ABA(応用行動分析)について⑥コミュニケーション

今回はコミュニケーションについてのお話です。

コミュニケーションについては、それが行動の一種であることを理解することが重要です。

コミュニケーションは、話し手と聞き手の間で行われる社会的な相互作用です。

例えば、子どもがおもちゃを自分で取る行動はコミュニケーションではなく、お父さんに頼んで取ってもらう行動はコミュニケーションです。

行動分析では、このような社会的相互作用を言語行動として捉えます。

聞き手は、コミュニケーションの理解において重要な役割を果たします。
コミュニケーションでは、話し手の言葉に対し、何か物や言葉を返す行動が含まれます。

スキナーの言語行動の種類には、代表的なものとしてマンド、タクト、イントラバーバル、エコイック、オートクリティックなどがあります。

これらの言語行動は、スキナーによって分類されたもので、話し手がどのような状況や状態で伝えているかに応じて異なります。

言語行動の理解は、コミュニケーション能力の向上に役立ちます。
そのためにもコミュニケーションの支援に関連する三つの側面を考えることが重要です。

それは、文脈、手段、機能です。
これらの要素を考慮して、個々の能力に合わせたコミュニケーション手段を選ぶことが大切です。

コミュニケーションを教える際には、アセスメントを行ってください。これは、日常生活の中でどのような活動や場面でコミュニケーションの問題が起きているかを調査するためです。

それに基づいて、どのようなコミュニケーションが問題の改善に役立つかを考えます。
日常生活の中で具体的にどのようなコミュニケーションが用いられるかを考え、それを教えることが効果的です。

コミュニケーションの指導の中でも、絵カードコミュニケーションの指導には、自発性、持続性、選択肢の提供、構文の理解という4つの重要な要素があります。

これに加え、日常生活への応用も重要です。
個々の能力に合わせて、これらのスキルを順番に教えていくことが求められます。

自発性がない場合は、それを教える必要があります。選択肢の理解や構文の使用ができない場合は、これらのスキルを強化します。

コミュニケーションの自発性とは、話し手が聞き手の促し無しに自らコミュニケーションを始める能力です。
この自発性が身についているかどうかを見極め、身についていなければ教える必要があります。

PECS(ぺクス)と呼ばれるコミュニケーションの手法があります。これはピラミッド教育コンサルタントが商標を持つ手法で、ここでは詳しく記述しませんが、発語のない子どもにも発語を促す効果があるとされるなど、有効なコミュニケーションの方法とされています。

以下に、ざっくりと説明しますが、興味のある方は公式HPをご覧ください。

PECS(ピクチャー・エクスチェンジ・コミュニケーション・システム)は、特に自閉スペクトラム症を持つ人たちのために開発されたコミュニケーション支援ツールです。
このシステムは、絵カードを用いてコミュニケーションを促進する方法で、特に非言語的または限られた言語能力を持つ人々に役立てられています。

PECSのトレーニングは、以下の6つのフェイズから成り立っています。

フェイズ1:単純な要求 - この段階では、絵カードを使って自発的に要求することを学びます。例えば、子どもがおもちゃの絵カードを大人に渡して、そのおもちゃを受け取るというプロセスです。

フェイズ2:対人接近の増加 - 絵カードを使った要求をする際に、受け取る相手まで距離を移動して行くことを学びます。これにより、自発的な対人接近が促されます。

フェイズ3:絵カードの弁別 - この段階で、使用する絵カードを自分で選択し、弁別することを学びます。これにより、より具体的な要求が可能になります。

フェイズ4:文の構築 - ここでは、複数の絵カードを使って簡単な文を作成し、より複雑な要求を伝えることを学びます。例えば、「リンゴが欲しい」という文を絵カードで表現します。

フェイズ5:応答的なコミュニケーション - この段階では、「何が欲しいの?」などの質問に対して絵カードを使って応答することを学びます。

フェイズ6:コメントの表出 - 最終段階では、自発的なコメントを促進することを目指します。これには、状況に対するコメントや感情の表現などが含まれます。

PECSは、自閉スペクトラムの人々にとって、要求を表出することから始めることが、コメントよりも意欲を持続させやすいとされています。

また、応答のコミュニケーションに過度に依存すると、プロンプト依存(指示待ち状態)になるリスクがあります。
これに対し、PECSは自立したコミュニケーション能力を促進することを目的としています。

PECSはまた、年齢や障害の重さに関わらず、基本的なコミュニケーションスキルを持つすべての人に適用可能であるとされています。
このシステムは、利用者が自発的にコミュニケーションを取ることを強化し、日常生活における自立を支援することを目指しています。

さて、コミュニケーションには拒否の表現も重要で、拒否したい状況で使用できる構文を教えることが有効です。

例えば、「いりません」と言って不要なものを拒否するような表現を教えます。
これらのスキルを身に付けることにより、子供たちはより自分の意志を明確に伝えることができるようになります。

感情表現や自分の内面を伝えることは、特に保護者にとって重要なコミュニケーションの側面です。

感情表現には、ポジティブな感情(例:楽しい、嬉しい)とネガティブな感情(例:悲しい、苦しい)があります。

これらの感情を表現するためには、具体的な経験や体験が必要です。例えば、山登りをしている時の「苦しい」感情や、山頂での「嬉しい」感情などを写真などを使って振り返り、感情の表現を教えます。

体調や不調を伝えることも重要です。例えば、「痛い」という感情表現は、実際に体験した状況(例:転んで怪我をした時)を基に教えます。
これらの感情や状態を適切に表現できるようになると、本人の生活が豊かになります。

さらに、言葉を持つ人に対しては、機会利用型指導法を用いることが有効です。
この方法では、日常生活の中で自然に発生するコミュニケーションの機会を利用し、適切な言葉や表現を教えます。

例えば、「餅つきしたい」という表現を、実際にその活動をする際に教えることができます。

また、言葉があるがコミュニケーションが苦手な人には、モデルを使った指導法が効果的です。
これには、望ましい行動や表現を示すことで、それを模倣させる手法が含まれます。

時間遅延法は、特に機会利用型コミュニケーションの指導において有効な方法です。
この方法では、対象者が遊んでいる際に何かを取ろうとした時に一時的に行動を止め、対象者が自らコミュニケーションを取るのを待ちます。

例えば、子供が「電車が欲しい」と言ったら、その要求に応じて電車を渡します。これは名前を知っているが、自ら人に要求を伝えるのが苦手な人に特に有効です。

また、絵カードを使用する場合にも時間遅延法を利用します。
例えば、子供が「電車が欲しいです」という絵カードを指さしながら伝えたら、その要求に応じて電車を渡します。
これにより、特定の要求を伝えたいときにも適切に言葉を使うことができます。

文字が読める人には、テキストを利用したコミュニケーション指導が可能です。例えば、嫌いな物を適切に拒否する方法や、欲しい物を言葉で伝える方法を教えることができます。これは、カードや書かれた文字を提示して、どのように伝えたいかを示す方法です。

全体的に、コミュニケーションの指導は、対象者の現状と目標を考慮し、適切な方法を選択することが重要です。絵カード、テキスト、適切な指導法を組み合わせることで、対象者が自分の要求や感情を適切に伝えられるように支援することが目標です。



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