悲しい思い出を悲しいまま書こう。

悲しい思い出をポジティブに書き直してみたい。詩的な言い回しをして、一回り大きくなった目線で見直して、そういう文章を書いてみたい。

だけど同時に、そんな文章クソ喰らえだと思う。

強がってんじゃねえよ。ダセエなあ。

だから、悲しい思い出を、悲しいままで書いてみよう。


小学生の頃、僕は運動が下手だった。走れない、投げれない。逆上がりなんてできるわけが無い。

だけど僕は運動が得意な男子たちに混ざって遊んでいた。彼らがかっこよく思えたからだ。昼休みに彼らが校庭でサッカーをしているのを見て、混ぜてもらっていた。

当然下手だからボールは回ってこないし、昼休みが終わってボールを片付ける時に「最後当たったやつが片付けな」と言われてボールをぶつけられて、仕返しもできずにいた。

でも、僕は1人じゃなかった。僕と同じようなやつがもう1人いたのだ。彼の名をMとしよう。

Mは僕と同じように運動が下手で、だけど僕と一緒にサッカーに加わっていた。僕はMに親近感を抱いていた。

ある日、いつものようにサッカーをしていた時の話だ。Mは敵チームだった。運動が得意なやつが思いっきり蹴ったボールがMの顔に当たった。Mは倒れ込んだ。

敵味方関係なく皆がMのところに集まった。Mは明らかに顔を怪我していた。すると、Mにボールをぶつけた張本人がこんなことを言った。

「Mを保健室に連れていこう」

「でも俺が抜けちゃうとチームの強さに差が出るから、お前連れていけよ」

お前とは、僕のことだった。


僕は理不尽だと感じた。

僕がぶつけた訳じゃない。Mにも失礼だろう。怪我させたやつが保健室に連れていけよ。僕だってまだサッカーやってたいよ。

でも、僕は何も言えなかった。

僕は黙ってMに肩を貸し、保健室に連れていった。

悔しかった。文句ならあったのに、絶対僕の方が正しいのに、何も言えなかったのが悔しかった。

Mが可哀想だったのもある。ボールをぶつけられて、僕が行かなかったらきっと一人で保健室まで行ったに違いなかった。

悔しかった。運動ができて、イケイケの男子に、僕は、何も言えなかった。

Mは仲間だと思った。


別のある日、何人かでMの家に遊びに行ったことがあった。Mはゲームが好きだったから、一緒にゲームをしに行った。

僕の家は親がゲームを買うことを渋っていたから、ゲームをするのは友達の家に行った時くらいだった。当然ゲームはヘタだった。

Mはゲームが上手かった。一緒に遊びに来た他のみんなもそれなりに上手くて、僕は1人浮いていた。スマブラをやっても直ぐに死ぬし、他のゲームをやっても足でまといだった。

なんにも上手くいかなくて嫌な気持ちになったけど、それでもみんなと楽しみたかったからゲームを続けた。僕なりに一生懸命だった。

しばらくして、Mが僕にこう言った。

「下手くそだなぁ。他の人と代われよ。」


悲しかった。

寂しかった。

僕の味方はどこにいるんだろうと思った。

僕は他の人にコントローラーを渡して、みんなが遊んでいる画面を眺めた。

気にしてないよって顔をした。

それ以降Mとは話さなくなった。


運動出来るやつとも、ゲーム出来るやつとも、仲良くできなかった。

そして数少ない友達も、中学になるとオタクになって話が合わなくなった。

この記事の僕の寂しさ、分かった?


悲しい思い出を悲しいままで書いてみた。

「思い返すと逆に良かったのかも」なんて絶対に言わない。当時の僕にそんなこと聞かせられない。

悲しいよな。わかるよ。って言ってあげたい。


悲しい思い出は、悲しい思い出のままで。

それでいいじゃない。


以上、僕のクソみたいな思い出でした。

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