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『AI 2041 人工知能が変える20年後の未来』魅力的でわかりやすい「AI入門書」

本が発刊されたのは2021年、タイトルは『AI2041』となっているけれども、描かれた「AIによって実現する世界」は、確実にその前に実現しそうだと感じています。遠い未来ではなく、この先数年の間に世界がAIによってどう変わっていくのかがイメージできていない人には、とてもお勧めの本。

この本の最大の魅力はその構成で、10話の短編SF小説: 各ストーリーの後に関連するテクノロジー解説が載っているところだと思います。私のようなAI素人にとっては、日々耳にする様々なテクノロジー用語・技術と具体的な使われ方がこの本のおかげでつながり合い、この先の世界が少しはイメージできました。
そしてこの本の共著企画も面白いと思いました。人工知能学者である著者のカイフー・リー氏が2021年に「すでにある技術、または今後20年で成熟すると合理的に予測できる技術"」を元に、「20年後に80%以上の確率で登場しているはずの技術」を扱って2041年に起こりうる世界を小説として描くことを、Google中国時代の同僚でもあった知人のSF作家: チェン・チウファン氏に執筆を依頼した2名の共著であることが、より読み応えがある内容に繋がったと感じます。

SF小説: ストーリーの大きな魅力としては、各ストーリーが展開する場所や登場人物の設定の多様性が挙げられると思います。インド、ナイジェリア、韓国、中国、日本、スリランカ、オーストラリアなどアジアパシフィックから、ヨーロッパ、アメリカ、中東やロシア、アフリカなど、世界各地・様々な国籍のキャラクターなど多様な世界となっていたけれど、個々のテクノロジーとそのユーザーや場所の特性がストーリーと非常にマッチしその世界観がすっと頭にはいってきて、さらっと読めました。

テクノロジー解説では、現在進行系また近未来に採用されるであろう多様な分野: 深層学習、ディープフェイク、汎用人工知能(AGI)、AI教育、AI医療、自動運転、スマートシティ、量子コンピューター、貨幣の未来から倫理、プライバシーの問題等々、ここでは書ききれない技術を取り上げています。素人にもわかりやすくまとめてあると感じましたし、自分が興味のある分野、自分に関連する分野のストーリーとテクノロジー解説を先に読んでいっても、十分に楽しめる構成になっています。

本のイントロダクションでは、「率直でバランスのとれた語り口で、建設的な希望ある内容を書く」「どの物語も魅力的に、刺激的に、そして技術的に正確であることをこころがけた」「ほかにない魅力的でわかりやすいAI入門書となることを期待している」と説明されていますが、とかくAIによる悲観的な未来を耳にすることばかりの世の中で、暗くなること無く読み進むことができました。
わたしにとってはまさに入門書として読んで良かったと思える一冊となっています。

『AI 2041 人工知能が変える20年後の未来』
カイフー・リー 、チェン・チウファン著
中原 尚哉 訳、株式会社 文藝春秋

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