読書録#5



 今回取り上げる本


 鳥羽和久著『「推し」の文化論ーBTSから世界とつながる』

 

 この本はBTSと、彼らのファン(ARMY)を通してアイドルやファンの在り方について考察する本です。
 BTSは聴かないという方や、いわゆるジャニヲタ、ジャニーズしか聴かないという方も含めて「推し活」をしている方に是非読んで頂きたいです。
 
 

 ファンでいる事は甘いだけじゃない

 ジャニーズ事務所の性加害問題について。創業者による性加害は容認してはいけないですし、そこと取引をしている企業は一般常識として考えれば倫理的に間違った対応をしているという事になるかも知れません。
 しかし。所属しているアーティストを好きな立場からすると、「もうCDを買ったり、曲を聴くのを止めよう」と簡単に切り捨てる事は、とても、とても難しい。何故なら、アーティストの存在が、彼らがつくる曲が、又はそれらを好きでいる事が自分の支えになっているから。更に、そこには理屈ではない動きが絡んでいるからなおさら。
 かと言って事務所を擁護すればいいのか、というとそれはもちろん違います。そもそもこの問題は事務所によって引き起こされているので、そこはきちんと批判しなければならない。でも事務所を否定すれば、自分が応援しているアーティストの未来を奪ってしまうのではないか。
  このような気持ちの板挟みになって、かなり悩んだ方も多いのではないでしょうか。

 SNSを使っていると、自分の”推し”が批判された時に感情的になっている人や、所属している事務所等も含めて、”推し”のありとあらゆる事を肯定するような意見をよく見ますが、それは本当に正しい事なんでしょうか。
 
 私は、ただ"推し”が批判されているからと盲目的に擁護するのは、単なるエゴではないかと思います。
 自分の思い描く、理想通りの"推し”で居て欲しいから、今までと変わらずに居て欲しいからと現実をねじ曲げているのではないでしょうか。少々言葉がきつくなりましたが、ファンに出来る事は「何が本当に"推し”の為になるのか」を考えながら応援すること、これだけなのではないでしょうか。
 "推し”やその周辺が間違った事をしたり倫理的におかしいことをした時にはきちんと批判しながら、”推し”を応援する。そこに矛盾はないはずです。むしろ”推し”が間違ったままの方が私は嫌です。

 

 アイドルと社会の関係性

 この本の中に『「SixTONES 名言」でネット検索すると、彼らの言葉がBTSと近似性がある』という記述があって驚きました。何を隠そう、最近SixTONESの音楽に嵌まっているので。 
 ただ良く考えると、BTSとSixTONESは世代も近いですし、彼らがBTSを聴いていてもおかしくないと思います。ちなみに私はTwitterでメンバーの一人がBTSの曲を踊っている映像を観た事もありますが、BTSの模倣ではなく影響を受けているという言い方が正しい気がします。
 
 BTSといえば世界的に活躍していますが、世界的に活躍したいのであれば、アイドルといえども人種差別や格差といった社会問題にも関心を持つべきだと思います。BTSに限らず、K-POPのアーティストが世界で人気なのはそこにも理由があるのではないでしょうか。例えば、BLACKPINKの「ガールクラッシュ」というコンセプトの裏には、女性のエンパワーメントという意味合いが込められていると感じます。
 方や日本でアイドルというと一般社会から離されたキラキラしたイメージが強く、社会問題について発言することはもちろん、社会的な背景を意識することはあまりないように思われます。日本のアイドルがなかなか世界で成功できないのにはこうした事も理由にあるのではないでしょうか。
 
 森本慎太郎が雑誌で「ジャニーズらしく振る舞えなくて悩んでいた時にジャスティン・ビーバーに救われた」というような話をしていた(間違えていたらすみません。ご指摘下さい)。
 もしSixTONESのメンバーが生きづらさを抱えたことがあって、音楽やアーティストに助けられた経験があるなら、自分たちが社会にもたらす意義もきっと理解できるはずです。
 これもファンの勝手な期待に過ぎないかも知れないけれど、SixTONESには是非視野を広く持って羽ばたいて欲しい。


 望月香夜

 

 
 
 
 

 


 
 

 

 


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