【短編小説】ぱんくした自転車 中編
「ちょっと、お兄さん!」
「はい?」
声をかけてきたのは住宅街のどこにでもいるような60代後半くらいのおばちゃんだった。
「そんな自転車でどこ行くのよ」
「あ、あのー、ちょっと海まで行こうと思いまして」
「急ぎの用事なの?」
「いやー、急ぎではないです」
「ちょっと、うちに寄ってきなさい」
「自転車貸したげる」
頼り甲斐のある声に動揺していた僕は渋々家にお邪魔することになった。
家の中に入り、おばちゃんは居間に案内してくれた。
「適当に座っといて」
「あ、はい」
おばちゃんは