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最近読んだ本の話 vol.114

 「最近読んだ本の話」の第114弾です。風が涼しくなって秋らしくなってきました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。

1、東 直子『ひとっこひとり』

私たちが日常で交わす何気ない言葉、「大丈夫」「ごめん」「もういいよ」「なんで?」「ありがとうね」などのひとことをテーマに綴った短編を収録。
孤独や寂しさを抱える現代人の心を掬い取りながら、ラストにはほのかな希望をそっと提示してくれる物語。
歌人としても活躍する著者の、言葉のセンスがきらめく12編。
装画を手がけた人気イラストレーター、三好愛氏の挿絵が彩りを添える。

Amazonより引用

 こういう人はいるかもしれないな、というちょっと変わった人たちが登場する少し寂しげな雰囲気のある物語ですが、丁寧に描かれているから現実に存在しているような感じがするんだろうなあ。最後には何とかなりそうな雰囲気で終わっていて、よかった!と思える、これからも続いていきそうな物語です。

 

2、原田 ひ香『図書館のお夜食』

東北の書店に勤めるもののうまく行かず、書店の仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、開館時間が夕方7時~12時までで、そして亡くなった作家の蔵書が集められた、いわば本の博物館のような図書館だった。乙葉は「夜の図書館」で予想外の事件に遭遇しながら、「働くこと」について考えていく。
すべてをさらけださなくてもいい。
ちょうどよい距離感で、
美味しいご飯を食べながら、
語り合いたい夜がある。

Amazonより引用

 原田ひ香さんの本はワクワクします。今度はどんな物語なのか⁉
 樋口乙葉は、東北の書店を辞めて、SNSで連絡をもらった「夜の図書館」で働くことになり、上京してきます。その図書館は夕方7時から12時まで開館していて、無料の寮があり勤務時間中にお夜食が食べられます。そのお夜食は本の中に登場する食べ物が再現されていて、食べてみたい!と思うものばかりです。その不思議な図書館の蔵書は、亡くなった作家の蔵書で、遺族から寄贈されたり、ご本人の遺言で寄贈されたりします。乙葉は、そのまだ整理されていない蔵書に作家や遺族が希望した蔵書印を押し、展示できるようにする仕事を任されます。その図書館で働く人たちにも色々な事情があるのですが、姿を現さないオーナーは謎めいていて、最後の方で謎が解き明かされます。そんな事情があったとは!とわかって少しすっきりしました。「夜の図書館」がこれからも続くのかどうなのか気になります。こういう図書館が実際にあったらいいなあ!


3、三浦 しをん『墨のゆらめき』

本作は新潮社(書籍)とAmazonのオーディブル(朗読)の共同企画で、全篇の朗読が先行して配信された後、書籍が刊行される、というものです。
数多くの作品が映画化、アニメ化、舞台化されている三浦しをんさんがこの共同企画のために書下ろした長篇小説となります。
2022年11月、朗読の配信がスタートすると、文芸、人文、自己啓発などのオーディブルのオールジャンルでランキング1位を獲得、「笑って泣いた」「心が共鳴した」「最高!」「小説をあまり読まない自分でも引き込まれた」「映像化希望」と早くも大好評、感動の声があがっています。
本作は「バディもの」であり、「文字に魅せられる者」、「才能を有する者の葛藤」などが描かれ、三浦しをんさんの真骨頂にして王道、新たな傑作の誕生です。

Amazonより引用

 オーディブルの朗読の配信が先で、その後書籍が刊行されるという企画の書き下ろし作品だそうです。朗読でも聞いてみたい!
 主人公はホテルマンの続力(つづき・ちから)です。ホテルで催されるお世話になったお客様のお別れ会の招待状の宛名書きを、書家・遠田薫に依頼するため、続がよくわからない説明を頼りにその家を探して歩き回るところから物語は始まります。やっと到着した家では、小学生を対象にした書道教室が行われていて、子どもたちと遠田のやり取りを眺めながら終わるのを待っていた続は、何だかわからないうちに教室の生徒・遥人の手紙の代筆を、遠田とともにやることになって…。面白いです!遠田と続がいつのまにか仲良くなっていて、お互いにすごく人のことがわかる性格だけど投げやりな感じが共通していて。別れ話の手紙の代筆を依頼されて、パンダの話を書く場面が好きです。それでうまくいったのがすごい。

 
 もう10月です。早かったなあ、今年も。ゆっくり本を読む時間が取れそうで取れず、ちょうどいい気候で外に出かけたくなる誘惑が多いです。最後までお読みくださってありがとうございました。

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