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ニッポン昔話 (カセットの録音で日曜日が終わる話)




その昔・・・・

音楽好きでちょっとマメでちょっと神経質な若者がいました

若者はデザイナーだったのでとっても貧乏でした

好きになった女子にプレゼントをしたくてもお金がありません



そこでオリジナルテープを作る事にしました

若者はクロームテープという、ちょっと高いけどメタルテープよりはちょっと安いマクセルのカセットテープを買ってきました


持っているレコードの中から

彼女を想像しながら

頭のヒューズが飛ぶくらい真剣に曲を選び

奥歯から血が出るくらい吟味した順番に

その60分のカセットテープに録音します



録音中、レコードの針のプチプチって音が入ってしまい

何回もやり直し

カセットのケースの紙に細かい字で

タイトルやミュージシャン名を書いたり

それはそれはとってもメンドくせー作業で

たった1本のテープを作るのに半日以上かかりました



そんな、自分の趣味のゴリ押し的なテープには

「 My Best 」

なんていう、これまた押し付けがましいタイトルを

インレタ(注)

をこすって仕上げたりしました


そんな事をしてるうち

あっという間に唯一の休み

日曜日が終わっていきます



そんな日曜日の夕暮れ時

西陽の差し込むアパートの部屋で

若者は自分で作ったテープを自分で聴きながら

ちょっと幸せな気分になったらしいです



おしまい




(注)インスタント・レタリングというウソみたいなアナログ商品. 詳しくは現在50歳以上のデザイン経験者に聞いて下さい.
インレタをこすりつける用の棒がありましたが、当時「インレタ棒」と呼ばれていて正式な名前は未だに誰も知りません.
曲名やミュージシャン名を書き込むのは 0.3mmの2Hの芯を使うのが一般的と言われていました(ちなみにまだピグマは発売されてない時代です).

若者がそのテープを渡すことが出来たのかは今となっては定かではありませんw


んじゃまた

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