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遠い思い出

中学生の頃、離れて暮らすおばちゃんの家の近くで見た事ない自販機を見つけた。それは古くて、ボロボロで中の商品は色褪せていて、今にも壊れそうな自販機だった。一緒にスーパーに買い物に出向いてたおばあちゃんにその自販機について聞くと、はぐらかされた。その年、結局その自販機については分からないままだった。

高校生になって、スマホを持った僕は、またおばあちゃんの家に行く機会があった。お使いをを頼まれて、今度は一人でスーパーに行く事になった。前回、見た自販機の前を通るぞ。と思い、あの頃と同じルートを選んだ。相変わらず、自販機はそこにあった。前に見た時と同じで古くでボロボロで、商品は更に色褪せていた。ここまでは前回とほぼ同じ。おばあちゃんと一緒ではなく、一人で自販機に相対してることと、その自販機の商品の正体を知っている事以外は。

スマホとは便利なアイテムである。大抵のことは、検索すれば分かってしまう。この場合、凄いのはブラウザかもしれない。

何はともあれ、現代のチートアイテム、異世界に持っていっても重宝する、スマートフォンのお陰で僕はその正体を知った。知っていた。

買おうと思った。でも、自販機が動くのか怖くなった。古くてボロいし、しっかりしてないかもしれない。また、買えたとしても、外から見る商品は日焼けして凄い色褪せている。だから、出てくる商品も古くて使い物にならないかもしれない。てか、衛生面は大丈夫なんだろうか。最終的に一番怖かったのは、これを買って、おばあちゃん、おじいちゃん、両親、従兄弟にバレること。これから先、白い目で見られることは明白だった。

だから、興味はあったけど買わなかった。買ったとしても、男子校で糞インキャ学生だった当時の僕は、財布な中に金運アイテムとしてしまうぐらいしか使い道がなかっただろうと、思う。

それから、お使いを頼まれて、その道を通る度に、その自販機を必ず目で追っていた。その自販機は見かける度に、より色褪せて、ボロくて、古くなってた気がする。

結局、一度も買わなかったな。

学生の頃に、体験する甘酸っぱいような、モヤモヤするようなエロの体験。これは、凄まじいインパクトである。手に届きそうで届かない、届いたら届いたで怖い。この感覚は、大人になって得られないもの、体験できないものだと思う。

あれから、10年と少し立って、地元と遠いこの地で、今日、あの自販機を見かけた瞬間、あの頃のマセガキだった頃を思い出した。何とも言えない、ドキドキ感が蘇った。あの頃は、世界が興味深く、今より色づいていた。

年を取ったな、と思う。昔を思い出すことも増えた。そして、セットで懐かしむことも増えた。

懐かしいな。でも、0.02は記憶の中の自販機には無かったような気がする。

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