非常勤ですが、なにか#5
前回までのおさらい
前任校が閉校になった。中学校に固執しない同僚たちは、もれなく新たに開校した小中一貫校に異動したが、中学校教員(非常勤講師)にこだわったために転勤を余儀なくされた私、50代女性。教員歴は、30代で教諭を退職・出産育児期間を差し引いて24年。常に国語の授業に情熱を傾けてきた。居心地が良くて13年も居座った職場に別れを告げ、チョーク一本さらしに巻いて(いや、デジタル黒板もタブレットも使いますよ)、新たな学校へ旅立つことになった。久しぶりの転勤である。
転勤先でも引き続き非常勤講師にて通常学級2年生全3クラスの国語科授業週4時間を担当することになった。
A先生
尊敬している先輩が何人かいる。その中の1人、A先生は60代再任用の男性教諭。同じ学校に勤めるのは3回目だ。
強面で、厳しい雰囲気。この先生に一喝されれば、いや存在するだけで教室の空気が一瞬で緊張感に包まれる。話はシンプルで筋が通っているので、正統派の生徒達が安心できるのだ。ホームルームでだらしない男子が叱られているのをしっかりものの女子がニヤニヤしながら見ているようなシーンもある。
怖がれる反面、多くの生徒はA先生のことが大好きだ。
私も以前から何かと話を聞いてもらうのだか、何か特に親切なアドバイスがあるわけでもない。ただ黙って聞いてくれて、やはり話はシンプル。しかし、他の誰に相談しても得られないような「私、間違ってない❗️このままで大丈夫。」という揺るぎない安心感が湧いてくる。
A先生に降って湧いた災難‼️
同じ学年団の同僚によると…
授業中、発表の声が小さくて聞こえない男子生徒がおり、そんなことでは将来困るぞと叱咤すると、数人の生徒がパワハラだと言い出したそうだ。
男子生徒本人は止めたにも関わらず、父親まで出てくる始末…。
管理職は、事情も聞かないでこちらが悪いと言わんばかり。謝ることしかしなかったとのこと。
A先生は自分たちのために将来を考えて、教育的指導をしてくれたのに、学校は、否定的で声の大きな人の勝手な思い込みから来る訴えに屈するしかなかった。信念を持って仕事をしている先生が気の毒だ…という劇(現実)を見せられる生徒の身にもなってみろ。
先生も生徒もかわいそうだ❗️
教員としての覚悟
「先生、聞きましたよ。不愉快な思いをされましたね。私、本当に腹が立ちました。」と声を掛けるが、「ワシは気にしてない。」と笑って言う。
A先生いわく、
パワハラと言い出したのは中学生。問題はそれを聞いて、勝手に振り回された大人にある。
布巾で机を拭くとどうなる?机は綺麗になる。でも、布巾は?汚れるだろう。教員の仕事はこれだ。
自分は汚れずに済ませようとする教員が多すぎる。
言うだけじゃいかん。できるようにさせるところまで持っていくのが大変で、これが自分たちの仕事だ。
さすが…覚悟が違う。
生徒達にはご自分できちんと話をして、落ち着いた授業が続いているようだ。
何のための学校か
何のための教育か
何のために教員がいて
何のために指導をしなければならないのか
少々行き違いがあったとしても、話をすれば生徒は理解できるし、成長してくれる。
その成長を見ているのが楽しい。
問題は…大人だ。
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