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ものづくり系コンサルが薦める本 Vol.5  「ザ・ゴール エリヤフ・ゴールドラット著」

✔ ゴールドラット博士が提唱する「制約理論(TOC:Theory of
  Constraints)」をストーリー形式で学べます。
✔ 米国では1984年に出版されてますが、著者はこの本を読んだ日本
  企業の競争力が更に向上することを恐れて、しばらくは日本語訳の
  出版を許可しませんでした。
 (17年後の2001年にようやく日本語版が出版されました。)
✔ 日本語訳が出版されて20年以上経過しますが、残念ながら、この理論
  はあまり著者が心配するほど広まってませんね。。トヨタ生産方式に
  匹敵する理論であると個人的には思うのですが。。この記事が少しでも
  世に広まるきっかけになることを願ってます。

「ザ・ゴール」を日本に翻訳を長年許さなかった唯一の国日本。それがゆえに、私は日本嫌いであるという印象を与えてしまったのはとても残念なことです。私の友人の日本人の多くの方々がご存じのように、私は日本をそして日本文化を敬愛してやまない人間です。そのあまりの敬愛するあまり、私の本を翻訳することを恐れたというエピソードは本当のことです。TOCの2つの重要な考え方は、「人はもともと善良である」「ものごとの固有の単純さ」はまさに日本の文化にマッチしているものであり、世界の他の国に比較してはるかに効果が出てしまい、他の国が追いつけなくなるほどの競争力をつけるのを恐れたのです。

ゴールドラット博士 | ゴールドラットジャパン (goldratt.co.jp)



✅制約理論(TOC)とは何か?

まず、この本が提唱する「制約理論」についてみていきましょう。

  • 制約理論とは「一連の業務で、ある工程において著しくスループットが低い、つまり何かしら制約がかかっている場合、この制約を集中して改善し、一連の業務全体の最大限のパフォーマンスを引き上げるマネジメント理論」のことです。

  • 製造業で言えば、一連の生産ラインのうちボトルネック工程(一番スピードが遅い工程)を特定し集中的に改善することで、生産ライン全体のスピードを向上させて、生産→出荷→販売→入金のサイクル(つまりお金の生み出すスピード)を高速化させよう、という考え方ですね。

  • 日本の製造業では、5Sとか小集団活動のように、現場が主体的に生産ライン全体をまんべんなく改善していこう、という風潮が強いように思います。

  • 制約理論では、改善すべき工程(ボトルネック)を絞り込んで、ここを集中的に改善し全体の効果を生み出そうとするものですね。

✅企業の究極の目的(ザ・ゴール)は何か?

  • 本書では、企業の究極の目的は「お金を儲けること」であると述べてます。シンプルですね。

  • 企業は顧客のためにある、従業員のためにある、株主のためにある、、などなど、いろいろな意見はありますが、そもそもお金を儲けないと何もできませんよね。

  • また、本書ではお金を儲けるためには3つの指標を使って分析し、生産性を高める必要がある、と説いてます。

✅お金を儲けるための3つの指標

その指標とは、「スループット」、「在庫」、「業務費用」です。一つずつ解説していきますね。

1.スループット

  • スループットは「販売によって生み出されたお金」のことです。

  • 式で表すとスループット = 売上 - 直接材料費
    売上から引かれているのは直接材料費のみです。

  • つまり、「「企業が実際に売り上げた金額(売上)から、企業が実際に支払った金額(直接材料費)を引いて、いくらお金が残るのか」」を表してます。

2.在庫

  • 在庫は、「企業が販売を計画する材料等に投じた金額」を意味し、具体的には、原材料、仕掛品、製品に含まれる直接材料費の金額の合計です。

  • つまり、儲けを生み出す販売に向けた投資、という位置づけです。在庫が売れ残った、仕掛品が滞留している、はお金の儲けにつながっていないので投資の失敗となります。資産ではありません!

3.業務費用

  • 業務費用は、「在庫をスループットにするために使った費用」を意味します。直接材料費以外の全ての支出がここに含まれることになります。

  • これはシンプルでわかりやすいでよね。

4.3つの指標の最適解とは?

それは、
・スループットを増大させること ↑
・在庫を低減させること     ↓
・業務費用を低減させること   ↓

ですよね。 こうなればお金は増えていきますよね。

✅まずやるべきことは制約(ボトルネック)の特定

3つの指標の最適化に向け、まず重要となる要素が「制約(ボトルネック)」です。
工場や生産ラインには様々な制約が存在しますよね。
例えば、ある工程の前にはいつも仕掛品が滞留するのは、その工程の生産スピードが遅いことの表れであり、この工程が制約です。これを改善してスピードアップさせることで、仕掛品はなくなり生産ライン全体の生産スピードが向上し、3つの指標の最適解に近づきます。
では、制約を取り除くステップをみていきましょう。

ステップ1.制約を見つける 
ex.) 各工程の製品1個あたりの作業時間を計測し一番遅い工程
  (ボトルネック工程)を割り出す。
ステップ2.制約をどう徹底活用するかを決める。
ex.)そのボトルネック工程をフル稼働させる方法を決める
  (休憩時間でも稼働させる、段取り時間を短縮するなど)
ステップ3.他の全てをステップ2の決定に従わせる。
ex.) そのボトルネック工程のスピードに他の工程も合わせる。
ステップ4.制約の能力を高める。
ex.) そのボトルネック工程に機械や作業者を投入し生産スピードを
   向上させる。
ステップ5.ここまでのステップで制約が解消したらステップ1に戻る。
ex.)他の工程がボトルネック化したらその工程を対象にステップ1.から
  取り組む。あとはこれの繰り返しっ!

本書では、主人公の工場長が制約理論に基づいて赤字工場を見事に立て直し、工場閉鎖を回避することができました! パチパチっ!

✅この本から学んだこと

  • 工場を改善する時の思考法を学びました。コンサル先の工場を見学する場合はまずボトルネック工程を探します。社長にも「この工場のボトルネックはどこですか」と必ず聞くようになりました。

  • トヨタ生産方式のJITは全ての生産工程が高いレベルにあってはじめて実現できるシステムですよね。よく訓練された従業員が日々改善活動を継続しながら支えているイメージです。一方、制約理論は、前述したように少ないコスト、労力で最大限の効果を生み出すマネジメント理論ですので、中小製造業でも十分実践できるものだと思います。実際、私もこの理論に基づき生産性改善に成功したことがあります。



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