそ、印象派だと思った。

美術館に併設されたカフェ、地中カフェ。そこで食べた食事プレートに

「モネのお気に入りご飯」が最高に絶品だった。

使われていたのは直島産「SOLASHIO」。あの美味しさは絶対に忘れないし、次行った時には絶対にお土産として購入する。

終わってチケットセンターに戻り、興奮冷めやらぬ私は、この気持ちを誰かに伝えたいと思って、近くに居た、白Tシャツが似合うスタッフさんに迷わず話しかけた。

東京から旅行で来たこと、モネの絵を地中美術館で一目見たかったこと、感動して泣きそうになったこと、観光客の中には実際に涙を流す人もいらっしゃること、そのスタッフさんの生まれが実は関東圏だったこと、スタッフさんの出身県の美術館でモネの積みわらの絵が所蔵されているから、ぜひ見に行ってみてくださいねと教えていただいたこと。

直島で、現地の方と話をする、と言うのを、今回の旅行の密かな挑戦にしていたので、それも無事に叶えられて満足。

ミカヅキショウテンの由来とは

ミカヅキショウテンでは、店員さんと少しだったけどお話ができた。利用客が減ったタイミングを見計らい、店員さんにちょっぴり勇気を出して、以前から気になっていた「店名の由来」について伺うと、優しく丁寧に教えてくださったのが印象的。

ミカヅキショウテンの外観。
その後に飲んだカフェラテがとっても美味しかった。

黄色い南瓜が見放題

運よく宿泊地であるつつじ荘から徒歩数分の距離に、それはあった。幼少期に何かで見て以来、頭の片隅に常にあったのは草間彌生さんの「黄色い南瓜」だった。現在では映えスポットにもなっているらしく、日中は大勢の観光客でにぎわうその場所も、早朝や日没以降は、人の数もまばらに。すると一転、見放題となる。じっくりご対面できるのは、後にも先にもこれが最後だったのかもしれないとすら思う。

南瓜の前に立って、ただぼーっと眺める、この上ないご褒美だったな。


直島への一人旅は、まだまだ私の知らない世界があるんだってことを教えてくれた。普段から単独行動が多い私にとって、一人行動はお手の物だと思っていた。それでもやっぱり夜になると心細くもなるんだなって学べたし、そんな時に連絡できる友達の存在がありがたかった。何よりも旅費から何から、金銭面を負担してくれた両親に、心からの感謝を。


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