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今、「雷獣」がおもしろい

 「雷獣」というYouTubeチャンネルがある。それは、ベテランち・かべ・今井・永遠という灘中・灘高出身者で運営されている。

 これまでのわたしは歌手やお笑い芸人、料理研究家といった、既に何かしらの肩書がある人物のYouTubeを見ることはあった。でも、YouTuberのYouTubeは頑なに見てこなかった。

 そんなわたしが初めて見るようになったYouTuberが雷獣だ。

 最初に見たきっかけは、ベテランちこと青松輝が書いている文章を読んで、その人となりが気になったから。

 でも、それから継続して見ている理由は、雷獣がわたしの知らない世界を教えてくれるからだ。

 わたしは人生で灘中・灘高出身者に出会ったことがない。厳密には、灘中・灘高にいるような、東大を目指したり実際に合格したりする能力や環境などを持ち合わせた人間が、自分含め周囲にいたことがない。

 デジタル大辞泉によると、元来の「雷獣」という言葉の意味は、落雷とともに地上へ降り、人畜を殺傷したり、樹木を引き裂いたりするといわれる、想像上の動物のことらしい。

 わたしの周囲には、様々な理由から、東大はおろか、大学自体行けなかった、または行かなかった友人・知人が何人もいる。彼らは大学に行ったというだけでわたしを頭が良いと評価してくれる。でも、実際のところそんなことはないということは、自分自身がよくわかっている。

 そんなわたしにとって、YouTuberの雷獣は、その元来の意味である「想像上の動物」と言ってもいいくらい、存在が遠い。

 雷獣は、YouTubeで主にその能力の高さを発揮したコンテンツ(暗算のスピードを競うとか)を関西弁で面白おかしく展開しているのだが、それらを見るたびに、世の中には本当に自分とはかけ離れた能力を持った上で努力もできる人間がいるのだと感心する。というよりは、正しい努力には高い能力が必要なのだと思った。

 もしかしたら、東大生が出ているクイズ番組を好きになる感覚と同じなのかもしれない(見たことがないため断言はできないが)。ただ、YouTubeだからこそ拾える些細な言葉の端々から、その生まれ持った能力の高さを実感できるのだ。

 もしわたしが都市部の教育熱心な家庭に生まれていたら、きっと小学生の頃には塾へ通っており、そこで雷獣のメンバーのような神童と出会うのだろう。そしてそれが人生で初めての挫折となるのだろう。

 でもわたしは地方の一般家庭に生まれて、幸か不幸か、その挫折以前の場所で生まれ育った。だから今、雷獣には新鮮な感動をもらっている。

 雷獣のメイン視聴者層はおそらく都市部に暮らす高学歴の大学生や大学院生、そこを目指す高校生や浪人生だろうと思うが、学生時代など遥か彼方にある地方在住の中年が意外にもとても楽しんでいる。

 わたしのような人にも、ぜひ雷獣のYouTubeを見てみてほしい。


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