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読書「もらい泣き」

冲方丁(うぶかた・とう)
著者の本を読むのはこれで3冊目となります。
今回、初めてエッセイに近い物を読みました。


著/冲方丁「もらい泣き」

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「小説すばる」と言う雑誌に、2009年から2012年まで連載されたようです。

エッセイに近い物と書いたのは、著者がいくつかのお話を混ぜたり、個人が特定されないよう工夫し、物語風に構築されたようです。
「はじめに」に書いてありました。
ただ、実話を元にしているようです。
著者自身のも含め、たくさんの人のエピソード。
そうして出来た、著者がほろりとしたショートショートストーリー33編。

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たくさんのホロリするお話がありました。

著者が「はじめに」にも書いてありましたが、語る本人はホロリとせず、凄い事だとは思っていないとか、ごく当たり前に、自然体として受け止めているケースが多かったのだとか。

でも、よく聞いてみると、泣けるストーリーがたくさんあったのだそうです。

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今回、noteに書くにあたり、読み返すと「家族」「夫婦」「友人」「病気」「命」などのエピソードが多かったように思います。
例えば。

・頑固なお父さんが大事にしていた物
・ぬいぐるみに込められた思い
・心臓が悪い奥さんが運転免許を取る理由
・結婚式場での火災で避難誘導をした花嫁
・病気で夭折した友人
・若年性アルツハイマーになってしまった妻のために化粧を施す夫
・母の遺品のカセットテープ。それは胎内にいた時の自分の心臓の音
・マザーテレサの本来の救済の意味
・トルコと日本の関係。座礁した船の人命救助からの縁
・掲示板に書いた遺書。見知らぬ人からのたくさんの言葉
・ペットに助けられた命
など、33編。  

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私が特に印象に残ったお話。
サブタイトル「地球生まれのあなたへ」

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スターネーミング・ギフト。
ご存知ですか?
私はこの本を読んで初めて知りました。
天体観測所と契約を結び、観測する星に名前を付けるビジネス。
学術上な物ではなく、あくまで天体観測所での呼称。星が自分の物になる訳ではない。
だけど、その観測所では、自分が名付けた星を観測出来ると言うサービスだそうです。


星好きな妻。
星に興味のない夫。
夫は郵便配達員。
東日本大震災の時でも郵便配達をしていた。
郵便物を届けた時、多くの人が泣き崩れたらしいです。
手紙は震災前の物。
もう過去には戻れない。
そう気付かされる物でもあるとの事。

妻は「戻ってきた」。
帰らぬ人として。
その後も多くの人に郵便配達を続けていた夫。
たくさんの思いを届けるために。

ある日、自分宛の郵便物が届いた。
それは生前の妻からだった。
夫の誕生日に届くようにしていたのだとか。
スターネーミング・ギフト。
星に夫の名前を付けたのだと言う。
そして添えられたメッセージ。
「お誕生日おめでとう。地球生まれのあなたへ。人の心が持てるのは地球のお陰」
星になった人のそばに自分の星があると、この時初めて涙したそうです。

その話を聞いた筆者。
地球はEARTH。
アナグラムで並び替えると心、HEART。
奥さんはご主人と言葉遊びをしたかったのでは、と伝えたそうです。

郵便配達員の夫は「やっと妻の心が届いた」

妻の意図がアナグラムだったかどうかは分からない。
だけど、星空を見上げ、希望を与えていると信じたい。

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このお話は思わずほろりとしました。

他の作品も驚いたり、感動したり、ぐっと胸に沁みるお話がありました。

有名人だけでなく、一般の人のエピソードもふんだんに含まれた本作。
帯には「心の処方箋」
素敵な一冊でした。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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