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フランスでマダムと役所広司映画を見てきた【PERFECT DAYS】

24歳大学2年生。私には60代のフランスの友人がいる。
名前はフランソワさん。フランソワさんと出会ったのは偶然だった。教会のクリスマスコンサートを見に行った時のこと、私が間違えて招待客入口から入ろうとして警備員さんに全力で止められていたところに、同時にやってきた一人のマダムが、すごく強い口調で「このコンサートは誰でも無料で入れるって書いてあったんだけど!」と警備員さんに立ち向かっていったのだ。
わあ、力強いな… と横目で見ていると、警備員さんに冷静に「マダム、一般の方向けの入り口はあちらですよ」と指摘され、私と一緒に一般の列まで歩くことになった。そして突然「何が”招待客”よねー!?」と話しかけられ、ははは、と愛想笑いしていると、「あなたフランス語わかるの?」と言われ、なぜかそのまま話し込み、今では家に招待してもらうほどの友達の仲である。

そんなフランソワさんと、この間映画を見てきた。少し前、すごくいい映画を見たんだけど、日本の役者さんが出ていて、とにかく気に入ったからもう一度見に行きたいというのだ。調べるとそれは、役所広司さん主演で(記事タイトルで呼び捨てにしてごめんなさい)、ドイツの有名な映画監督、ヴィム・ヴェンダースさんが監督を務めた「PERFECT DAYS」だった。役所さんが外国の映画監督の作品に出たというのは知っていたけどまだ見たことはなかったので、是非一緒に行かせていただくことにした。

「PERFECT DAYS」あらすじ

こんなふうに生きていけたなら

東京・渋谷でトイレ清掃員として働く平山(役所広司)は、
静かに淡々とした日々を生きていた。
同じ時間に目覚め、同じように支度をし、同じように働いた。
その毎日は同じことの繰り返しに見えるかもしれないが、
同じ日は1日としてなく、
男は毎日を新しい日として生きていた。
その生き方は美しくすらあった。男は木々を愛していた。
木々がつくる木漏れ日に目を細めた。
そんな男の日々に思いがけない出来事がおきる。
それが男の過去を小さく揺らした。

映画公式サイトより

この映画は、役所さんが演じるトイレ清掃員の日常を描いた作品だ。役所広司さん、柄本時生さんをはじめ役者さんたちはみんな日本人で、監督がドイツの方。タイトルの「PERFECT DAYS」がどのようにトイレ掃除と関係があるのかと気になった。

いざ、フランスの映画館へ

私がフランスの映画館に行くのはこれが初めてではない。今まで2度、フランスの映画館で映画を見たことがあるが、今回行った映画館の内装はその中でも最も気に入ったので、以下に写真を載せる。

映画館の入り口、チケット売り場。ホテルのような空間だ

写真は映画館に入って入り口すぐのチケット売り場だが、重厚な絨毯に、映画館なのにまるで高級ホテルのエントランスのようで、何だか映画を見る前から非日常な気分を盛り上げてくれた。
この入り口の左手には、10席程のテーブルを備えたカフェと小さなバーがあったのだが、フランスでは映画館に行くと必ずこうしたちょっとした食事かお茶を楽しむスペースが設けられている。映画中にポップコーンなど何か食べながらという習慣は見る限りあまりないようだが、映画を見る前、どんな映画なんだろうねと周りの人たちと雑談し、そして観終わった後、それぞれが自分の心に抱いた感想を、カフェを飲みながらゆっくりと語り合う時間が必須なのだ。

さっそくチケットを買いに行く。フランスの映画は大抵7ユーロ(800円)なのだが、私は映画に出せるほどの費用がなかったので、仕方ない今月はお肉買うのはあきらめるか…一緒に映画見たいし、と思っていたら、私は映画券を何枚も持っているから心配しなくて大丈夫だよ、と微笑んで私の分のチケットを渡してくれた。フランソワさん!!ここは有り難く、甘えさせていただくことにした。本当にありがとうございます。

フランスの伝統的な映画館は赤一色

中に入ると、既にもう何席か埋まっていた。上品な赤色で統一された部屋内。フランソワさんは、フランスの伝統的な映画館は赤色なんだよと教えてくれた。客層はほとんどがご高齢の方。それがこの映画の特質からなのか、日本に興味を持ってくださっている方が来ているからかはわからないけど。フランスは、アニメや漫画などのファン層が若者で、さらにその向こうにある日本の伝統文化、自然、日常に興味を持っているのは40代以降の大人の方達という感じがする。
ここにいる人たちはみんな、日本誇りの俳優、役所広司さんを見に来ている(もしくはこれから見ることになる)のだと思うと、嬉しくてわくわくした。

映画を見終わって。何気ない日常を大切に想うこと

この映画中、主役の平山はほとんど何も喋らない。朝早く仕事の為に起き、コーヒーを買って車に乗り込み、色々なトイレを掃除してまわって、家に帰って寝る前に読書をする。その同じことの繰り返しだ。その同じことの繰り返しを私たちは見ているのに、全ての場面が美しくて、一つ一つが新鮮だった。
24歳の私からすると、いつもいつも同じことの繰り返しは退屈に思えてしまう。でも、平山は例えばお気に入りのカセットを集めて洋楽を聞くというおしゃれな一面を持っていたり、日々植木を大切に育てていたり、自分の好きなことにはとことんこだわりつつ、日常のちょっとした幸せにも気づくことができるのだ。だから1日1日が新しく、何一つとして同じ日はない。
私は、留学中だからあれもこれもと焦ってしまうし、今の歳にしかできないことをやらなければ、とスケジュール帳の毎日をつい予定で埋めたくなってしまう。それも、また間違ってはいないと思う。でも、色々やろうと頭を使うばかりではなく、その日、その瞬間にしっかりと向き合い、平山のように、日々、毎日小さな発見ができる人でありたいと思う。
きっと、日々は自分の見方によってどのようにでも変わるし、あれもこれもと色々持とうとする人はいるけれど、自分にとって必要な最小限のものだけに集中して大切にすることが質の高い幸せなのかもしれない。

フランソワさんは、この映画を2回目に見て、改めてこの作品が大好きだという。「PERFECT DAYS」で描かれる”日常の幸せ”は、なにかフランス人の価値観や考え方に近い気がするのだ。何かを急いだり、焦ったりするのではなく、目の前にあることを受け入れて楽しみ、今ある時間を大切に過ごし、働く為に生きるのではなく、生きる為に働く。
今でもフランスは、日曜日に街に出てもほとんどのお店が閉まっている。こちらに来た当初は、じゃあ日曜日は何をするのだと疑問だった。でも今はわかる。
家族と家でのんびりする為の時間、ちょっと家をきれいにする時間、一日中家でごろごろする時間、ただただ自然を眺める時間。今日は日曜日。街に出ると、それぞれが思い思いの今日を大切に過ごしていた。


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