見出し画像

読書「仕事のためには生きてない」

安藤祐介さん。
実は初めて読みました。
「被取締役(とりしまれやく)新入社員」と言う作品がドラマ原作大賞に受賞、森山未來さん主演でドラマ化されたとの事。

Wikipediaで検索したら、経歴が凄かったです。
早稲田大学卒ですが、色々あって職を転々とされていたのですね💦
中には公務員もありました。
公務員は基本的に副業ダメですから、今は作家一本なのでしょうか?

そんな安藤祐介さんの最新作。
「仕事のためには生きてない」

著/安藤祐介
「仕事のためには生きていない」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

勇吉35歳。
食品会社の広報宣伝部。
仕事以外では大学時代からの仲間とのロックバンドでベースを弾いている。
仕事は適度に切り上げ、アフターファイブを楽しんでいたハズなのに。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

コンプライアンス。
よく聞きますね。
法令や規則を守る、遵守する意味だそうです。
さて、この著書に出てくる言葉は「スマイルコンプライアンス」略して「スマコン」
はて?
一体なんの事でしょう。
実は主人公はじめ、登場人物のほぼ全員がはてなマークです。
しかし。
社長が言い出したパワーワード「スマコン」を何とか形にしなければならない。
その準備室長に勇吉が抜擢されました。
頭を抱える勇吉。
ロックバンドの演奏どころか練習もままならない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この本には大きく3つ、テーマがあると思われます。
1つ目は主人公勇吉の変化
2つ目は組織の中での意識改革の難しさ
3つ目は生きる意味

(素人の私が勝手に思った事です。ご了承下さい🙇💦)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

組織。
小さくても大変なのに、従業員2000人以上の大きな企業で、しかも100年以上歴史ある会社。
親族経営で社長は前社長の息子。
幹部は社長のイエスマン。
会議はダメ出しばかり。
はかどらない稟議(りんぎ)。
根回ししてもくつがえる。
指摘された事を訂正するも、また別の幹部からダメ出しをくらう。
そして「昔は良かった」
今の時代のコンプライアンスを考えたら引っかかるようなハラスメントや残業などの武勇伝を、幹部達は語り始めます。

いつしか勇吉は心を病みます。
医師から言われたのは
「職場に行って帰ってくるだけでもすごい」

奇しくもバンド仲間の1人がガンになり、余命いくばくもないと分かります。
そして勇吉を諭します 。
「クソして寝て、起きて働いて飯を食え」
それだけでもすげえことなんだよと。
この友人の言葉は第3章のサブタイトルにもなっています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その後の展開は割愛しますが、勇吉の働く事への意識も変わります。
また、生きる意味を自分の病気と友人の病気とを重ねて問いかけます。
更に謎の「スマイルコンプライアンス」略して「スマコン」をどうやって幹部達や職場の仲間たちに分かってもらえるのか。
その過程もまたたくさんのドラマがありました。
スマコンに携わるのは勇吉含めて4人。
そこに法務企画課長の山田も関わってきます。
こちらの山田さん。
勇吉とは同期。
しかも、本来のコンプライアンスを担当しています。
規則が守られているか。
勇吉が担当するスマコンとは真逆な立ち位置。
山田さんと意見をぶつけ合う内に、スマコンの定義みたいな物が見えてくる過程が面白かったです。

最終的に出されたスマコンの草案。
これは前向きでポジティブで優しさに溢れています。

明文化しなければならないのか?と言われたら微妙ですが、明文化にしないとつい忘れがちになる「性善説」が崩れかけているこの頃。
スマコン12箇条。
とても良かったです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

私は民間で働いた事はありません。
公務員から専業主婦となり現在に至ります。
ですから、民間の資本主義的な事は、もしかしたら理解出来ていないのかも知れません。
ですが、公務員であっても、専業主婦であっても根底的な事は、このスマコン12箇条にあてはまるのではと感じています。

一応簡単に。
・挨拶しよう
・声かけしよう
・困ったら助けてもらおう
・ミスしても人は憎まず
・お互いを認めあおう
など。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最後に少しだけ突っ込んだ感想を。
主人公勇吉が駆け込んだ心療内科。
薬を飲みながら通院します。

ですが、最後の方では通院や薬の事が記載されなくなりました。
ガンになった友人の言葉「クソして寝て、起きて働いて飯を食え」るようになったから?
いつの間にか治ったのでしょうか?

うつ病の1歩手前の「適応障害」と診断された勇吉。
薬を飲みながら、仕事の仲間たちや理解あるバンドメンバーの協力もあって乗り越えられたのは、とても素晴らしいです。

ですが、本当に乗り越えたのか。
それともまだ通院しているのか。
その辺があいまいで、とうとう最後まで分からずじまいでした。
私の読解力が足りないのかも知れません。
私としては、その後、通院や薬の服用がどうなったのか知りたかったです。

なぜなら、私の元の仕事で関わった人や私の個人的な知人のお話を聞くと、薬を服用しながら働くのは本当に大変そうでした。
それを勇吉はどう乗り越えられたのか。 

でもそれを書くのは無粋だったのかな?
いつの間にか通院や薬に頼らなくても大丈夫になったのだと前向きにとらえようと思います。
読後感は爽やかでしたし、組織に振り回される勇吉の姿は「あるある」と共感出来ました。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?