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おすすめの音楽ミステリー小説【中山七里:岬洋介シリーズ】

芸術の秋、読書の秋におすすめな本を紹介します!


岬洋介シリーズ 中山七里

音楽×ミステリー

天才ピアニスト・みさき洋介ようすけが事件を解決するミステリー小説です。シリーズを通しての主人公は岬洋介ですが、小説はそれぞれ違う人物の焦点から描かれています。


シリーズ一覧

「さよならドビュッシー」
「さよならドビュッシー前奏曲プレリュード 要介護探偵の事件簿」
(※さよならドビュッシーのスピンオフ)
「おやすみラフマニノフ」
「いつまでもショパン」
「どこかでベートーヴェン」
「もういちどベートーヴェン」
「合唱 岬洋介の帰還」
「おわかれはモーツァルト」

※2022.10.6時点


第1作目の「さよならドビュッシー」は2013年に実写映画化されました。橋本愛さん、ピアニストの清塚信也さんが出演しています。

さよならドビュッシーのあらすじ

ピアニストを目指す遥、16歳。両親や祖父、帰国子女の従姉妹などに囲まれた幸福な彼女の人生は、ある日突然終わりを迎える。祖父と従姉妹とともに火事に巻き込まれ、ただ一人生き残ったものの、全身大火傷の大怪我を負ってしまったのだ。それでも彼女は逆境に負けずピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する—。

文庫本あらすじより引用

岬洋介シリーズの見どころ

①音楽の描写

題名に音楽家の名前があるように本編は様々な曲が登場します。またピアノ曲だけでなくヴァイオリン、チェロ、オーケストラの曲もありました。

演奏シーンでは音楽描写が細かくされていて、間近で聴いているような臨場感を味わえます。文章から想像して読むのも楽しいし、実際に曲を聴きながら読むとよりリアルに体感できると思います。以下は一部ですが、「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」に登場する曲です。

これだけでも名曲揃いなのが分かりますよね。シリーズが続くにつれて扱う曲も増えるので、クラシック好きにはたまらない作品だと思います。

個人的に思い入れがあるのはドビュッシーのアラベスクです。私は「さよならドビュッシー」がきっかけでアラベスクが大好きになりました。作中ではるかが衝撃を受けたように、アラベスクの流れるような美しさは衝撃的でした。

(小説を読んでいた)当時はピアノを習っていたので、私もすぐ弾いてみたくなりました。実際に弾くと想像よりも難しく、苦労したのを覚えています。それでも何とか弾けるようになった頃、あの多彩な音を紡いでいく心地良さを感じられたのがすごく幸せでした。今でも思い出に残っていて、大好きで大切な曲です。

おやすみラフマニノフは、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」とチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」が特に好きです。ピアノ協奏曲第2番の重厚感や、ヴァイオリン協奏曲の華やかさは一瞬で惹きつけられます。この曲をさらに盛り立ててくれるのが「おやすみラフマニノフ」に登場するあきらの存在です。

音大生の晶はヴァイオリニストを夢見ながら、思うようなチャンスを掴めずにいました。そんななか演奏会のオーディションが開催されることになります。晶は最後のチャンスにかけてオーディションに挑んだところ、長年の努力が実り第一ヴァイオリンの主席奏者コンサートマスターを勝ち取ることができました。

ここでいう”演奏会”の曲がラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」になります。演奏会を迎えるまでにも様々なドラマが巻き起こり、一曲にかける思いの強さを感じられました。また演奏中〜後にも明かされていく真実があり、驚きの連続です。

音楽小説が好きなのは音楽が盛り上がる場面と小説のクライマックスが合わさって何倍にも感動できるところです。感動と同時に、クラシックならではの緊張感や満足感、陶酔感なども感じられて他の小説では味わえない良さがあります。読み終えた後でさえ余韻に浸ってしまうほどです。

ミステリーとして面白いのはもちろん、結末に至るまでのストーリー、クラシック音楽の感動を一度に味わえる作品です。まずは「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」だけでも読んでみてください。



②岬洋介の魅力

岬洋介はこのシリーズの主人公ですが、どこかミステリアスな人物でした。小説ではそれぞれ別の視点で描かれるので、読者は第三者目線でしか岬洋介を知ることができません。そのためメインキャラでありながら、完全には理解しきれないキャラクターとなっています。

そんな岬洋介は超一流のピアニストです。一度聞けばもっと聴きたくなる演奏は、まるで魔法やドラッグみたいだと評されるほど観客を魅了していました。そして凄いのはこれだけではありません。彼には推理力の面でも才能がありました。検事の父とピアニストの母の元に生まれ、司法試験をトップで合格した経歴を持っています。

そのうえルックスは抜群に良く、誰に会っても必ずイケメンと言われるほどです。さらに性格は紳士的で男前。本編では十年前に交わした友人との約束を果たすために地球の裏側から駆けつけていました。岬洋介の完璧超人っぷりは、もはや少女漫画のイケメンですら敵いません。

しかし話が進むにつれて彼が抱える問題や意外な過去も明かされていきます。今後ピアニストとしてどう歩んでいくのか、父親との関係はどうなるのかも気になるところです。



③登場人物のリンク

一通り岬洋介シリーズを読んでみると「合唱 岬洋介の帰還」は今までとは違う面白さがありました。何が面白いかというと、他作品のキャラがいくつも登場する点です。それも主人公ばかりなのでヒーローが大集合するアベンジャーズみたいになっていました。司法生時代の同期生・天生あもう高春は前作の主人公でしたが、「合唱」には岬洋介シリーズ以外のキャラクターたちも登場します。しかも主人公なだけあって個性的なキャラばかりでした。

代表作で言うと「ドクター・デスの遺産」の犬飼隼人いぬかいはやと、「贖罪しょくざい奏鳴曲ソナタ」の御子柴礼司みこしばれいじ、「連続殺人鬼カエル男」の古手川和也こてがわかずや、「ヒートアップ」の山崎岳海やまざきたけみなどです。ミステリー小説なので刑事や検察官、弁護士がリンクするのは分かりますが、これに加えてヤクザやリポーター、ピアニストまでリンクしているのが面白いですよね。いろんな登場人物が他作品と繋がっていると、世界観が広がって読むのが更に楽しくなりそうです。

この詳しい人物相関図は「合唱」の文庫本の巻末に載っています。中山七里さんの56作品全ての人物相関図がそれぞれ書かれていて、とても分かりやすかったです。私は岬洋介シリーズから入りましたが、これをきっかけに他作品へ興味を持ちました。そして新たな沼へとハマっていきそうです…


☆ドクター・デスの遺産を含む映像化作品についてはこちら(公式ホームページWikipedia


☆☆☆


いかがだったでしょうか?
中山七里さんの音楽×ミステリー小説はミステリー好きもクラシック好きも楽しめると思います。この他にも音楽系の小説は色々読んだことがあるので、機会があればまた紹介したいです😊


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