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ぴよぴーよ速報「小学生でもわかる世界史」

最近フラメンコについていろいろ書いていましたが、今回は書評に戻ります。読んだ本は「小学生でもわかる世界史」です。こちらの本は先日、書店の通路横の小中学生向け参考書や雑学書コーナーに平積みしてあったので、パッと目に留まり衝動買いしたものです。作者は想像がつかないのですが、Youtubeに歴史動画を上げている歴史に詳しい人のようです。が、私は動画は観たことがない状態で本を読みました。2023年12月に初版ですが、翌年1月(本では2月20日とある)には第2刷となっていますので、結構売れてるんだなという感じです。

私がパッとこの本を手にしたのは、もともと世界史が得意だったこともあります。大学受験経験者の方なら皆さんご存じだと思いますが、日本史や世界史では山川の教科書が絶大な影響力を持っています。私が大学受験時代、この山川の世界史の用語集(補助教材)をほとんど全部暗記していました。

ただ、そんな私も年齢を重ねるにつれ、世界史を全く思い出せなくなりました。若い時代にあれだけ記憶していた知識も知らないうちに揮発してしまっていたのです。どこかで今の生活や思考に役立つ世界史の知識をアップデートしたいと思っていたところに、この本と出会ったというわけです。ただ、世界史関連の本は他にも多数発売されていますし、私も過去に何冊も世界史関連の本は購入しています。が、最後まで読み切った本は最近ではこの本だけです。それぐらいサラっと読めます。

この本の特徴は、長い世界の歴史をサクッと、細かいことはすっ飛ばしてまとめたものです。また、文章もおふざけ前提で若者言葉やヤンキー風用語を積極的に使い文章のトーンに雑談風の風味を加えています。タイトルは「小学生でもわかる・・・」ですが、文章のトーンや内容から、この本の特徴やありがたみが分かるのは少なくとも高校生以上ではないかと思われます。

地域や時代の分類は教科書のそれと非常に近いですが、圧倒的な違いは歴史が流れるスピード感でしょうか?教科書ではもう少し難しいことが書いてあって、どこかの国のどこかの時代を勉強しているうちに、前の時代やその他の地域の話を忘れがちです。しかしこの本は特定の時代と地域について、どんな勢力が何をして次はどんな勢力が表れるのかという、ある国が生まれ滅んで、また新たな国が生まれるというその流れに徹底的に重点を置いているので、途中の難しい話が少なく、歴史の流れやスピード感が失われません。これは凄いなと思いました。1冊2時間あれば読むぶんには読めます。

あと、世界史では特定の地域や国の話を勉強してる時に、「では、その時代に別のXXの地域ではどうだったのか?」という地域間や国同士の関連性なども重要な視点なのですが、この本はそういう視点も押さえてあります。この辺りも教科書では説明が少なめだったので、わかりやすくて有意義なところでした。

ほとんどすべてのページに注釈があり、この注釈も面白いですし、注釈を読まなくても本文は理解できます。良い意味で図は多め、文字は少なめで変なところで立ち止まらなくても良いところが最後まで読み切らせる要因かなと思いました。内容はライトですが、ライトさゆえの便利さと一点集中突破型の面白さがあります。

なぜ、英米仏は現在の形になったのか、米国はなぜあんなに強いのか、中国と台湾はなぜもめるのか、香港はなぜ一時期イギリス領になったのか、イスラエルパレスチナの問題の発端はどういうことなのかなど現代史や世界情勢を考えるうえでの前提もちゃんと歴史的経緯が記載されています。また、豆知識なんかも載っていてそこも面白いです。フランスの語源はフランク王国とか国士無双(麻雀用語で有名)に関することとか。。

欠点としてあえて挙げるなら、国や勢力の変遷を世界史としてとらえ重点的に説明しているので、政治制度・社会・文化的な説明はあまり出てきません。歴史から何を学ぶのか?という視点でいえば、政治情勢や社会情勢、そこから導き出される様々な決断や制度などへの掘り下げが(こそが)重要であるはずですが、逆に作者的にはこの本で関心を持った時代や地域、国があれば別の本を買って読んでください的な話なんだろうと思います。

あと、この作者の文体ですが、他国に戦争を仕掛けることを「ボコす」と言ってますが、私的には「ボコる」(サ行ではなくラ行)と活用するのでは?と思っており、ちょっと引っ掛かりました。ちなみに、この「ボコす」はこの本の一つのコンセプトであり、作者は意図的に「あー、XXの国をボコしてーな」という風に多くの為政者のセリフとして使っていまして、多用することであえて世界史は時の為政者の勝手な欲求による戦争の歴史と伝えたいのかなと思いました。

本書は、今の諸外国や世界の勢力図がどのような過程で生まれたのかなどをザクっととらえたい社会人の方はもちろん、世界史を時代の流れとして大きく俯瞰して脳内にマッピングしたい大学生・大学受験生などにお勧めしたいと思います。

関心のある方はぜひ手に取ってご確認ください。

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