最近読んだ本の話 vol.128
「最近読んだ本の話」の第128弾です。とうとう桜が咲いて、あっという間に満開になりました🌸今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、金原 ひとみ『ハジケテマザレ』
金原ひとみさんが今どんなことを考えておられるのかを知りたいので新作はほぼ読んでいます。そういうわけで今回も楽しみに読みました。
「フェスティヴィタ」というイタリアンレストランが舞台になっています。主人公の真野は飲食店の派遣の仕事をしていましたが、コロナで解雇されて「フェスティヴィタ」でバイトを始めて、思った以上に居心地がよく感じています。バイト仲間と仕事の後に朝まで飲んだり、別れた彼氏の家に乗り込んだり、プロポーズを成功させるために激辛フェスで奮闘したりとにぎやかで楽しそうな職場です。真野は自分が普通だということに悩んでいたけど、普通には普通の良さがある、とみんなに励まされます。最後は、えっ!そうなの?最初からそういう計画だった?と驚きの展開に。よかった、これからも楽しそうだ。
2、ルーシー・ウッド『潜水鐘に乗って』
不思議な話がいっぱいです。著者が暮らすイギリスのコーンウォール
地方に伝わる伝説や伝承が現代の現実世界に溶け込んでいて不思議な世界を作っています。潜水鐘で海に潜って何十年の間会っていない夫に会おうとしたり、突然徐々に石像になってしまう現象が街のいろんな人に起こったり、物語の中ではそれは当たり前のこととされています。12編がそれぞれ魅力を放ったお話でした。
3、三木 三奈『アイスネルワイゼン』
どんな作品が賞を取ったり候補になったりするのか興味があってつい読んでしまいます。この本には「アイスネルワイゼン」と「アキちゃん」が収録されています。
「アイスネルワイゼン」は、主人公のピアノ講師・琴音が生徒にピアノを教えている場面から始まります。琴音は以前は会社に勤めてピアノを教える仕事をしていたのですが、何かの理由で辞めてフリーでピアノを教えています。クリスマスイブに友人の代わりに介護施設で歌を歌う人の伴奏をするバイトをしてその歌手ともめた後、約束していた中学時代の友人宅へ遊びに行き、ワインをがぶがぶ飲んで嫌なことをズケズケ言ってしまいます。読んでいたら、こんなこと言って大丈夫なの?というドキドキを感じて落ち着きませんでした。主人公に親しみとか応援する気持ちとかを感じてくれなくていい、という著者の気持ちを感じるような…。
もう1篇の「アキちゃん」は、小学生の主人公が「アキちゃん」に困らされていて、次第に「アキちゃん」を憎むようになり呪おうとするのですが、別の友だちからカルマについて聞いて、アキちゃんを呪ったらカルマが積まれてしまうことが恐ろしくてじっと耐えていたんだけど、転校することになって…というお話です。最後の方でそうだったのか!と秘密が明かされます。この主人公も変わった子だけどそのまま困ることなく育って、その一方で「アキちゃん」は相当困ったんだろうなあと思うと悲しくなるような。どうにかできたらいいんだけどなあ。
毎日が飛ぶように過ぎていく中で、本を読んでいる時だけは特別な時間な気がします。最後までお読みくださってありがとうございました。
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