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会話として成立していないのに笑えるコント⁉/ナツノカモ低温劇団 本公演「月の裏側」

不思議なコントを見た。ナツノカモ低温劇団というユニットの公演だ。彼らは公式に、自分たちのコントの特徴として次の4つを挙げている。
①声を張らない
②スピードで圧倒しない
③比較的長い
④わからなくてもジワジワ面白い
そう、今メインストリームで演じられるコントと逆を行っているのだ。こういう言い方をすると演者は不本意かもしれないけど、流行のあえて逆を行こうとするひねくれ感が既に私の中では面白かった。果たして、実際の内容はどうだったのか。

今回上演されるのは、ウサギ(のコスプレした男性7人)による会話劇「月の裏側」のシリーズ。全7話だが、1話完結ではなく、うさ太郎(リーダー)の妹(入院中)のために7匹のウサギたちがドタバタする連作劇。

コントはうさ太郎が、6匹(うさの助、うさ吉、うさ太郎、うさの進、うさの丞、うさ子)でコントやることが決まり、そのための会議をするところから始まる。しかし、うさ太郎以外の5匹はコントが何かを知らない。

淡々とツッコむ(指摘・訂正する)


そこでうさの助が尋ねる。
うさの助 「そもそもそのコントというのはなんなんだ。俺には今、どう聞いても食べ物の名前にしか聞こえない」
うさ太郎「おなかが空いているんじゃないのか?コントが食べ物の名前にしか聞こえないなんて、それはおなかが空いているんじゃないか?」
うさ太郎のセリフはツッコミとして機能しているのだけれど、大声を出したり、殊更に語尾を上げたりせず、淡々とボケを“指摘”する。これは斬新!

ボケまくる

うさの助と違って、うさ吉、うさの進、うさの丞、うさ子はコントが何か知っている、と主張する。しかし、説明を聞くと、サッカーや鬼ごっこなど、他のものと勘違いしていることが判明。それを他のウサギが指摘するのだが、その指摘も間違っている。

普通コントではボケに対してツッコミが必ずあるはず。しかし、このコントではボケに対するツッコミが間違っているため、ボケにボケを被せることになる。唯一ツッコミ役のうさ太郎は、きちんと突っ込む時もあれば、あまりに拾うべきボケが多すぎるので、ボケを流してしてしまったり、雰囲気に飲まれて困ってしまう時もある。

当然、ボケが多すぎて会話として成立しなくなるが、あまりの意味不明さ・おかしさに観客である私たちは笑い出してしまう。

そもそもボケていることに気づかない


さらに面白いのは、ウサギたちがボケていること自覚していないということ。自分たちは正しいと思って、自信満々にボケまくる。そのため、ツッコミを拒否したり、同じボケをしつこく続けたりする。そのサイコ感、狂気が笑いを誘う。

要するに面白かったのだけれど、うまく言葉で説明できないのが悔しい。シュールとかそんな簡単な言葉ではくくれない、得体の知れない面白さ。YouTubeで去年の公演が無料公開されているので、ぜひおこもりのともに!


プーク人形劇場について

今回の会場は西新宿にあるプーク人形劇場。私がここを訪れたのは、恐らく10数年ぶり。

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以前来た時見たのは確か「だるまくんとてんぐちゃん」だった。絵本で大好きだった「これは おおまちがいの とんちんかん」を生で聴けて感動した記憶がある。


久々に訪れてみたところ、令和から平成通り越して、昭和のアングラ感にビックリ。劇場は入り口から階段を下って地下にあるのだけれど、まるで地下アジトに潜入するような気分に。

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入口では「だるまくんとてんぐちゃん」のポスターを発見し、まだ続いているんだ!と驚く。最近はヨシタケシンスケの絵本『りんごかもしれない』を人形劇化したらしい。これはまた見たいものが増えた!

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