クラリネットの話

わたしが唯一、人に言える特技はクラリネットが吹けることです。
クラリネットという木管楽器をご存知でしょうか。いまいち分からないという方もいると思いますが、黒くてでっかいリコーダーみたいな楽器のことです。つやつやとしていて、見た目の割にはずっしりと重たいです。木でつくられているため(一部プラスチック製のものもあります)暖くて丸みのある音が出ます。何ともわかりづらい説明をしたので気になる方はぜひ検索してみてください。マイクラリネットを載せようと思い何枚か撮影したのですが、あまりの下手くそさにクラリネットに申し訳なさを感じたので文章のみで失礼します。写真の勉強したいね。

クラリネットを吹き始めたきっかけは、中学生のころに吹奏楽部に入部したことです。わたしは物心ついたころから運動がとにかく苦手で、外でドッジボールをするくらいなら、家のなかで絵を描いたり、本を読んでいることのほうがよっぽど楽しく感じていました。そのため、部活を決めるときも選択肢は文化系のみだったのですが、どういうわけか特に迷いもせず吹奏楽部へ入部を決めました。小学生の頃からなぜだか「吹奏楽部に入ろう」とよくわからない決意をしていたからです。特に吹奏楽に関心があったわけではないし、楽譜も読めないし、やりたい楽器があるわけでもないのに。同じ音楽でも興味関心は圧倒的にバンドに向いていましたし、強いて言えばギターがやりたいなと思っていたくらいです。(この話はまた改めて書きたいです)

そうして入部した吹奏楽部ですが、わたしにまず立ちはだかったのが楽器決めです。わたしの学校の吹奏楽部では、新入部員はまず一通り楽器の体験をして、第三希望までやりたい楽器を決めます。楽器は基本的に学校にあるものを使用しますし、編成の都合もあって、必ず定員があります。定員以上の希望者がいた場合はオーディションを行い、落ちた人は別の楽器にまわります。

体験を一通りしたわたしは、まずサックスがやりたいと思いました。理由は音が出たということと、サックスのフォルムがかっこいいと思ったという二点です。その他の候補としてあったのが、クラリネット、パーカッション、トロンボーンです。個人的にはこの「音が出た」というところが一番重要でした。吹奏楽という大きな括りがありますが、楽器は多種多様で体の使い方も全く違います。ちなみにわたしはフルートの音が全く出せません。トランペットは音は出るけど音階ができません。どれだけ頑張っても「ド」の音から上がりも下がりもしません。先ほどあげた候補は全て「音が出てある程度音階もできた」楽器たちでした。

なぜわたしがサックスをやらなかったのかというと、至極単純な理由で、オーディションをやりたくなかったからです。そのときサックスは1番人気でオーディションが開催されることになりました。当時中学生のわたしは、オーディションを受けてまでサックスがやりたいのか?などなど実にならない自問自答を繰り返した結果、サックスの候補に名乗り上げることをやめ、次点でそれなりに吹けたクラリネットに決めたのでした。ちなみにクラリネットではオーディションは行われませんでした。

そうして始めたクラリネットですが、後にも先にもここまで熱中したことはありません。(それもどうかと思いますが...)読めない音譜を必死に覚え、単調な基礎練習を1日中やって、そんなことすらめちゃめちゃ楽しかったです。今考えると、中学生にしては厳しい練習と講師陣だったように思いますが、それでも楽しさが勝っていました。できないことを悔しく感じたり、自分の不甲斐なさに泣いたり、嬉しくて叫んだり、青春という言葉がぴったりな中学生活になりました。今でも鮮烈に強烈に覚えているのですが、最後の大会で過去最高の演奏ができたときの、舞台から見た客席が忘れられません。眩しくて熱い照明の下で、たくさんの人の拍手を浴びて、大きく深呼吸したあの瞬間は今でもわたしの大切な思い出です。最後の一音を鳴らしたときに反響した綺麗なハーモニーの音も、目標にしていた結果を手に入れることができたときの「努力って報われるのか」と初めて感じたあの感覚もわたしの大切な宝物になりました。大人になった今では絶対にあんなに純粋に感じることも信じることもできないと思います。

高校でも吹奏楽部に入部しクラリネットを続けました。部活漬けの毎日でした。大会が近づくと、朝起きた瞬間から演奏する曲が脳内で流れ続けるような日々でした。中学生のころのような純粋な気持ちだけでは押し通せないようなトラブルも部内で起きつつ、3年間ほぼ毎日クラリネットを吹き続けました。

今は趣味程度に吹くくらいになりましたが、こんなに続けていることも他にないので、結果論にはなりますが、わたしの大きな大きな財産となりました。
強い意志を持って始めたわけではないクラリネットですが、こういう経緯もあり今では大好きな楽器です。

何個か記事を書いてきて薄々感じているのですが、記事の締めってどうすればいいんでしょうね。面白いことを全く書けずに2,000字になったことに恐怖を覚えたところでいい加減終わりたいと思います。はやく元通りになってライブや演奏会に自由に行けるようになりますように。








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