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「自分がされて嫌なことは人にはしない」を疑ってみた

自分がされて嫌なことは人にしてはいけません

幼い頃から誰もが聞いてきた言葉かと思います。

疑うことのない、常識と思えることですよね。

今回はこの言葉を疑ってみます。

まずはこの言葉の意味するところからさらっていくと、
「自分がされて嫌なこと」はきっと他人も嫌であろうから、絶対とまでいかなくとも少なくとも嫌である可能性はあるから、
やらないでおくに越したことはない、ということですね。

そこに潜む教育的な訓示としては、「相手の立場になって考えてみよう」ですよね。お馴染みのやつです。

この定番フレーズに対する僕の考えはこうです。
自分がされて嫌なことと他人のそれは、必ずしも一致するとは限らない

この時点で「うんうん、そうだよね。自分も前から思ってた」という方もいるでしょう。

しかしそうでない人もいると思うので、僕自身のことを話します。

僕は、基本的に人に対して「怒る」ということがなく、許容範囲がガバガバです。
これは僕が優しい、などと言っているわけでは無く、これは人間にとって立派な欠落の一つでもあると思っています。
もちろん長所にもなりえますが、怒りという感情が欠落しているのは、必ずしも良いこととは言い切れません。
もちろん怒りが増大しすぎてコントロールできないのも良くないことかと思いますが、「怒り」についてはまた次回以降に書きたいと思います。

このように僕は人に対して「怒る」ということがほとんど無いので、
「他人にされて嫌なこと」というのがほとんど存在しないのです。
あまり想像できないのです。
強いて言うなら「侮蔑的な表現で家族や恋人を罵倒される」ことぐらいでしょうか。
そんなこと表立ってするような人には出会ったことがありませんが。

こうなると非常に困ります。

自分がされて嫌なことが無いと、当然人がされて嫌なことに対する想像力にも乏しくなる。
もう完全な推測でいくしかないのです。

話を戻しましょう。
僕の例からもわかる通り、人それぞれの「されて嫌なこと」には幅がある。
全人類共通の「されて嫌なこと」は当然あるとして、
そんなことは大層な教訓を用いて子どもらに言い聞かせなくとも、わかることは多いですよね。

だいたいの人に共通の「されて嫌なこと」をしないように気を付けていれば、
日常の浅い人間関係においては困ることはほぼ無いでしょう。

しかし、家族や近い関係の同僚などの「深い人間関係」において、
この「自分がされて嫌なことは人にしない」の考え方で臨むと、
互いに不快な思いをしたり、破綻をきたすことも往々にしてあることと思います。

私はこれをされても嫌じゃないから、あの人にしても大丈夫だろう

この考え方が大きな落とし穴になりうるのです。

こうなると無限に組み合わせは考えられますよね。

とにかく、人の許容範囲や好き嫌い、嫌いへの耐性などは本当にそれぞれ異なるものです。
なので、俺が嫌だからあいつもきっと嫌だろう。
私は大丈夫だからきっとあの人も気にしないはず。

これはよろしくない事態を招くことがあるのです。

ではどうすればいいのかというと、
「自分がされて嫌なことは人にしない」を当てはめて行動する場合と、そうでないグレーゾーンの場合とを、使い分ければいいのです。

中央値のあたりは推測、決めつけで行動してもいいけれど、グレーな外れ値のものはいちいち聞いたり、試してみて破綻しない関係であれば一度試してみるなどすればいいのです。

すなわち今回の結論としては、
「自分がされて嫌なことは人にしない」は
大嘘ではないが裏切ることのある教訓
で、
当たり障りのない付き合いの相手には適用してもいいかもしれないが、
破綻すると今後の人生に響くような相手には
その都度可否を尋ねてから行動する、
つまりは「自分がされて嫌なことは人にしない」は適用しないほうが良い、ということになります。

まあ、このことに限らず人の価値観なんて
いくら「私たち、ほんと合うよね」なんて言ってみたとしても
齟齬はあるもので、人それぞれです。
決めつけや過ぎる推測はよくないし、
めんどくさくても継続的に関わりたい人とは
丁寧にコミュニケーションをとっていくべきだと思うのです。

そして何より「自分が思う常識」だけに照らし合わせて物事を考えるのはよくない、ということが、今回最も言いたかったことです。

「そんなの常識じゃん」と言ったところでそれは「あなたが思う常識」であって、万人が思う全会一致の常識なんてものは存在しないのです。

「自分がされて嫌なことは人にしない」を全否定するわけではありません。

上手に使っていきましょうね、ということです。

それでは今日はここまでで。
それではまた。

小野トロ

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