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読書「ののはな通信」

著者は三浦しをんさん。
「舟を編む」「仏果を得ず」「神去なあなあ日常」などの小説やエッセイを読ませて頂いてます。

今回は「ののはな通信」。
装丁が可愛くて手に取りました。

のの…野々原茜
はな…牧田はな(のちに磯崎はな)

2人の出会いは高校。
昭和59年が舞台(1984年)
仲のいい友達。
当時はまだインターネットも普及されておらず、当然、携帯電話(スマホ)もなく。
と言うか、この当時はポケベルも無かったのでは?
なので、やり取りは電話か手紙。
学校では、メモを回す、なんて事も。
2人はそんなやり取りを経て仲良くなり、いつしか家にも行くようになります。

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ここまでは、爽やかな女子高生の物語かと思いながら読んでいました。
そこからが驚愕の連続でした。

なんと。

2人は一線を越えます。
キスをし、セックスをします。

秘密の仲。
甘やかな2人の世界。

そう思っていたら、また驚くべき事件が!
若い男性教師とののが体の関係だったと、学校中に知れ渡り、ののは停学処分。
若い男性教師は他校へ異動。 
そして、はなはののを信じていただけにショックが大きくなり、はなはののに別れを告げ、そのまま卒業を迎えます。

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ひゃ~~~💦
濃い!
まだ、4分の1の出来事です。
女性同士の恋は、レズとか、百合とか表現されるのでしょうか?
2人とも、男性になりたい訳ではない。
見た目も気持ちも。
あくまで、恋愛の対象が女性だった。

別れを決めたはなは、2人の思い出の【クローバーの指輪】以外、ののから貰ったたくさんの手紙やメモを、ののにそっくり返します。

その時のののの切なさ…😢
(の、が多いですね😂作中のはなからの書簡でも書いてありました🤭)

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第2章は2人が大学生になった時。

ののは、おばの悦子さんと暮らしていた。

はなは男子大学生と付き合いセックスするも、ののとは違う事に気付く。
男女の性の違いではなく、気持ちが昂(たかぶ)り方が。

そんなはなとののでしたが、年賀状の返信としてはいささか素っ気ない、転居届からまた交流が始まります。
ですが、ののとはな、2人は高校の時のような関係には戻りません。
一般的な女性同士の友情とも違う2人の関係は何と表したら良いのでしょうか。
その後、付き合っていた彼とフェードアウトしたはなは、将来有望の外交官と付き合いはじめ、婚約したのを機に、ののは高校の時とは逆に大量にあったはなの手紙をはなに送り、2人はまた別々の道へと進みます 。

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著/三浦しをん「ののはな通信」

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後半の第3章は、一気に時が進みます。
2010年。
第2章の最後は1989年。
21年後です。

この頃にはインターネットも使えます。
同窓会で会った共通の友人から、はなの連絡先を知ったののが、勇気をだしてメールを送った事から、ののとはなの交流が再開します。
ののは外交官と結婚して、アフリカのゾンダ共和国に居ました。
(※このゾンダ共和国。なんと架空の国なのだそうです!Googleで検索しても出てこないのも納得です。でも本当にある国だと思える程でした。さすが三浦しをんさん✨)

ゾンダ共和国は貧しい国。
電気や水道などは安定供給出来ていない。
民は明るいが、火種がくすぶっているように感じる。

そんなゾンダ共和国で、外交官の妻として、外国の要人やNPOなどのお客さん、使役人の現地の人とも仲良くなれるはな。
実はとてもしなやかで芯のある強かな女性なのかも知れません。


一方ののは、猫と二人暮し。
(悦子さんとは死別。実はおばではなかった!詳しくは本書を読んでみて下さい🥺ののの色々な感情が描かれてます😢)

ののとはなは約20年を埋めるかのように、頻繁にメールのやり取りをします。

ですが、はなの置かれている状況は刻一刻と悪化していきます。
ゾンダ共和国で内戦が勃発してしまったのです。

次々と帰国する日本人の中に、はなの姿はありません。

なんと、はなは現地に残ったのです。
はなは、ののとの手紙を日本にいる妹に送り、はなに残ったのは高校の時に、ののと一緒に買った【クローバーの指輪】のみ。

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何故はながゾンダ共和国に残ったのか。
事情を知っているのか。
はなの家族はののに探るように聞きますが、ののは「知らない」と返答します。
実際、ののも本当のところは知らない。
ですが、はなが「このまま私だけ平和で安全な日本に帰っていいのだろうか」と思ったのだろうと、ののは推測します。
はなから全く連絡がないので、ののは推測するしかありません。
心配と不安は尽きないけれども、どうする事も出来ないのの。
そんな中、2011年、東日本大震災が。
そして、少し落ち着いた頃、ののも一歩、踏み出します。
はなと状況は違いますが「何か私に出来ないだろうか」と。
高校時代に一緒に買ったお揃いの【クローバーの指輪】を持ち、被災地に赴き、自分の出来る事をしよう。
はなと再び会える日を信じて。
それまで手紙はお休み。


ここで、この物語は終わります。

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この「ののはな通信」
書簡の交換のみの構成で珍しいと思いました。
書簡形式なので、基本的に、いつ、誰が書いたかが分かります。
時系列で語られているので、ののとはなと一緒に人生を追う事となります。
時には昔がたりと言うか、思い出を振り返ってみたり。
高校時代の2人はどれだけ愛し合っていたのか。
それをお互いに気付きながらも、もうあの頃のようには戻れない。
けれども、ののとはなはお互いを唯一と想う。
そんな2人の約27年にも及ぶ物語です。

最後の第4章は、はなからの書簡はありませんが、存在感は半端なくあります。
はなの生き方と覚悟は、物凄く勇気のある事だと思います。
そんなはなに、ののは誇りを持ったからこそのラストだったのではと感じました。

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【最後に】
このお話は、色々な問題を提起していると感じています。
性、生、国、貧富、愛、命、家族…
難しい言葉は書かれていません。
手紙が中心ですから、時にはテンション高く「きゃー」とか書いてあり微笑ましいです。
ののとはな。
2人の今後に幸あれと願いながら読み終わりました。


ここまで読んで下さりありがとうございます。

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